第七章 開かれた世界から
第2節 《分詞構文》と主辞補辞……形容詞句・名詞句の場合
〔注7−21〕
述辞の中では、名詞はその具体的意味力[concrete force]を失い、もはや一個人を表わすのではなく、しばしば無冠詞の形で、一般的抽象的観念を表わすことがよくある。
'He was fool ( = foolish) enough to marry her.'
'He was not blunderer enough to betray his thought.'
(CURME, Syntax, 7-B)
別の記述。
不定冠詞は、節における補辞機能[complement function]と、あるいは更に一般的には、繋辞関係[copular relationship]にある名詞句と、強く結びつけられている。こうした場合、不定冠詞は指示的役割[referring role]というよりむしろ(述辞形容詞[predicative adjectives]の役割に似た)叙述的役割[descriptive role]を有している。
Paganini was a great violinist.(CGEL, 5.37) (下線は引用者)
更に別の記述。
(23) a. John is the teacher. b. The teacher is John.
(24) a. John is a teacher. b. *A teacher is John.
(23)aのような文では、Johnと補語のthe teacherはそれぞれ別個に独立したものとして存在していて、それを話し手が等号のような関係で結びつけることができると主張していることになる。(23)bのように、主語と補語の部分を入れ換えても成立するのがこの種の文の特徴で、こうした等式文をつくりだすbe動詞を「外延性の‘be’」と呼ぶのである。これに対し、(24)aでは、 Johnのもつ属性の一つがa teacherという形で主張されている。主語と補語の順序を逆にすれば非文法的な文になるのがこの場合の特徴である。こういうときのbe動詞を「内包性の‘be’」と呼んでいるわけで、大事なことは叙述的な形容詞が現われるのもこの種のbe動詞の後であるという点である。
(齊藤武生・鈴木英一『講座・学校英文法の基礎 第三巻 冠詞・形容詞・副詞』、p.72)(下線は引用者)
更に[1−31]参照。
(〔注7−21〕 了)
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