TV球6AB8使用ポケットサイズ2球スーパ
2003年6月完成
大きさ
: 118mmx63mmx37mm(つまみ部除く)
特徴: ・ヒータがオレンジ色に灯るのがはっきりわかる、傍熱型のTV球を
使用しながらワイシャツの胸ポケットに入る超小型。
・たった2球でほぼ4球スーパ相当の感度。
・B電圧は16.2V(電池消耗時)〜27V(電池新品時)の低電圧動作。
・主要部品は大半を100円ラジオのものを使用。
裏側 裏側 回路部分
下の部分40%位が電池のスペースになっています。
予定通り、ワイシャツの胸ポケットに入るようにできました。
わざと上部をポケットから出していますが本当はポケットの中に完全に入って
しまいます。
使用球 :
6BH6 6AB8 回路図
※回路図はあくまで参考です。利用は自由としますが利用により生じるいかなる結果にも責任を負いません。
回路について:
回路は6BH6による5極管コンバータ後6AB8の5極部で中間周波増幅、同3極部で2極管検波、再び6AB8の5極部を用いて電力増幅という構成で、この構成としてそれ程変わった点はありません。VRがIFTのところに入れられていますがこれは当初検波管の負荷をVRとしたところ強電界で音が極端に歪むためこの対策でこの位置に変更しました。
この種の3極5極管としてはMT管では6BM8や6BL8等がポピュラーですが6AB8はこれらの球と比較し、カソードが共通なのでやや使いにくいもののヒータ電力が小さいため、このような用途には好都合です。6BH6もヒータ電流が150mAで通常の半分の電力で済みます。
電池
:
・A
外装、構造 :
1枚板の前面板に、電池ホルダ以外の全ての部品が取り付けられ、後方から箱型をしたカバーをかぶせるような構造になっています。電池ホルダは固定されていない状態になっています。 このためカバーを外すと大半の部品が剥き出しになり、この状態でメンテナンスすることができます。このカバーは嵌め込み式になっています。アルミ板で作られたシャーシもこの前面板に取り付けられています。アルミシャーシには球(のソケット)、IFT、出力トランス等が取り付けられています。
IFTは100円ラジオ用の改造ですが「ST管式2球スーパー」と同様単3電池の金属外装を利用して作った金属筒に入れて真空管用風の外観にしています。
ワイシャツの胸ポケットに入るようにするには外形の周長が約200mm以下でなければならずこのため幅63mmと厚さ37mmとしています。厚さ2mmのアクリル板で外装を構成するとシャーシに許される面積は59x33しかなくこの面積上に少なくとも球2本と直径14mmのIFT 2個は配置しなければならず部品配置には非常に苦労しています。
製作過程 (主に機構部分の製作過程を紹介しています。)
性能、他 :
電池管式のラジオは小型にでき、電池もそれなりの寿命が期待できますが真空管ラジオの大きな魅力の一つであるヒータのオレンジ色の輝きがほとんど見えません。このため、これまで何度か「傍熱型ST管式2球スーパー」のような、電池管ではなく普通の傍熱管を使用したポータブルラジオを製作しましたがいずれもポケットサイズとは言い難い大きさで、持ち歩くには難がありました。このため、普通の傍熱管を使用したポータブルラジオをなんとかポケットサイズで作れないものかと考えるようになり、製作したのが本機です。
内蔵のバーアンテナのみで鉄筋の室内で当地(大阪府寝屋川市)の地元局は全て一応受信できます。同条件で夜間は遠距離局も若干受信できます。しかし、入力が大きくなるとすぐ出力が飽和してしまい、あまり大きな音量は得られていません。また、後述のトラブルシュートの結果、検波が2極管検波となってしまい、6AB8の機能、性能をフルに活用できず、いまいち不本意な結果です。
※トラブルシュート:
このラジオはブレッドボードでの試作は比較的うまく行ったのですが、実際のサイズ形状に組み立ててからトラブルの嵐に見まわれ、回路を大きく変更すると共に、完成が大幅に遅れました。当初は検波は6AB8の3極部によるグリッド検波で、ボリウムは検波の負荷のところに入っていましたが、主なもので下記のようなトラブルとその対策で現在の回路になっています。
・トラブルその1:
検波管のプレートとバーアンテナが接近しているため、特にIFの2倍の高調波の周波数のところに同調すると発振する。
・トラブルその2:
レフレックス回路で、IFがAFで変調され、発振する。
−−行った対策:
トラブル1に対しては球とバーアンテナの間にシールドを入れたり、検波管のプレートに入れたフィルタのCの値を大きくしたりしましたが、 このCの値を、音質や音量に影響が出るほど大な値としても発振を完全には防げませんでした。トラブル2に対しては、検波とAFの結合コンデンサの容量を小さくしたり、これに直列に抵抗を入れたりしました。これにより発振は収まったものの、特に入力が大きくなると、極端に音が歪むものになってしまいました。このような方法でトラブル対策を進めたのですが、対策によりゲインが低下し、グリッド検波にすることにより得られるゲインを相殺するほどになってしまったと考えられるようになったので、結局グリッド検波を諦め、2極管検波にしてしまいました。結果、思ったとおり感度はほとんど変わらず、動作の安定性、音質は格段に改善されました。
・トラブルその3:
大入力で音が歪みやすい。
−−行った対策:
ボリウムを検波の負荷のところから、「MT管式レフレックス3球スー
パ」等のようにIFTのところに変更しました。これにより大入力で音が歪みやすいという特性自体を改善できるわけではないのですが音が歪む場合ボリウムを絞ることにより音が歪むのを防ぐことができるようになりました。