『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第二章 個々の読解の在り方を吟味する

第6節 【読解  その6】について


〔注2−23〕

   第二章第5節  【読解その5】について中で、(2−4)Slowly weaving its way from twig to twig, the spider built its nest.〈小枝から小枝へゆっくり糸を張り渡していった蜘蛛は自分の巣を作り上げた。〉(『現代英語ハンドブック』、4.1)を引用した後、この文例に付された注には、"the entire participle phrase modifies spider, the subject of the sentence"〈分詞句全体はこの文の主辞"spider"を修飾している〉とあることを示し、更に次のように述べておいた。

こうした記述から読み取れるのは、著者によって記述対象であると意識されているのは、分詞とその暗黙の主辞の関係から直接的に派生する「分詞句の文法的機能」ではあっても、分詞句と母節の関係の在り方を、それぞれの意味内容の関係に還元した上でその関係の在り方を解読し、その結果として導き出される「分詞句と母節の関係」の在り方ではない、ということだ。
   『現代英語ハンドブック』には更に次のような文例と解説も見出すことができる。
Finding no one at home, he scribbled a note and left it under the front door. [participle phrase modifying he] (1.2)
   実際、このような分詞句を読解するに際しては、本文でも述べたように「分詞句は直前の名詞句に関わっているという判断さえあれば足りる」のである。《分詞構文》という了解を強固に共有する立場からでさえ次のように語られるのである。
分詞構文(participial construction)と呼ばれる構文は、基本的には文のある要素――ほとんどの場合主語――を修飾する形容詞的修飾句なのだが、前章の最後でみた例などとは異なりその独立性が強くなってしまっていて、ふつう文を修飾する副詞節のように機能する。そしてそれが等価とされる副詞節はwhen(時)、as(理由)、if(条件)、though(譲歩)に導かれるものだとよくいわれる。
(大江三郎『講座・学校英文法の基礎 第五巻 動詞(U)』、p.224)(下線は引用者)

(〔注2−23〕 了)

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