製作過程 (主に機構部分です。)

※このラジオは、ある事情からほとんど同じものを続けて2台製作しています。2台目が2004年1月に完成しています。メインの頁に掲載している写真は実は2台目のものです。この頁に掲載している写真は製作中のものを含め両者のものが混じっています。このためよく見ると細部が異なっていたりします。

1、機構設計
   このラジオは100円ラジオのケースに必要な部品が全て納まり、機構設計を成立させられるかどうかが成否のかぎだったので機構的な設計検討から始めました。
   回路は 「SMT管式レフレックス3球スーパ」に類似の回路にほぼ決めていました。この回路をあのケースに納めるには、前作「100円ラジオ改造再生検波式2球スーパ」と比較した場合、スピーカ以外に球、チョークコイル、I.F.T各1個が余計に必要です。

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前作「100円ラジオ改造再生検波式2球スーパ」の中身。
既にほとんど隙間がありません。

   前作「100円ラジオ改造再生検波式2球スーパ」は写真のように既にほとんど隙間がありません。この部品配置にこだわる限り、これ以上球やチョークコイルの入る余地はありません。特に球が入るスペースがありません。
しかしバーアンテナをどこか他の場所に移動させるとバリコンと電池の間にまとまったスペースが取れそうです。
バーアンテナはバリコンの上(写真では右)の部分に入らないかと考えました。
   実際図面上で配置してみるとそのままではイヤホンジャックと干渉して入りません。しかしイヤホンジャックをどうにかすれば入りそうです。イヤホンジャックはなくても別に構わないという意見もあり、必須の装備ではないのですが、自分の場合、電車の中でや寝床で聞くことも多いので必ず付けるようにしています。

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バーアンテナをバリコンの上に配置--イヤホンジャックと干渉します。

   当初は、100円ラジオのものではない、もっと小型のイヤホンジャックを使用しようと考えたのですが、100円ラジオのものでも横に寝せて取付ければバーアンテナのスペースが確保できることがわかったので、そのようにして100円ラジオのイヤホンを使用することにしました。

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イヤホンジャックを横にするとバーアンテナと干渉しません。

   バーアンテナをこの位置に移動することによってこのように電池とバリコンの間にまとまったスペースを確保することができるようになりました。球3本を並べて、楽に配置することができます。

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電池とバリコンの間にスペースができます。

   中間周波トランスと局発コイルは100円ラジオのものの使用を諦め、7mm角のものを使用することとし、球をぎりぎりまで寄せると、このスペースに中間周波トランスと局発コイルを配置することができます。球の頭がケースから少しはみだしますが、足をもう少し短く切り詰めるか、ケースを少し削れば何とかなりそうです。

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電池とバリコンの間にスペースに球とIFT類を配置します。

   球をぎりぎりまで電池側に寄せたので、バリコンとボリウムの間にスペースができています。ここに低周波チョークと出力トランスを配置することにしました。低周波チョークと出力トランスは前作「100円ラジオ改造再生検波式2球スーパ」に使用したものと同じ、「KT−30」というST−30の互換品です。これにはバンド型の取付金具が付いていますが、これを外し、横にしたような状態での取付けになっていますが、このスペースにちょうど納めることができました。
   あとはスピーカですが、側面図を見ると電池の上側(裏蓋側)はかなり空いています。オリジナルの100円ラジオではこの隙間で電池が動かないように裏蓋に結構背の高いリブがモールドされています。また、球と裏蓋の間も少し隙間があります。

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バリコンとVRの間のスペースに出力トランスとチョークを配置します。

   そこで、裏蓋のリブは削り取って電池の位置を裏蓋の方に移動させ、また、球も基板に対して若干嵩上げして取付けるようにすると、このようにちょうど電池と球の下に薄型のスピーカを入れることができました。これで(CR類を除く)全ての部品を配置することができました。
   しかし、基板とスピーカがそのままでは干渉するので、スピーカの外形に合わせて大きく半円形に切り欠かれています。
   球はシールドを兼ねた真空管ホルダに挿し、これをスペーサを挟んで基板に取付けるようにしました。またイヤホンジャックは段曲げした取付金具に取付けるようにしています。この金具にはパーアンテナも取付けられます。

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球と電池を裏蓋側に移動させ、できた隙間にSPを配置。

 

2、電気部品の準備 
   100円ラジオを1台解体し部品を取ります。100円ラジオの全部品のうち左が使用する部品、右は使わない部品です。バーアンテナはグリッド用の巻線を追加します。ケースは部品と干渉する部分をあちこち削って使用しています。
   100円ラジオの部品以外の部品で主な電気部品は真空管、I.F.TとO.S.Cとトランス類、スピーカです。
   今回使用した真空管は国内ではやや入手しにくいものですが、北米の通販等では入手容易なものばかりです。お値段も1AJ5、1AG4は4ドル内外と安価です。CK−526AXはやや高価ですがそれでも10ドル位です。今回使用した球は全て本家RAYTHEONのブランド名が付いた物でした(実際に製造したのは別の会社かもしれません)黄色やオレンジの印字がきれいで、ラジオに組み込んだときこれが見えないのはちょっと惜しい気がしました。
   I.F.TとO.S.Cは7mm角のものを準備します。巻線は全て巻き直します。
   出力トランスとチョークコイルにはST−30の互換品のKT−30というトランスを使用しています。それは日本橋の某部品屋でこのトランスが比較的安価に売られていたためで、本物のST−30でも特に問題は無いと思われます。KT−30にはコアにバンド型のカバーがありますが取り外しています。出力トランスの方は一旦コアを解体し、スピーカ用の2次巻線を巻き足した後再びコアを組み立てます。
   スピーカはコーンが樹脂製で薄型ですが一般的なダイナミックスピーカです。外径は44mmで、あの部品配置で入れることのできる、ちょうどぎりぎりの大きさです。本当は当初は 「SMT管式レフレックス3球スーパ」で使用したものと同じ物を使用する予定だたのですが、こちらの方が能率がよく、また図面を検討してみると問題無く入ることがわかったのでこれを使用しました。

