『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第六章 開かれた世界へ

第3節 ある教科書が自ら身を置いた窮境


〔注6−16〕

   こうした対応は決して馬鹿にしたものではない。[6−6]で紹介したCGELの記述は、「どちらかといえば名詞を修飾しているように感じられる場合は…、どちらかといえば副詞的修飾要素であるように感じられる場合は…」という対応の《アカデミック版》とも評せるものである。よく似た節回しをKruisinga & Eradesに見かけた。Kruisinga & Eradesは伝統的文法による「現在分詞」と「動名詞」の区別について次のように述べている。

動名詞と現在分詞について行われている区別はそれらの意味上の相違に基づいている。Ing形が意味の上で[in meaning]名詞に似ていると思われる場合、それは動名詞[gerund]と呼ばれる。意味の上で形容詞に似ていると思われる場合、現在分詞[present participle]と呼ばれる。(KRUISINGA & ERADES, An English Grammar , 251-6)
   残念ながら、これはKruisinga & Eradesの誤解である。伝統文法による「動名詞」と「現在分詞」の区別は相当程度、意味ではなく文法的機能に基づいて行われている。丁半博打じみたけりのつけ方がされていると思わせるような点が皆無ではないにしても、である。

(〔注6−16〕 了)

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