3年待ち続けた黒部源流への旅。昨年は雨にたたられエスケープにエスケープを重ね結局満足な結果を得ることの出来なかったこのルート今年は最高の天気とメンバーに恵まれ、これ以上は無いと思えるような山行が出来ました。2006,08,11〜15

  折立〜太郎平〜雲ノ平〜水晶岳〜鷲羽岳〜三俣蓮華岳〜双六岳〜鏡平〜新穂高温泉

 ご存じの通りこのコースは富山県の折立から始まり長野県・岐阜県と各県境を辿って新穂高温泉に下山するもので新たに参加させていただいた”わたぼうし”という山の会の皆さんとゆっくり4泊5日の行程で歩くことにしました。

 もちろん、ちょっと足を伸ばして高天原温泉に行きたいという欲はあったのですが日程上の問題から今回は断念です。

 昨年、同じコースを単独で計画した際には雨に苦しめられ周囲に何があるのかまるでつかむことの出来なかった山域において、今回の山行はひとつひとつの山々がどこにどのような姿で位置しているのかを再確認させてくれる結果になりました。

 太郎平から見る薬師岳・黒部五郎岳
 昨年は増水のために渉ることの出来なかった薬師沢
 雲ノ平から見る水晶岳・笠ヶ岳
 水晶岳山頂から見る野口五郎岳・赤牛岳
 鷲羽岳からは槍ヶ岳・穂高連峰・足下の鷲羽池
 三俣蓮華岳や双六岳のたおやかさ
 
 すべての俗人を払い山また山という深き楽園に身を置いてこんな感激は二度と味わうことが出来ないのではないかと思われるほどでした。

<< 第1日 >> 折立 〜 太郎平 :太郎山散策

 富山までのバスは豪華な3列シート、最後尾でエンジン音がうるさかったけれど予想以上に快適でした。富山駅で折立行きのバスに乗り換える時間が短く慌ただしさはありましたが全員、非常食や飲料水を補給し最後2時間のバスの旅です。富山市内からこの時期としては珍しく立山連峰や劔岳の姿を見ることができ、これからの山行の好天を予感させます。それにしても計8時間のバスの旅は初めてです。ちょっとシンドイ。

 折立の登山口では多くの登山者が慌ただしく身支度やストレッチをしています。私たちも腹ごしらえを済ませたら早速登山道に取りつきます。

 今日は夜行バスの疲れも考えて短めに太郎平までの約5時間のコースです。しかし本当にすばらしい天気です。1870mピークを過ぎる頃になると、暑さと日焼け対策に悩まされるほどでした。それでも小屋に着いたら早速ビールでお疲れ様・・・!!

 その後太郎山を往復して北アルプス裏口を満喫しました。この日の収穫は

 太郎山散策途中で巡り会った雷鳥。
 小屋脇の水場で各自ペットボトル2本づつ頭から水を被った冷水シャンプー。実に気持ちが良い。
 小屋が私たち5名に用意してくれた個室

 幸先の良い初日でした。

<< 第2日 >> 太郎平 〜 薬師沢 〜 雲ノ平 祖母岳散策

 この日太郎平は明け方激しい雷雨、小屋の外では早立ちの登山者が右往左往しています。テン場から逃げ込んでくる人の気配もします。しかし僕たちはのんびりした計画なのであまり心配はしていません。期待通り僕らが出発する頃には西の空に青空も見えるようになってきました。

 それでも天気の安定しているうちに薬師沢を渉ってしまいたいとちょっぴり先を急ぎました。薬師沢に着いてみるとこれが黒部川源流域、この先が”奥の廊下”や”上の廊下”に通じていて、さらには黒部ダムなのだと感慨ひとしおです。沢にある注意書きには「足を滑らせたら黒部ダムまで一直線」とあり、その流れの速さと相まってちょっとした緊張感です。

