後立山連峰の南端に位置する針木岳は立山連峰を目の前にし、その麓に大きな雪渓を抱く素敵な山です。今年初めての秋を感じにそんな尾根を歩いてきました。 2003,9,27〜28
いつもの通り新宿駅を”ムーンライト信州”で出発するとさっきまでの仕事を心の中で精算して、新しい感激に向けて旅立つ感じが私を眠れなくさせます。今回は槍・穂高連峰を蝶ヶ岳から見るのと同じように立山連峰を正面に見ながら縦走できるコースです。
朝6時前に扇沢手前の登山口から種池山荘を目指して柏原新道を辿って行きます。今年は冷池山荘が工事のためクローズになったり、新越山荘がちょうどこの日でシーズンの営業を終わってしまうという条件もあり、多少は空いているのではないかと期待していました。
今回ルートに選んだ柏原新道はこれまで辿ってきた山道の中で最も整備の行き届いた登山道ではないかと感心してしまうほど登りやすく、快適に高度を稼がせてくれます。途中ご覧のように青空に映えるダケカンバに見とれてしまったり、これから向かう岩小屋沢岳山腹の紅葉に感心してしまったり、秋を満喫できる景色に大満足です。
しかしこの天気も種池山荘までで、山荘前のテラスで一服していると見る見るうちにガスが広がって爺ガ岳の姿を隠してしまいました。それでも後から来た39名という団体登山者が山荘にザックをデポして爺ガ岳を往復しようと出発して行きました。私はこの人数に圧倒されないように一足先に新越山荘を目指します。本来このあたりでは立山や剱岳がその勇姿を見せてくれるはずですが今回はお預けです。
2日目、ガイドブックには2泊3日に設定されたルートを2日でこなして下山しなくてはなりませんので、たっぷりの朝食に膨れ上がったお腹に悩みながらも6時前には出発です。
期待していた天気にも裏切られ、ガスの中の登山道を鳴沢岳・赤沢岳・スバリ岳・針木岳と縦走して行かなくてはいけないとちょっぴり恨んでいたところ、鳴沢岳を過ぎる頃フッとガスの切れ間から立山連峰の一部が透けて見えるようになってきました。
そして立山黒部アルペンルート上の尾根にさしかかった頃、気温の上昇にあわせるように立山方向のガスが頂上部分を残してすっかり払われ、意外に大きな別山・遠くの剱岳を見せてくれるようになってきました。するとそれまでの重い足取りもどこかに忘れてあちこち視線を奪われながらの縦走です。
スバリ岳への急登も数歩歩くたびに周りを楽しみながら、いつの間にか着いてしまうと言った感じでした。しかもこの間赤沢岳からスバリ岳へ続く尾根道がダイナミックに雲を作りだし、まるで理科の教科書にある雲発生のメカニズムを実地で教えてもらっているようでした。
スバリ岳頂上に登ると目指す針木岳がくっきりとした姿を見せてくれます。ちょっぴり丸い山頂ですがこのルートの中では最高峰ということもあってやっぱり立派だな!!と、飽かず眺めてしまいました。約1時間で針木岳に到着。正面の蓮華岳・高瀬のダム湖はうっすらと見えるけれど裏銀座の山はガスの中、でもいつかあのダム湖からブナ立尾根を登ってみたいという誘惑がフツフツとわいてきます。
針木岳山頂を降りるとこうした眺めともお別れです。後はこのルートのハイライトの一つである針ノ木雪渓を下ることを楽しみに針ノ木小屋へとスタートです。
針ノ木雪渓は紅葉の季節という最も積雪量の少ない時期なのでしょう途中で大きく崩落し雪渓上をたどれるのはほんの一部でしたが、それでも細いながらも激しい水しぶきをあげる急流を渡ったり、雪面をとらえる快適なアイゼンの感触を楽しんだりしながら一気に高度を下げることが出来ました。

<< 情報 >>
1,バスは遅い!!・・・夏のトップシーズンと違ってこの季節になると信濃大町駅から扇沢へ向かうバスは”ムーンライト信州”に接続していません。この日の始発6:30。従って列車到着から約1時間半の待ち。仕方なくタクシーを利用しました。
2,新越山荘はこの日でこのシーズンの営業終了。そのためか着いたらとたんに「今日はビールかポカリスエットを無料サービスしますよ。!!」という大歓迎。もちろんビールにしました。その上食事は盛りだくさん。食材を残したくなかったのかな?
3,新越山荘は臭い!・・・この小屋の汚物処理はミレット方式とかで一応それなりの対策をしていたみたいですが、”臭い!!”これだけは何とかして欲しい。