『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第一章 「カンマを伴う分詞句」をめぐる一般的形勢、及び基礎的作業

第5節 「脈絡内照応性」と「カンマ」の関係


〔注1−48〕

〔3〕She has α car. It’s blue. (彼女には車がある。青色のね)
この場合、話し手は彼女の車がどういうものかを知っており、だからこそ「それは青色だ」とコメントしているわけである。
(安井稔編『コンサイス英文法辞典』"referential use (of noun phrases)((名詞句の)指示的用法)"の項)(下線と太字体は引用者)
   上記の場合と同様、以下の場合でも、「話者は『私=話者』が会った論理学者がどういう人物か知っており」とは言えたのである。
特定的な不定名詞句は、非特定的な不定名詞句とは違って、非制限的関係詞節の先行詞となることがある。
〔8〕I met a logician, who is teaching at Chicago.[a logicianは特定的]
しかし、このような文の文法性の判断には個人差的な揺れがある
(ibid, "specific (特定的)"の項)(下線は引用者。更に、[1−38]参照)
   ここでも「話者は『私=話者』が会った論理学者がどういう人物か知っており」と言えたにもかかわらずそう記述し得なかったという点に、「個人差的な揺れ」という曖昧な判断を強いられている理由がある。「個人差的揺れ」の淵源は、本文で述べた通りである。

(〔注1−48〕 了)

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