『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第七章 開かれた世界から

第3節 文頭・文中に位置する「カンマを伴う形容詞句・名詞句」


〔注7−30〕

   杉山忠一『英文法詳解』の「§5 同格およびそれに類する構文」には次のような記述がある。

《注意》.A born leader, he 〜.(天成の指導者である〔なので〕彼は〜); Desperately hungry, the boy 〜. (とてもたまらないほど空腹な〔なので〕その少年は〜)のような構文についてはp.422を参照。これらを同格と見ることも可能であろう
(杉山忠一『英文法詳解』、§5 同格およびそれに類する構文、p.660) (下線は引用者)
   私はここでは、この著者に対し、"A born leader"を「beingの省略された《分詞構文》」と「同格要素」のいずれであると判断しているのか態度をはっきり示して欲しい、などという無理難題は押しつけない。

   同書p.422には次のように述べられている。

(2)文の主語に先立って文頭に、名詞・形容詞をおいた構文は,しばしば、分詞構文と同じ内容を表す。
   The son of a well-to-do merchant, he was educated at Oxford.
   裕福な貿易商のむすこで〔だった;だったから〕彼はオックスフォード大で教育を受けた。
   Utterly friendless, the boy fell into evil ways.
   全然友だちがなくて〔ないので;ない〕その少年は悪の道に陥った。
   【研究】
1.この構文は、Being utterly friendlessのように分詞beingを補って、分詞構文の一種と考えてよいことが多い。しかし、実際にbeingが文頭に用いられていることは非常に少ない。なお、p.419,5参照。
2.この構文を作るのには、形容詞・名詞が1語だけということはなく(その場含についてはp.419,5の例文参照)、上例のように2語以上を必要とするのがつねである。
(ibid, p.422)
以下は、別の筆者による類似の見解。
2.次の例は分詞構文の分詞が省略されたものであるが、The only son of a CongressmanとJohnとが同格とよく似た関係になっている。分詞構文にするには文頭にBeing (=Since he was)を補えばよい。
   The only son of a Congressman, John was deeply interested in party politics.
   (代議士の一人息子だったので、ジョンは党派政治に深い興味を持っていた)
   (綿貫陽、宮川幸久、須貝猛敏、高松尚弘、マーク・ピーターセン『ロイヤル英文法 改訂新版』p.131)(下線は引用者)
更に[7−10]参照。

(〔注7−30〕 了)

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