サブミニチュア管ポケットラジオの製作

フレーム

 川端さんの「真空管式ポケットラジオ プロジェクト」のホームページを見たときは衝撃を
受けました。凄い!!と思うと共に、製作例を何度も見ているうちに自分も作ってみたいと
思うようになりました。特に100円ラジオ改造3球レフレックススーパーは私の憧れであり
また目標となりました。
 しかし、いきなりあれだけのものを作るのは不可能だし単なるコピーになるので、まず
手始めにもう少し大きなサイズの市販ポケットラジオを改造してみることにしました。


元のラジオ
 DIYショップで偶々見つけた1000円のラジオで、ごく一般的なサイズのトランジスタ式
スーパーラジオです。大きさは約65×110×29(mm)です。
  外観写真


構成
 周波数変換−中間周波増幅−検波・電圧増幅−電力増幅
   1V6       5678      1AJ5     CK526AX
 バーアンテナ 市販のトランジスタ用
 バリコン 市販のトランジスタ用親子バリコン
 OSCコイル 市販のトランジスタ用10K型(赤コイル)
 IFT FCZの455KHz用7Kタイプ
 低周波チョーク ST30
 出力トランス ST30に2次コイルを50回巻いた物
 ボリューム 元のラジオから取り外し品
 イヤホンジャック 元のラジオから取り外し品
 A電池 単3電池 1本
 B電池 LR923 16個 24V
(市販の単5サイズ12V電池をバラした中身)
  抵抗・コンデンサ類は全てトランジスタ用を使用。
  回路図(参考程度にしてください。再現性は未確認です)


 真空管は全て Antique Electronic Supply で購入しました。他にも色々な真空管を買い
ましたので全部で$26程でしたが送料が別に$14.8もかかりました。もっと沢山買っておけば
良かったです。USPSで送られてきて約3週間くらいかかりました。

 バーアンテナ、OSCコイル、IFTはトランジスタ用のものを無改造で使っています。真空管
式ポケットラジオ プロジェクトでは全て巻数変更されいますが、IFTは巻数変更しなかった
場合との比較はしたことがないと書かれてましたので、私は敢えて巻数変更せずに無改造
で使ってみることにしました。インピーダンスが合わないことは容易に想像できますが、
どの程度実用になるか試してみたかったからです。

 回路定数については全く自信がありません、色々な回路図からの寄せ集めです。ここは
この値にした方がいいよといったアドバイスは大歓迎です。

 スピーカーはオリジナルのものだとマグネット部が高すぎて邪魔になるので、薄型のもの
に交換しました。
 真空管ソケットは丸ピンタイプのICソケットをそのまま利用しました。SMT管を2段重ねに
するのに丁度いい間隔でした。


内部構造
 1枚のユニバーサル基盤をカットして、うまくラジオの内部に収まるよう加工しただけの
ものです。ガラエポ基盤を使いましたが、たまたま手持ちがあっただけです。
 真空管は上下2段にしてICソケットに取り付け、それをRF部とAF部が左右に並ぶように
配置しました。ICソケットをベース基盤に対して垂直に立てて固定するために、ICソケットを
サブ基盤に取り付けたうえでサブ基盤とベース基盤をスズメッキ線(抵抗やコンデンサの
足の切れ端)で配線して固定しました。
 B電池は、市販の単5サイズの12V電池2本をバラして取り出したボタン電池を適当な
筒に入れました。

  内部写真1  内部写真2  内部写真3  内部写真4
  電池部分写真  (まだ修正前です)


