麓のカールより黒部五郎岳を降り仰ぐ
黒部五郎小屋上空は恨めしいくらいの青空
ヨツバシオガマ
五光岩より薬師岳を見る
クルマユリとハクサンフウロ

本来であれば雲ノ平縦走を計画していたこの夏休みだが、降り続く雨に大きく予定を変更する事となりました。この夏に山に行った皆様ご苦労様、特に北アルプス地域の天気は最悪と言ってもよい状態ではなかったでしょうか? 2005,08,12〜15

 山行前日仕事のトラブルが片づかずあわやキャンセルしなくてはならなくなるのではないかと気をもんでやっとの思いで最終富山便で飛び立ち富山のホテルについてもフリーメールで仕事の後かたづけをしていた今回の山行は出だしから悪い前兆だったのかも知れません。

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 富山駅前を6:00ちょうどに出る折立行きバスは当初満員だと言われていたのに、定員の約半分程度と言った状態。やはり思わしくない天気予報のせいだろうか、ちょっと憂鬱な出足となってしまった。しかし今シーズンのメインの計画でもあったのでずいぶん前から下調べをしていた私の計画は準備万端。ちょっとした悪天候など何のそのと言った気持ちでスタートしました。

 しかし、初日の計画がすでにおかしい5時間30分の予定であった太郎平までの行程を辿ってみたら3時間30分と楽勝過ぎ、これならもう一つ先の小屋まで行けたのにと後悔しきり。

 しかし、途中のベンチから見えた薬師岳の姿を最後にガスと雨の中の登りとなってしまったため、当然のごとく太郎平小屋で一日を終わらせることとする。特に小屋直前最後の30分は激しい風雨の中、早く小屋に逃げ込みたいという気持ちばかりが先走る。この後、時間が遅くなるほど小屋に着く登山者の姿は痛ましいほどずぶ濡れの状態。早く着いて良かったと最初の元気はどこかへ消えてしまいました。

 それでも、”太郎ラーメン”と冷たいビールで気分を直す。この小屋は北アルプスの裏玄関といったおももちで誰もが立ち寄るところのようだ、いろんな情報が飛び交っている。そんな中小屋の掲示板には「薬師沢で膝下まで水没、通行可」との情報どうやって渡るのだろう、当初予定の雲ノ平は薬師沢の遙か先にあるのに・・・・!?

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 翌朝相変わらずしとしと雨。小屋の掲示板には「雲ノ平山荘前水没通行困難」に変わっている。
 仕方なくエスケープルートを捜す。ちょっとハードだが三俣小屋まで行ければ翌日には当初のルートに戻れそうだ。小屋の親父さんにルート状況を確認すると「とりあえず黒部五郎小屋まで行って状況を聞いてみたら」と勧められる。

 結果本日のルートは太郎平〜北ノ俣岳〜黒部五郎岳〜黒部五郎小屋〜三俣蓮華岳〜三俣山荘に変更、早速厳重な雨対策の上出発。雨ばかりでなく閉じこめられたようなガスの中、道迷いだけは嫌だなと心配しながらスタートしたが私と同じようにルート変更した人達が多く、前後を登山者に挟まれながら黒部五郎を目指すこととなった。

 最初は木道をつかって高度を上げて行くがすぐに全身びしょ濡れの状態となる汗なのか雨なのか判らない、非常に疲れる。道標も少なく休憩も取りにくい天候のため、徐々に焦ってきてしまう。いつの間にか北ノ俣岳を通過し黒部五郎・黒部五郎と念じながら上がって行く・・・まだか?まだか?身体が重い・・・!

