F96-CE と BookwormPup

  2024年5月、2種の Puppy がオフィシャルバージョンとして採択されました。

F96-CE

  F96 とは、Fossapup64 9.6 の略、CE は community edition の意味です。Ubuntu Focal Fossa ベースで、Fossapup64 9.5 の後継となります。
Fossapup64 9.5 のリリース後に Ubuntu Focal や woof-CE (Puppy のビルドシステム) に加えられた変更を反映しています。カーネルは 6.0 系です。
Fossapup64 9.5 の後継ではありますが、save ファイルを引き継ぐことは避けるべきです。カーネルやサウンドシステムなど、9.5 と異なる点もあるので、新規 save ファイルを作成して、データのみ引き継ぐ (コピーしてくる) ほうが安全です。

  F96-CE のデフォルトブラウザは Firefox です。サウンドシステムとして pulseaudio が採用されました。これまでの Puppy では Firefox や SeaMonkey でサウンドを有効にするために、pulseaudio をエミュレートする apulse を使う必要がありました。

  その他は概ねこれまでの Puppy と同じ構成です。Ubuntu Focal は 2025年4月にサポートが終わります。Puppy にはサポートの終了時期はありません (そもそもサポートなどない?) が、Ubuntu パッケージの更新はいずれ終了します。そう考えると、F96-CE の立ち位置は微妙ですが、Puppy が変化していく中で、従来の Puppy Linux の特徴を持った最後のオフィシャル Puppy となるかもしれません。

f96-ce
タスクバーはオリジナルのダークな色から明るい色にカスタマイズしています。

BookwormPup

  Debian Bookworm ベースです。64bit バージョン (BookwormPup64) と 32bit バージョン (BookwormPup32) で開発者が異なりますが、収録されるアプリなど、概ね構成はそろっています。デフォルトのブラウザは 64bit が Firefox、32bit が Light (Firefox の軽量版) です。カーネルは 6.1 系です。
  見た目はこれまでの Puppy と変わりませんが、内部的には大きな違いがあります。サウンドシステムは PipeWire、layered file system は aufs ではなく overlayfs、パッケージ管理は apt / synaptic を利用します。

  overlayfs の採用に伴い sfs パッケージのロードは原則としてシステムの再起動を必要とします。また、ディレクトリの配置も Puppy 独自から Ubuntu や Debian に合わせたもの (usrmerge) になっています。したがって、カーネルの交換には注意が必要です。
  debian パッケージのインストールには apt / synaptic を利用しますが、Puppy 独自の pet パッケージも利用できるように、Puppy パッケージマネージャも残されています。

  apt / synaptic の採用は、Puppy らしさを失わせることにつながると私は危惧しています。apt コマンドを使用する際は、--no-install-recommends オプションを付けるようにしないと、必須ではないパッケージまでインストールされて save ファイル/ディレクトリがすぐに肥大化します。特に save ファイル利用の場合はすぐにパンクします。最低でも 1GB  は用意しておいたほうがいいと思われます。(従来は 512MB が推奨値) システム自体の大きさに加えて、save ファイル/ディレクトリも大きいので、Puppy にはふさわしくない大きさになります。

  Debian の流儀を取り入れることで、新たなユーザを獲得できるかもしれませんが、大きなシステムを容認するのなら、Debian そのものを使えばいいのでは? という疑問も生じます。皆さんはどうお考えになりますか。

bookwormpup64



  ここで紹介した Puppy には日本語化パッケージが用意されています。F96-CE には日本語化版 iso もあります。
  Puppy Linux 日本語フォーラム - 追加アプリケーション
  Puppy Linux 日本語フォーラム - Puplets

2024年6月


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