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小笠原諸島嗚呼教養古典旅日記【1997ねん10がつはつかあまりようか 火ようび】
むかし、ちゃん太ありけり。いるか船にまたのる。酔いどめの、ひとつぶで足るを、ふたつぶのみて、念をいれたり。此たびのふねは、双胴船にて、よこゆれにつよし。
みなみじまのそばにて、ふねを追ひてとぶ鳥あり、ふなおさの、「あれなむ、かつおどり。」といいたりければ、船こぞりてよろこびにけり。
いるかは、ねむりながらおよぐどうぶつにて、群れて、息吸いたるに浮かぶ背中見ゆ。はしながいるかにて、ひととあそばず、みるだけのものなり。
ふなおさは、いるかにやさしく、ひとに厳し。客にこびず。
しゅのーけりんぐのこうしゅうをする。教へかた、いと、うまし。ちゃん太、目よりうろこ落ちる。
ごご、海すこしく荒れり。ひととあそぶ、ばんどういるか、しまのまわりぢゅうさがせど、見えず。
ふなおさ、「あす、また、むりょうにてのることあたふ」、このふねのぽりしーなり。しめたと思ふ。
酔いどめ、いとききたり。ゆうがた、とてもねむく、めざめるとよなかなり。星見にでかける。緯度ひくければ、おりおんぼし、いと高く天にかかる。こうもり、なんびきか、すぐちかくにて、はっぱをくらう。