トラブルと修正
 一通り配線が完了して、OSCやIFTの調整をしていく段階で、幾つか修正を加えました。

 ・最初は低周波電圧増幅の負荷に適当な抵抗を使っていたのですが、ただでさえ低い
  B電圧がさらに下がって9V程度になってしまったので低周波チョーク(ST30)に交換
  しました。
 ・最初は局発が全く発振しませんでした。OSCコイルの2次側配線を逆にして無事発振
  しました。
 ・テスターで計るとヒータ電圧が1V程度しかなく、真空管の動作が不安定でした。A電池
  はきちんと1.5V出ています。ヒータ回路をたどっていくと、電源スイッチ部で電圧降下
  していることがわかりました。接点を磨いて解消。
 ・低周波電力増幅部が発振してしまったので、出力トランス1次側にコンデンサを追加し
  ました。最初マイラーコンデンサを使ってみましたが、高温がカットされてしまったので
  セラミックに変更しました。それでもまだ多少発信音が残っているので、電圧増幅部に
  も追加する必要があるかもしれません。
 ・感度が非常に悪く外部アンテナなしでは何も聞こえなかったので100pFを通して外部
  アンテナ接続線を取り付けました。カーテンレールや電灯線アンテナをつければ何局も
  受信できるようになりました。
 ・ここまでき最後の大トラブル、真空管がはみ出してケースが閉まりません。真空管の
  足をギリギリまで切り詰めても、あと1mm程はみ出ます。
  真空管を取り付けたサブ基盤を後ろに移動させたくても、イヤホンジャックと出力トラン
  スが邪魔になって動かせません。
  最初の部品配置設計が甘かったと後悔し、泣く泣くICソケットを諦めて真空管を直接
  基盤に半田付けしました。

  完成時点の内部写真


問題点と課題
 トランジスタ用IFTを無改造で使った影響か、ポケットラジオとしては実用にならない感度
の低さです。外部アンテナを付けない当地(神戸)ではほとんど何も受信できません。
 トラッキング調整が完全に取れてないこともありますが、試しに1局だけに絞って最高
感度に調整しても、外部アンテナなしでは殆ど聞こえません。
 B電圧が低いことも原因の一つでしょうが、電池ケースをそのまま使う限りはこれ以上の
高電圧は望めません。

 真空管式ポケットラジオプロジェクトで使われているIFTは1次側に400回巻かれており、
同調コンデンサは18〜33pFを使われています。この値とFCZのIFTの1次側インピーダン
スを計算して比較してみると、10倍以上差があるようです。

 4個もあるIFTにそれぞれ400回ずつも巻くのは大変そうで尻込みしていたところ、FCZ
には「07S40K」という長波受信用コイルがあり440回巻いてあることが判りました。これに
ちょっと小さめの同調コンデンサを付ければ何とか使えないかと目論んでいます。
 一応07S40Kは買ってきたのですが、本当に同調するかどうかディップメータもシグナル
ジェネレータもないので、確認するには実際組み込んでみるしか手がなさそうで未だ試せて
いません。


追記 : その後の改良
 ラジオ工房掲示板で回路上の問題箇所を指摘していただだき、その情報を元にして次の
ような改良しました。

1.IF増幅段にもAGCバイアスをかける。無くすと入力インピーダンスが下がってしまい、
  感度低下になるそうです。
2.AGC回路の時定数が小さすぎる。時定数コンデンサの容量を0.1uFに変更。
3.トラッキングがどうしてもうまく取れず、低い周波数で特にズレが大きかったので、思い
  切って使っていないバーアンテナコイルの2次側を1次側に直列に接続してインダク
  タンスを増やした。
4.問題と課題にも書きましたが、IFTにFCZの07S40Kを使ってハイL化する。

 まず、1.〜3.の改良により幾分感度が上昇し、50cm程度の外部アンテナでも受信でき
るようになりました。

 次にFCZの07S40Kを分解して1次側巻線をほどきました。何度か巻数を調整して、300
ターンと22pFで455KHzに同調させることができました。文章で書くと簡単ですが、ディプ
メータもLメータも持ってませんので、ラジオに取り付けてはテストし、外し巻数を減らして
再取り付けしてを繰り返しました。結構疲れる作業です。
 4つのIFTとも交換し再調整をすると見違えるほど感度が上がり、強い局だとイヤホン
ではうるさ過ぎるほどです。十分な感度になりましたので、外部アンテナを取り去って
バーアンテナだけにしてしまいました。これだけあればポケットラジオとしては十分な感度
です。やはりIFTのインピーダンスは感度に大きく影響していたようです。

 ただ、感度がよくなったのはいいのですが、今度はIFT間にボリュームを入れる方式では
音量が絞りきれなくなってしまいました。強力な局ではボリュームを一杯まで絞ってもまだ
少しイヤホンではうるさいくらいに受信できてしまいます。
 AGCループの中にボリュームを入れているので、この方式では限界かと思います。
やはり高抵抗のボリュームを探して本来のボリューム回路にする必要がありそうです。

  改良後の回路図


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