第七章 開かれた世界から
第2節 《分詞構文》と主辞補辞……形容詞句・名詞句の場合
〔注7−10〕
同様の判断を文例とともに紹介する。
A loving wife will do anything for her husband, never weary of criticizing and trying to improve him.
○ never weary of ….. = never being weary of …. = and she is never weary of …..
〔訳〕→『情愛のある妻は夫のためになんでもやり、倦(う)むことを知らず夫に小言を言って向上させようとする』
(山口俊治『全解 英語構文』,p.155)(下線は引用者)
この筆者は、「"adj."(形容詞)ではじまる分詞構文も、直前のbeing(およびhaving being)は省略されることがある。」(ibid)という解説を付している。この筆者による次のような記述は既に第一章第2節で引用した。
分詞構文の諸形態:
ただ“〜ing”形ではじまるのばかりが分詞構文ではない。次のようなさまざまな形態が考えられる。
1)〜ing……(現在分詞ではじまる)
2)having p.p.……(完了形分詞ではじまる)
3)p.p.……(過去分詞ではじまる)
4)adj.……(形容詞ではじまる)
5)noun……(名詞ではじまる)
6)S’+〜ing……(現在分詞に意味上の主語がつく)
7)S’+p.p.……(過去分詞に意味上の主語がつく)
8)S’+adj.……(形容詞に意昧上の主語がつく)
これらの形態が文頭・文中・文尾に現れたときには分詞構文ではないかと考えてよい。
(山口俊治『全解 英語構文』、p.152)
以下の引用には、形容詞句(あるいは名詞句)が文末に位置する文例は含まれていないが、「beingの省略(あるいは補充)」については丁寧な解説が施されている。
分詞構文に用いられる分詞は、過去分詞より現在分詞の方が多い。過去分詞を用いるときは、その前にbeingを補うと主節に対して原因・理由などの時間的・論理的関係を明瞭に表現することができる。beingを補わず過去分詞のままであると、主節の特定の名詞句[特に主語]を叙述的・付随的に修飾する解釈が得られやすい。同じことはいわゆる無動詞節(verbless clause)にも当てはまり、beingを補えば分詞構文になり、したがって分詞構文の一種と考えることができるが、beingの有無によって上で述べたような微妙な意味の違いが生じてくる:
(Being) Worn out from all the work, John decided to relax for a while.
(仕事に疲れ果ててジョンはしばらくくつろぐことにした)/
(Being) A man of few words, Uncle George declined to express an opinion.
(ジョージおじさんはことば少ない人だったので意見を述べるのを断った)
(Being) A careful host, he went into the dining-room to see that the table was properly laid.
(用心深いホストである彼は食卓の用意がちゃんとできているか食堂に見に行った)。
(荒木一雄・安井稔編『現代英文法辞典』participial construction[分詞構文]の項)(下線は引用者)
別の記述。
Used economically, this money will last until next payday.
= If it is used
(節約して使うなら、これだけあれば今度の給料日まで持つだろう。)
注意 ×Being used economically
(清水周裕著『現代英文法』、p.356)
beingに導かれた《分詞構文》については更に[1−14], [5−12], [6−40]、文頭の《分詞構文》については[7−66]参照。
(〔注7−10〕 了)
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