 さてここから雲ノ平の木道が現れるまでは本日のもっとも厳しい登りです。一歩一歩を確かめるように登って行きますが次第に息が切れ、メンバーの口数も少なくなってきます。木道を目にした時のメンバーの安堵の表情は「やっと目的の雲ノ平に取り付いたのだ」という達成感に変わっていきます。

 しかし、ちょうどそのころ再び雷鳴とともに雨粒が落ちてきました。本来ならゆっくり周囲の雰囲気を堪能したいところですが、少しでも早く小屋に逃げ込もうとダッシュです。あれ?!でも後ろが付いてこない。雷を苦にしない2人はのんびり花の写真を写しています。こうなったら場なり馬なり何とかなるさとメンバーそれぞれがマイペース!?
小屋に着いたとたんに小降りだった雨が土砂降りに変わりラッキー

 いつものアルコールで雨の上がるのを待っていると窓の外には綺麗な円錐形。小屋のお姉さんに「あの山は?」と聞くと「笠ヶ岳ですよ。あれが見えるのがうちの小屋の自慢なのですよ」と言われ、なるほど全く予期していなかった笠ヶ岳にうっとり。しかしさすが雲ノ平、雨が上がって青空が見え始めたので予定通り祖母岳散策に出かけてみるとびっくり、水晶岳・黒部五郎岳・薬師岳・槍の穂先・笠ヶ岳
すべてがくっきりとその姿を誇示しています。あまりの美しさに涙ぽろぽろ、幸せいっぱい、今回の山行はこれで大成功です。
 

<< 第3日 >> 雲ノ平 〜 水晶岳 〜 鷲羽岳 〜 三俣山荘
 今日が登山としては今回のメインイベント、しかも快晴。目指すは水晶岳・鷲羽岳。ちょっと遅めの出発ですが雲ノ平のテン場で給水してからまずは祖父岳にむかいます。意外だったのですがこのコースで祖母岳や祖父岳といった雲ノ平の周囲の山々が見栄えでは最高のロケーションなのです。馬鹿に出来ませんね!

 しかしさすがに北アルプス、今日のルートは厳しい岩苔乗越・ワリモ岳と途中のポイントまでが結構な苦行です。じっくりとこなして行きます。

 尾根をぐるっと回り込み水晶岳へのルートに取り付くと3000m級の縦走路であることが身に沁みてきます。それでもようやく水晶小屋にたどり着き、小休止を取ったら早速ピークハントです。それにしても狭い山頂、しかも岩峰なので足を踏み外さないように気をつけて周囲の風景を楽しみます。「あっ、高瀬湖が見える」そして野口五郎岳が白い姿を際だたせていました。

 水晶小屋に戻ったら腹ごしらえを済ませ、次なる目標鷲羽岳へと向かいます。しかしさすがに苦しくなってきました。Tさんからは「巻き道は無いの?鷲羽岳は登らないとダメ?」と弱音が飛び出して来ましたがちょっと厳しく「ダメ!!」頑張って・・・・。

 それでも鷲羽岳山頂ではここまでやってきたのだという達成感でいっぱいです。さらに槍・穂高のシルエットが間近見え隠れしています。メンバーは山頂で腕組みをしながら槍の穂先が見たいと雲の切れるのを待ちます。しかし、残念ながらその全貌を見ることは出来ませんでした。

 名残惜しい気持ちですが今夜の宿である三俣山荘に向けて下山の開始です。

 << ちょっとした情報 >>

1,この時期の山小屋
 予想通り8/13日曜日の三俣山荘は大混雑。幅の狭い布団2.5枚に5人の配分。ちなみに小屋の定員は80名。この日の宿泊客230名受付も約30分待ち、夜になったら「廊下にもお客さんに寝てもらいますから皆さんのザックは小屋の外に出して下さい」だってビックリ。
 その他の小屋(太郎平小屋・雲ノ平山荘・鏡平山荘)は楽々。

