北アルプス縦走/薬師岳・黒部五郎岳・笠ヶ岳
越中沢岳山頂にて
越中沢岳より薬師岳へ続く稜線を望む
浄土山方向から見る雄山
北アルプス縦走/薬師岳・黒部五郎岳・笠ヶ岳

2008年夏、始めは軽く「薬師岳をやりたいね!」から始まって「折立から夜行バスで帰りたくないね!」とあそこもここもと継ぎ足していったら、なんと6泊7日という長大なプランになってしまいました。しかし1日の行程は5時間から7時間程度といたって軽いものでしたので何とか無事こなすことができました。   2008,8,9〜15

 例年なにがしか計画しては出かけてきた北アルプスも一昨年の雲ノ平以来久しぶりです。今回はとにかく7日間を歩き通すということに最大の目標がありました。

 室堂から入山し浄土山・獅子岳・ザラ峠・五色ヶ原・鳶山・越中沢岳・スゴ乗越・北薬師岳・薬師岳・太郎平・北ノ俣岳・黒部五郎岳・三俣蓮華岳・双六岳・樅沢岳・弓折岳・抜戸岳・笠ヶ岳とだどり新穂高温泉に下山するというルートです。

 途中6泊もするのですからよくご存じの方であれば楽な時間設定だなと思われるかも知れません。それでも久しぶりの長期休暇ゆっくり山での時間を過ごすことも目的にうちです。

<< 第1日 >>  快晴
いつものように登山客と観光客でごった返す室堂を後に浄土山をめざします
。久しぶりとは言え浄土山なんか軽いと甘く見ていた私達を夏の日差しと怠けていた身体がムチ打ちます。いつしか歯を食いしばって登って行くスタイルになってしまいました。

 なんども仰ぎ見たことのある雄山もいつもとは違った方向から見ると一段とりりしい姿です。

 初日のこのルートは新田次郎の”点の記”にも描かれている越中沢岳や戦国武将・佐々成正の峠越えで有名なザラ峠がありちょっとマイナーではありますがそれなりに昔の逸話を残しているところです。

 途中浄土山を過ぎると険しい岩峰の龍王岳を巻いて獅子岳へと向かいます。あまり名前を聞いたことのない山ですがしっかりしたピークで特にその急な下りが延々と続くことにうんざりです。下りなのにこんなに苦しいなんてと本当に音を上げたくなりました。降りきったところがザラ峠です。右側はその名の通り真っ茶色のザラザラした岩だらけです。ちょっとした賽の河原といった風情ですが、こんな峠を戦国武将が越えていったと言うのが彼の苦しさを感じさせます。

 ザラ峠から最後の登りをこなして今夜の宿、五色ヶ原山荘に到着です。ここにはなんと風呂がありました。
 

獅子岳から五色ヶ原を望む

<< 第2日 >> 午前:快晴 午後:曇り

 今日は新田次郎の”点の記”の中で何回か登場する越中沢岳を越えてスゴ乗越までの行程です。
 初日の獅子岳下りのつらさを思い浮かべながら、同行のOさんと「2日目は越中沢岳の下りが厳しそうだね!」と話し合っていました。

 しかし、縦走では2日目になると山歩きに身体がなれてくるようで鳶山までの登りを朝のさわやかな空気の中黙々とこなし、越中沢乗越から越中沢岳の稜線も辺りの山並みを楽しみながらこなすことができました。
 越中沢岳は2591mと小ぶりではありますがやっぱり北アルプスの立派なピークのひとつ、達成感もひとしおです。
 しかし、その山頂には「近くに見えてもスゴ小屋は遠い」と不吉な看板。小さく見えている赤い屋根を見ながら、改めて「本当に遠そうだ!!」とこの先の下りのつらさを覚悟してしまいました。それでも最難関と予想していた越中沢岳の下りも心の中で獅子岳の下りと比べながら「たいしたことないな?」とごまかしながら降りたせいかいつの間にか制覇。

 現実になかなか近づいてこない小屋に少し苛立ちながらも久しぶりの北アルプス縦走を楽しむことができました。
 しかもこの日はコースタイムも短かったので12時前にスゴ乗越小屋に到着、小屋前のベンチで生ビールとゆったりランチです。

 ただ、ここは小さい小屋でしたので混雑が予想され、急遽テント泊に決定。結果的にこの縦走中唯一のテント泊となりました。

<< 第3日 >> 快晴

 いよいよ薬師岳山頂を極める日がやってきました。朝食をとっている間にも周りのパーティーは続々と出発して行きます。それでも僕達は小屋前まで移動してゆっくりと準備を続けます。6時過ぎ勇躍スタート、小屋脇の道を辿り始めます。
 この日も小屋から間山までの始めの1時間あまりが結構厳しい登りでスタートです。しかし、間山山頂までを少しオーバーペースで登ってしまったのでその後ペースが上がってくれません。同行の0さんにはペースが速すぎるとおしかりをいただいてしまいました。

 しかし、間山を過ぎるとすっかりアルペンムード、めざす北薬師岳・薬師岳と続く稜線はすばらしい3000m級の山ならではの景観です。北側から見た薬師岳は以前太郎平から見たたおやかな姿とは大きく印象を異にして荒々しい鋭角的な山容を見せてくれます。

 北薬師岳を過ぎる頃から登山道の左側には名前ばかりが気になっていた金作谷カールが大きな口を開けています。
 右、左と目を奪われ、足下の岩に気をとられている内に薬師岳山頂はすぐそこです。
 山頂にはその名の通り薬師如来を祀った祠があり、いつも通りの記念撮影をして、多くの登山者と同じように周りに山々に感動のため息です。

 山頂を踏破してからは楽勝と思っていたのに、楽だったのは薬師岳山荘までで、油断して戴いたビールが行けなかったのかこの先の下りとそれに続くテン場から太郎平小屋までの登りが堪えました。

 太郎平小屋はこれで3回目、しかし今回は男2人のせいかむさ苦しい雑魚寝のおじさん部屋。前回は水場で頭を洗ったのを思い出し今回はそれまで来ていたシャツを洗い、その上濡れタオルで身体も拭いてとりあえずさっぱりと行ったところです。

 そうそう、この小屋に入って最初に聞いたのは北島康介、北京オリンピック100m平泳ぎ金メダル獲得のニュース。そうだオリンピックやっていたんだっけ?!

 こんなところにいてもオリンピックはやっぱり気になります。