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100円ラジオの部品-使用するものとしないもの

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真空管                              I.F.TとO.S.Cとトランス類                                  スピーカ
               100円ラジオ以外の部品

3、機構部品の製作

   機構部品といってもそれほどはないのですが、真空管ホルダ、イヤホンジャック取付け金具等は錫めっき鋼鈑等で自作しました。

真空管ホルダの製作:
   2mmピッチのICソケットを切って、真空管のソケットを作ります。

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ICソケットを切って作った真空管ソケット

   0.2mm厚の(?)を切り出し、写真のように曲げ加工します。「0.2mm厚の錫めっき鋼鈑」というのは実は乾電池の金属外装の塗装を剥がし、平らに展ばしたものです。
これに先ほどのソケットを接着して完成です。


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                                                              完成した真空管ホルダ

イヤホンジャック取付金具の製作
 
  
0.3mm厚の錫めっき鋼鈑を切り出し、写真のように曲げ加工してイヤホンジャック取付金具を製作します。この金具はイヤホンの挿抜の際、力がかかりますので真空管ホルダより厚めの鋼鈑を使っています。

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完成したイヤホンジャック取付金具

基板の製作     
   ユニバーサル基板を切りだし、必要な穴をあけた後、スピーカとの干渉を避けるため半円形に欠き取ります。使用した基板は写真のような1.6mm厚のガラスエポキシのユニバーサル基板です。表面はこのようにグランドのパターンがあり、裏側は1つ目模様です。たまたま持っていたものを使用したので、表面のグランドのパターンは必須というわけではありません。

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完成した基板

ケースの加工
   ケースの、不用なリブ等を削り、また、基板を固定するための突起を追加したりします。けっこうあちこち削りまくっています。
   スピーカグリルの穴は、そのままドリルであけると表面に貼ってあるシートがめくれて汚くなることが明らかだったのでどのようにしてあけるかちょっと悩みました。結局、革製品に穴をあけるような円筒状の刃のついた治具を作り、これでシートを丸く抜いた後、これより少し径の小さいドリルでプラスチックのケース本体に穴をあけました。

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            加工の終わったケース                                         スピーカの穴。 
      あちこち削りまくっています。逆に貼り物もあります。           左下のみ完全にあいています
                                                                          他はまだシートのみ

 

4、全体の組み立て
   加工の終わった基板に部品を取りつけて行きます。設計どうりにちゃんと部品が納まるでしょうか。実は実際に全体の組立てを行うまでかなり不安でした。ここまで製作を進めて、ぎりぎりの部品配置になっているだけに、ここで部品の干渉が見つかったとしてもほとんど修正の余地がありません。

   基板上の球以外の部品はうまく納まりました。真空管ホルダもどうにか取りつけられるようです。真空管ホルダは取りつけてしまうとのソケットの足の部分の配線ができないので、先に配線してから取りつけています。また、これは基板には両面テープで貼りつけられているだけで、基板への配線にも余裕を持たせているのでメンテナンスの時は簡単に外して、位置をずらすことができるようにしています。

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球以外の部品はうまく納まりました。真空管ホルダも無事取付けられました。


   ここでケースに仮組をしてみます。どうにか無事、大きな干渉も無く組み込むことができ、一安心です。ここまで出来上がると図面上の線でしかなかったものが実際の物となって姿をあらわしてきます。

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  仮組状態。挿さっている球は5678です。B電池は14個しか入っていません。

  
       あとは配線をして基板部分は完成です。
      レフレックス関係の部品が集中する1AJ5の足付近は配線がかなり込み合っています。この部分は部品の実装高さが高くなってしまい、ケースの方を少し削っています。
   「機構設計」のところを御覧頂くとわかると思いますが、機構設計の時点ではCR類の取りつけスペースは(どうにかなると思って)全く考慮していません。(^^;;)
   写真の状態では、球の足はまだ、少し長目になっています。この状態で動作チェックと調整をし、実際にケースに組み込むとき、もう少し短く切り詰めました。

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完成した基板の表と裏


   ケースに、電池ホルダの金具とスピーカを取りつけ、基板を組み込んで完成です。
   電池ホルダの金具は+側はオリジナルの100円ラジオのものをそのまま裏蓋側にすこしずらしただけです。−側は、ケースの金具固定用のリブを少し削り取ってしまっているので、裏蓋側にすこしずらした後、接着して固定しています。

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完成した本機

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