『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第一章 「カンマを伴う分詞句」をめぐる一般的形勢、及び基礎的作業

第3節 カンマの有無を契機とする「制限的修飾」と「非制限的修飾」


〔注1−19〕

   毎回“You know the rest of the story.”(後日談はご存知のとおり)という決め文句で終わるPaul Harveyの長寿語り番組、”THE REST OF THE STORY”(米軍放送、旧FEN、現AFN)の2000/7/21放送分の一部を引用する。●は「間〔休止〕[pause]」の置かれていた箇所である。

   And yet from that hollowed chamber ,● now presumably vacant, ●there still echoed the sound of the chapel organ, ●softly, distinctly, beautifully, ●so beautifully that the duke himself returned to the chapel to listen more closely● to identify the musician responsible.
〈ところが、もうたぶん人気のないはずのあの奥まった部屋から、未だに礼拝堂のオルガンの音色がやさしく、くっきりと、美しく響いて来た。それも余りにも美しい音色であったので公爵その人は礼拝堂に引き返してさらにじっくりと耳を傾け、その音色を奏でている人物が誰なのか確かめようとした。〉(ヘンデルGeorg Friedrich Hendelの少年時代の逸話)

   "that hollowed chamber"を非制限的に修飾している形容詞句(下線部)の直前では、音声により実現される発話の場合、「間〔小休止〕」が置かれることになる。「間」(あるいは抑揚[intonation])については、[1−17]も参照。

   Jimmie Wayne Corder『現代英語ハンドブック』は「11.3 非制限的修飾要素を伴うカンマ[COMMAS WITH NONRESTRICTIVE MODIFIERS]」において、制限的修飾要素と非制限的修飾要素を区別するには声を出して読んでみるのがいい方法であり、「修飾要素の前後で声調が少し下がり、わずかに間が置かれるようであれば、その修飾要素は恐らく非制限的であり、カンマを要する。」と述べている。

(〔注1−19〕 了)

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