『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第七章 開かれた世界から

第3節 文頭・文中に位置する「カンマを伴う形容詞句・名詞句」


〔注7−24〕

   CGELのこうした記述が、[4][4a][4b]に見られるような「カンマを伴う名詞句」については、解読の結果に応じて、時には並置要素であると判断し、時には無動詞副詞節であると判断するというCGELの決意表明だとしたら、そうした決意にまで異議を唱えようとは思わない。そこに表明されているのは《信》だからだ。解読結果をもとにしたこうしたCGELの記述に通じる要素を、次のような記述にも窺い取ることができる。以下は、[7−10]に引用した記述である。

分詞構文に用いられる分詞は、過去分詞より現在分詞の方が多い。過去分詞を用いるときは、その前にbeingを補うと主節に対して原因・理由などの時間的・論理的関係を明瞭に表現することができる。beingを補わず過去分詞のままであると、主節の特定の名詞句[特に主語]を叙述的・付随的に修飾する解釈が得られやすい同じことはいわゆる無動詞節(verbless clause)にも当てはまり、beingを補えば分詞構文になり、したがって分詞構文の一種と考えることができるが、beingの有無によって上で述べたような微妙な意味の違いが生じてくる:
   (Being) Worn out from all the work, John decided to relax for a while.
   (仕事に疲れ果ててジョンはしばらくくつろぐことにした)/
   (Being) A man of few words, Uncle George declined to express an opinion.
   (ジョージおじさんはことば少ない人だったので意見を述べるのを断った)
   (Being) A careful host, he went into the dining-room to see that the table was properly laid.
   (用心深いホストである彼は食卓の用意がちゃんとできているか食堂に見に行った)。
(荒木一雄・安井稔編『現代英文法辞典』participial construction[分詞構文]の項)(下線は引用者)
   ひたすら解釈について語っている。

(〔注7−24〕 了)

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