第一章 「カンマを伴う分詞句」をめぐる一般的形勢、及び基礎的作業
第1節 戦国乱世
〔注1-4〕
各種学習用文法書では、《分詞構文の表わす意味》は概ね、「時、原因・理由、条件、譲歩、付帯状況など」とされている。「付帯状況」とは時系列的に継起する状況や同時的状況と解されていることが多い。
分詞構文は、主節の表す意味内容を付帯的にさらに詳しく述べたり、その意味内容を補足的に追加説明し、主節の表す出来事と同時発生的な出来事を表すことによって、主節に対し言わば「背景」の役割を果たす。この機能は、次の継起とともに伝統的に「付帯状況」を表す分詞構文の名で呼ばれてきた。 (荒木一雄・安井稔編『現代英文法辞典』participial construction[分詞構文]の項)
日本の学校英文法が負うところ大であるはずのCGELに参考となる記述を見出すことができる。
我々がそこに込めたいと思っている意味は、文脈に応じて、時間的、条件的、因果的、譲歩的あるいは状況的関係であったりすることがある。要するに、…付随する状況を含意している。(CGEL, 15.60)
「そこ」とは「補足節」、即ち、「従位詞を欠いた副詞的分詞節と副詞的無動詞節」(ibid)である。「補足節」には《分詞構文》に相当する分詞句が含まれる。
CurmeのParts of Speechや Syntax中にも、分詞句の副詞要素的働きを述べた箇所をあちらこちらに見出せる。
分詞の最も普通の用法は、それを述辞並置要素[predicate appositive]として用いることである。分詞が動詞辞の主辞あるいは目的辞に対して述辞的に働くと同時に、述辞並置要素として、時・原因・様態[manner] ・条件・目的・手段などといった副詞的関係を示す副詞的要素としても働くように、分詞を動詞辞の主辞あるいは目的辞と関係づけるのである。 (Syntax, 48-2)(更にParts of Speechの15-2, 47-4などにも類似の記述を見ることができる。)
(「並置要素[appositive]」という用語については[1−1]参照)
Kruisinga & Eradesの前掲書は、
自由付加詞[free adjunct]の意味、即ち、付加詞と文の他の部分との関係は様々であろう。しかし、その主たる用途は、文の主要部分において言及されている行為や出来事に伴う状況を表現することである」(37-1)
と述べ、付随的状況・原因・理由・時・条件などを意味する自由付加詞を含む文例を挙げている。
ギリシャ語・ラテン語の場合にも、同様の記述を見出すことができる。
分詞にはいろいろな訳し方がある。文章の前後の関係によって、時、譲歩、原因、条件等の句で訳すのが普通である。(村松正俊『ラテン語四週間』pp.115-116)
F. M. Wheelock, LATINは、”Graeci nautae, videntes Polyphemum, tremuerunt.”([1−1]の【参考】参照)について、”when, since, if, as, etc., they saw P., they trembled.” (p.108)という言い換えを示している。ギリシャ語の場合については、[1−1]の【参考】参照。
(〔注1-4〕 了)
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