2,雲ノ平山荘の夕食
 これはgood!!石狩鍋。味も良かったし、気温の低い夏の北アルプスでは鍋は美味しい。

 

<< 第4日 >> 三俣山荘 〜 三俣蓮華岳 〜 双六岳 〜 双六小屋 〜 鏡平山荘

 この日も快晴どうなっているのこんなに天気に恵まれるのは初めて後が怖い。ご存じの通り今日のルートは快晴であれば最高のお花畑とのんびりとした稜線歩きの楽しめる一日です。

 朝からご来光であったり、右の写真のように三俣蓮華岳の上にうっすらと見えている名残の月が真っ青な空とすばらしいコントラストを描き出しています。本当に綺麗。

 小屋を出発すると三俣蓮華岳のピークハント、北アルプス縦走も4日目だし昨夜の窮屈な寝床がたたってこの登りが結構苦しい。それでもここから先はたいしたことはないよと言い続けていたらその後も結構厳しい登りがあってメンバーの皆さんには迷惑をかけてしまいました。ゴメンナサイ。

 それでも今回は稜線ルートを選択したため一日中槍ヶ岳と穂高連峰を目の前に小さなピークを越えて行く感じです。「つらいけどゆっくりと北アルプスの眺めを楽しんで行こうね。」と心に言い聞かせながら歩んで行きます。

 やっとの思いで双六小屋に到着。みんなで決めていた双六小屋のラーメン、とっても美味しい。重くて高い弁当よりこちらの方がお勧め。なんだかとっても豊かな気持ちになってしまう。

 双六小屋を過ぎると弓折岳の稜線にむかって最後の登りです。メンバーのみんなにこれを越えれば後は楽になるよと励ましているつもりでしたが一番励まして欲しかったのは自分でした。カンバレ!!

 それでも鏡平が見下ろせるようになるとキラキラとした鏡池がとても美しく「早くおいで」と誘いかけてくるようです。夏休み後半を北アルプスで過ごそうと登ってくる登山者とすれ違いながらなんだか名残惜しい気持ちがわいてきます。

 小屋に着いたら昨日の三俣山荘の混雑に懲りてしまったので、小屋の親父さんに「今日の混雑状態はどうですか?」と聞いたところ当たり前のように「混んでるよ。」の返事。しかしどう見てものんびりムードが漂っています。こちらも気がゆるんで名物のかき氷で夏の鏡平を満喫です。

 最後に1人1枚の布団が確定すると泊まり客からドッと安堵の声が漏れます。誰もが心配していたようです。これでゆっくりと疲れをいやすことができます。zzzzzzz

<< 第5日 >> 鏡平山荘 〜 秩父沢 〜 わさび平 〜 新穂高温泉

 いよいよ最終日、後はバスに間に合うように下山するだけです。それでも5日間の縦走をこなしてきたメンバーの疲労を考えて少し早めに出発します。

 しかもこの日も快晴とあって出発前に鏡平名物と言って良い鏡池に写る槍穂のシルエットを十分に堪能させてもらいました。これで当分の間北アルプスの山々とさよならです。

 それでもこの山行は最後まで私たちにおみやげを用意してくれていました。
 

それは秩父沢の手前にある雪渓を越えた時に私たちの行く手に素早く現れては姿を隠す”オコジョ”です。双六小屋の手前でも見かけたのですが、最終日,ひょんな形で再び姿を現してくれました。しかし、やはりあまりに動きが早いので写真の写すのは出来ませんでした。従ってこのページでその愛らしい姿をお見せすることは出来ません。ゴメンナサイ_m(_ _)m

 ちょっと急ぎ足でしたが最終予定のアルペン浴場にも入浴でき、窮屈なバスに揺られ、あずさへと乗り継いだ私たちはこの日の夕方無事東京に帰ってくることが出来ました。

 お付き合いいただきました皆様ありがとうございました。

雲ノ平




☆ 今回のページには同行させていただきました
”わたぼうし”メンバーの写真が多く含まれております。