第六章 開かれた世界へ
第4節 「カンマを伴う分詞句」の「暗黙の主辞」の在り方について
その三 文形式@の場合
〔注6−25〕
架空の文例を元に論議を進めることに見切りをつければ、実際には、文形式@中の分詞句の文末への移動を検討すること自体が無益な労であるような事例をいくらでも体験できるはずである。今ここでそのような例を数十挙げるくらいのことはたやすい。二例ほど挙げておく。
(1)Shares of Yahoo Inc. plunged today after the company, facing a slowdown in the overall economy and devastation in the Internet industry, said its profits would fall 10 to 30 percent this year, a sharp reversal from the 34 percent growth that analysts had expected.
〈ヤフー社の株価は今日急落したが、経済全体の減速とインターネット業界の不振に直面している同社の今年の経常利益は、専門家が予測していた34%増とは際立って対照的な10%〜30%減となる見通しであることを同社が発表したことを受けてのことであった。〉
(Yahoo Shares Drop Sharply on Profit Warning By SAUL HANSELL, The New York Times ON THE WEB, January 11, 2001)
(1)のように、文形式@全体が文の一部である上に、文形式@内に節が含まれているといった事例も数多いのである。分詞句を文末に移動するなど論外であろう(「文頭」「文中」「文末」については[1−1]参照)。
(2) The new computer centre, codenamed GTAC -- government technical assistance centre -- which will be up and running by the end of the year inside MI5's London headquarters, has provoked concern among civil liberties groups.
〈新しいコンピュータセンターは、GTAC[政府技術支援センター]というコード名を与えられており、ロンドンのMI5本部内で年末には完成し稼動することになるが,市民の権利団体の間に懸念を引き起こしている。〉
(注)英国の諜報機関MI5が、Eメールを初め,インターネットを利用した通信の傍受を可能にする施設を建設中,という記事。
(MI5 builds new centre to read e-mails on the net by Nicholas Rufford, The Sunday Times Online, April 30, 2000)
この場合、分詞句の文末への移動は、先行詞に後続する関係詞節を必要もないのに力尽くで先行詞から遠く隔たった位置に移動させ、結果的に無益な混乱を引き起こすことに等しい。
(〔注6−25〕 了)
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