 やっと山頂でくつろぐ登山者の声が聞こえるようになり、心にもう少しと言い聞かせるとガスに閉じこめられた山頂直下の肩に飛び出している。ちょっとした雨の合間を見つけて腹ごしらえをし、その後のルートを考える。よーし山頂を踏み越えて稜線ルートだ。

 やっと山頂に立ち証拠写真におさまったら、何かがすぐ脇の岩を動き回っているどうやらテンのようだ。小さな身体で素早く移動し目で追うだけでも大変だ。それでもこんな天気に登ってきたご褒美に嬉しくなってしまう。

 しかしこの稜線ルートは結構怖い、幸いこのころから天候が回復してくれたので助かったが、濡れた岩を辿るのは願い下げだ。それでもカールに目をやると大きな岩の点在する緑の楽園と言った雰囲気で今更ながらカールを降りれば良かったと悔やんでしまう。

 その後明るさの増してきた空と緑のカールその向こうに見えだした赤い屋根の黒部五郎小屋。やっと山歩きの楽しさを思い出した頃にはもう三俣山荘まで行く気力は消え失せてしまい。黒部五郎小屋にお世話になる。

 小屋に着いて見上げる青空が恨めしい。今までの天気は何だったのか、明日のルートはどうしたら良いのか。?!

 それでもきっと明日は良い天気になってくれるだろう・・・。

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 何が悪いんだろう!昨夜悪い情報が入ってきた。下山道にと予定していたブナ立尾根、大雨のため沢を渡る橋が流されており通行出来るか不明ときた。

 こうなったら三俣蓮華岳〜双六岳〜鏡平と大幅に予定変更。今回計画したルートは来年以降に持ち越すことに・・う〜む 残念。

 朝、既に雨が降り始めている中、小屋の裏から三俣蓮華岳への急登を登る。何だか雨歩きが得意になってきたようだ。ぬかるみと岩、もう何でも登ってやる。約2時間やっと山頂だ。雨は上がったがガスでなんにも見えない鷲羽岳や水晶岳はどこなんだ。

 ここから先は持ってきた地図にもないが3年前に槍を西鎌からやったときちょっとだけ辿ったことがある。双六まで行けば地図はくっきり頭の中だ。と思ったら予定していた稜線ルートから外れて巻き道に入り込んでしまった。おかげで双六山頂までは往復小一時間をかけてピストンする羽目になってしまった。

 それでもこのころが今回の山行で最も良い天気。ルンルン気分だ。前方を見上げると樅沢岳の向こうに槍の穂先が見える、これもご愛敬と言ったところだ。

 双六小屋前のベンチに座ってお弁当をいただき眼前の鷲羽岳を恨めしく眺める。周りの登山者もつかの間の晴れ間を存分に楽しんでいる。しかし、その30分後にはまた雨、鏡平に着く頃にはずぶ濡れ。ご自慢の鏡池には周囲の梢しか写っていない。

黒部五郎岳のカール、緑が眩しい
双六小屋前から鷲羽岳を望む
鏡池もしっとりとしている

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 もう嫌になってしまった、昨夜も小屋の屋根をたたく雨音にうんざり。下山だけと言っても・・・。しかもこの日の雨は新穂高温泉に近づくにつれ激しさを増し、わさび平からはさすがの登山靴も防水性を半ば失い人間の皮膚が雨を通さないことにやけくその笑いがこみ上げてきてしまう。

 新穂高温泉のアルペン浴場で4日間の垢を落とすには普段の倍の時間をかけてゴシゴシ、それでも肌が乾くのがこんなにも気持ちの良いことだったとはすごい感激。

 しかもこの日はさらに落ちがあり東京へ帰り着いたら大雨警報、それでもこちらは雨対策万全早速ザックからザックカバーを取り出し、小さな傘一つで Walk in the rain♪♪♪

<< 情報 >>
1,今回利用した山小屋の中で最も雨対策、特に乾燥室の対応が良かったのは太郎平小屋。雨具やスパッツだけでなく靴までも乾燥室に入れさせてくれた。

2,黒部五郎小屋の食事はこんな山奥なのにこんなに充実しているとはとても嬉しい。

3,雨具としてゴアとスパッツを両方使うのは暑さ対策からも防水面からもあまり有効ではなかった。今回はほとんどをゴア上下で歩いた。

4,富山までの交通機関は飛行機と思っていたら、多くの人が夜行バスを使っていた。しかし富山の”白エビ”は美味。これは飛行機で飛ばなければ味わえない。


ヨツバヒヨドリ
黒部五郎岳