頂上からの眺めは美しい。山、緑、空、そして雪の色。そよぐ風も心地よい。この時期の巻機山はお勧めだ。

下山途中ですれ違った白髪の紳士達。健脚にみとれる。
「前回登った時はいくつでしたかねぇ。」
「そうねぇあれは確か、60代でしたか」
今いくつなんだろう?

先を急ぐがちょっと一休み。後ろにも前にも、はるかに続くうねった道には誰も見えない。聞こえるのはカッコウとウグイスの鳴き声、笹の上を渡る風の音だけ。

雨の山も悪くないけれど、晴天の山の開放感をゆっくりと味わおう。この稜線を独り占め!

午後になり気温の上昇とともに、雪解けがすすんでいる。登る時にはただの階段状の道が、今は川のようだ。手と顔を洗いその冷たさに浸る。

この時期は1週間で1メートル以上も解けると言う。新調の靴は水にも強い。ジャブジャブと思い切り良く歩こう。

やっと見つけた道標代わりの赤いリボンは、高い木のそのまた枝先にある。あの高さまで雪があったとすると、真冬のこの辺りの積雪は、7・8メートルくらいか?。

もう5月だが、山にはまだまだ雪が残り、これから花の季節となる。日常とは別世界だ。この感覚にまた会いたくて、さあ次は、どこに登ろう!?。

今回は巻機山。標高差1200メートルを一気に上がる。夏に向けてのトレーニングにはぴったりと意気込んだが、予想以上の残雪に驚く。ここは新潟、豪雪地帯。2003年5月24日。

 清水集落をすぎ桜坂の駐車場に車を止める。ここは水洗トイレ完備。6時出発。井戸尾根を行く。この時期の山歩きは人も少ない。穏やかな登りで快調な歩き出し。今日は晴れ。


 途中から所々にシャーベット状の残雪。トレースを頼りにキックステップで登る。天気の良い雪道を歩くのは楽しい。きつい傾斜を直登で上がれる。一気に六合目展望台に登ればなるほど美しい眺めだ。


 深い雪にうずくまりじっと耐える黒い木々。その枝先に芽吹く確実な春。雪解けとともにこの空にむかい誇らしげに美しい花を咲かせるだろう。今、山桜の上を歩く。
 

 ニセ巻機からは木道をたどる緩い下り。ここから巻機山を目指し再び登りとなる。季節にはお花畑になる池塘の辺りもまだ雪が残る。巻機山避難小屋も赤い屋根は見せているがまだ雪の中だ。日差しの初夏、芽吹きの春と対比して面白い。


 下りてくるご婦人に声を掛けられた。
「山頂はすぐですよ。もうあと少しガンバって!」
こんな言われようは初めてだ。そんなにバテて見えるかなぁ・・・。
巻機山