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何故1=0.999…?

 たぶん最も多いFAQです。それだけ答えにくいものでもあります。
 この問題が難しいのは、「1=0.999…」に疑問を持つ人の多くが数学的にではなく感覚的に納得していないというところにあります。数学的に如何に説明されても、感覚的に納得できないと「なんか騙されたみたい」であり、不満が残ります。このページを読んでも感覚的に納得できない方は多いと思いますが、文句を言わないでください。これが僕の精一杯ですので(^_^;)。

 おそらく一番よくされている説明は次のようなものでしょう(僕が小学校のときも先生がこんな説明をしていました)。
説明1.
「1/9 = 0.111…。両辺に9を掛けて、9/9(=1) = 0.999…」
ああ、なるほど!うんわかったわかった…と納得してもらえればめでたしめでたしです。そういう素直な方はもうこの先を読む必要もありません。問題が解決して良かったですね。
 …まあ、小学校の頃これで納得していればいまさらインターネットなどで質問したりしないでしょう。せいぜい「しぶしぶ納得」というところで、まさに「なんか騙されたみたい」です。

 また、次の説明もよくあるものです。
説明2.
「x=0.999…と置く。当然0.1x=0.0999…である。従ってx-0.1x=0.999…-0.0999…、0.9x=0.9、x=1」
ああ、なるほど!うんわかったわかった…(以下略)

 ちょっと高度に見える説明は次のものです。
説明3.
「0.999…は0.9+0.09+0.009+…という無限級数の和で定義される。この無限級数は初項0.9、項比0.1である。初項a、項比rの無限級数の和の公式S=a/(1-r)より、S=0.9/(1-0.1)=0.9/0.9=1」
ああ、なるほど…いや、ちょっと待ってくださいよ。高校あたりでは、この無限級数の和の公式を次のように証明していませんか?
「S=a+ar+ar^2+ar^3+…、rS=ar+ar^2+ar^3+…。従ってS-rS=a、(1-r)S=a、S=a(1-r)」
これってまったく説明2と同じじゃないですか。

 感覚的に訴えます。
説明4.
「0.999…が1と等しくないと思われる方は、『…』という無限に続くという意味が本当にはわかっていません。0.999…と1の差はいくつでしょうか。0.1?0.01?いえいえ違いますね。どこまでも0に近づきますね。これは0に他なりません。たまたま同じ数を2通りに表せてしまう場所で違和感があるだけです。よく考えてください。『どこまで行っても等しくない』という人は有限で考えてしまっているのです。これが認められなければ、0.333…と1/3だって等しくないということになるでしょう?」

 面倒くさいので脅し・自棄になります。
説明5.〜
「1と0.999…が違ったら困ります。1-0.999…の答えをどうしますか?無限小?そんなのは0に近づく状態を表すのであって数ではありません。じゃあもし1と0.999…が別の数だったらその間にある数(例えば(1+0.999…)/2)があるはずですがそれを答えてください」
「定義です。そう決めたの」
「それが成り立つのが実数なんです」

 さて、納得していただけたと思います。え?納得できない?困りましたねぇ。
結論を言うと(この結論で納得できない人も多いのは重々承知ですが)、上の説明は全て間違っていない、と言えるでしょう。
 0.999…は0.9,0.99,0.999,…という数列の極限であると定義されます注)。この極限は1です。何故なら、この数列は1を決して超えませんが、どこまでも1に近づくからです。この、「aを超えないけどどこまでもaに近づくときの極限値がa」になるのがわれわれが普通に使っている実数の性質なのです。そうなるように実数を構築した、というのが正しいでしょう。ですから、1=0.999…に対して「そう決めたの」というのも間違いではないわけです(実はそうならないような実数(もどき)も構築できます。しかし、それは難しく面倒です)。
 つまりこの1=0.999…という話を本当に理解するには実数論や実数もどき(超実数)論の知識が必要なわけです。普通はなんとなく分かったような気がする…で十分な話かもしれません。


注) この定義がそもそも認められないという人は多いでしょう。 気持はわかりますが、そうすると1/9=0.111…も認められなくなってしまいます。