月のある風景 

 「月」の光には神秘的なものを感じる人が多いようです。 地球との引力バランスで、海の満ち引きに影響しているのは知っての通りだし、人間にも何らかの影響があるのかもしれませんね。 ただ、夜空に見る月はきれいでも、写真に写そうとするとなかなか難しいものですね。 というのも人間の目(網膜)は、都合がいいように「部分的」に感度を変えることが出来ます。 また、近くにあるものとの対比から、実際の月より大きく見えてることもわかっています。

 といことで、今回の実験は「人間の感覚」に近い月を撮るための方法について書いてみようと思います。 なお、撮影の時間がとれなかったので、今回の写真は高校時代の「ありネガ」です。 作例として出しますが、写真が下手なのは勘弁してくださいね。(^_^;)



作例(1) 
作例(2) 
まず上の写真ですが、200mmレンズを使って普通に月を写したものです。 露出は月の撮影では基準の「f8,1/250秒,感度100」ですが、現像が下手なのかややオーバーめになっています。 でも、この状態では「ただの丸」で、月以外に何も写ってはくれない写真です。 超望遠で大きく月面を写すか、他の工夫がないと写真として面白くないですね。 15歳のおやじは超望遠レンズを持ってないので、何とかしようと露出をオーバーにしてみました。 シャッターを「1秒」近く開けたんですが、月は白く飛ぶ代わりに「雲」は写ってくれました。 何となく日本画的な「月景色」といったところでしょうか。でも、本当なら、墨絵の山水画のように川と山が欲しいです。 せめて下に笹竹でもあれば、ひょっとすると風流になったかもしれません..。



さて、結局この晩の撮影をどうしたかというと、28mmレンズとストロボを使ったようです。 この1本のネガの最後に写っていたのは、左の写真でした。 三脚に据えてスローシャッターとシンクロを利用したみたいです。(なにせ20年以上前なんで、記憶があいまい..汗)

まず、月を入れたい場所をあらかじめ決め、構図を決定します。そして、シルエットになりそうな手前の樹までの距離を測り、 ガイドナンバーから出したストロボでシンクロさせます(1回めの撮影)。 この時のシャッターはバルブで、そのまま10秒以上開けると手前の樹と奥の家が写ります。 最後に200mmにレンズを変え、月を入れたい位置に月を「基準露出」で写します。

ということで出来た写真が左のものです。今回は「作例」として出しますが、残念ながら不自然でいい写真じゃないです(恥)。 手前の樹も少し光が多すぎますね。雰囲気も不気味で、ホラー映画の広告のようなカットです。 でも1番不気味なのは、月が「2つ」写ってることかもしれません。(少しは考えろよ>15歳の俺..)(^_^;)


 さて、次に紹介する方法として、全く違うカットを合成する方法もあります。 でも最近のカメラは「多重露出(同じコマに何度もシャッターを切る)」を出来ないものがほとんどです。 そういう場合はPC上で合成するのがいいでしょう。この他には、下のようにネガを重ねて焼きつける方法もあります。

作例(3) 
作例(4) 
この写真は200mmレンズで普通に撮影した町の風景です。 時間的には陽の沈んだ7時過ぎだと思うので、感度400でも数秒のスローシャッターになります。 でも、写真を見ればわかりますが、これだと空は結構明るく写るんですね。 ここに月を一緒に写すのは、多分無理だと思います。 さて次に、出来るだけ「大きな」月を写そうと思いました。 高校時代のおやじのレンズはズームの250mmが1番長く、2倍のテレコンを付けたようです。 いい感じの「上弦の月」を撮るために、写真部室の屋根に登って三脚で撮ってます。 当然ながら、この露出では背景は「真黒」になってしまいますね。



「ある夜の出来事」

1983
ということで、上の2枚のネガを重ねて作ったのが左の写真です。オリジナルは3枚組だったんですが、 今回は月のカットだけ再現しました。今回は重ねてフィルムスキャナに入れましたが、 うまくバランスが取れるように露出をとりましょう。

しかし、今見ると異様な写真ですね。不思議さを強調するためにわざと「平凡な風景」と組合せたんでしょうが、 面白さより「違和感」が強いです。皆さんがやる時は「描きたい目的(イメージ)」をしっかり作ってやって下さいね。

でも、当時はこんな「風景」を求めていたのかもしれませんが..。(^_^;)



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