『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第七章 開かれた世界から

第6節 何が曖昧なのか

その七 「相[aspect]」の曖昧さ


〔注7−74〕

   相の一般的概観については次のような記述もある。

I.定義。たとえばStandという動詞は、Stand up.のように瞬間的な動作を表わす場合と、A tall tree stands in front of the house.のstandのように継続する状態を示す場合とがある。このように動詞の表わす動作・状態には、瞬問的であるとか継続的であるというような、種々の様態・性質がある。この様態・性質、またはその様態・性質を示す文法形式をAspect(相)という。
(清水護 編『英文法辞典』Aspect(相)の項)
相を「完結相」と「非完結相」に二分するという考え方もある。
例えば、次の例では、
[1] John was reading when I entered.
I enteredという文は、私が入るという出来事を「1つの点」として見ている。すなわち,始まり、中間、終わりが1つの点の中に含まれてしまっており、入るという行為をそれ以上分割せずに提示している。このような意味を持つものは、完結相(PERFECTIVE ASPECT)と呼ばれる。一方、〔1〕の前半部John was readingは、Johnの読書の中間部を指し示している。つまり、出来事の内部の時間的構成に注目しているのであり、このような意味を持つものは、非完結相(imperfective aspect)と呼ばれる。Comrieは、完結相をさらに習慣相(habitua1)と継続相(continuous)に分け、継続相を進行相(PR0GRESSIVE ASPECT)と非進行相(nonprogressive aspect)に分けている。しかし、これはあくまでもComrieの分類であって、別の分類をしている学者も多く、「完結相・非完結相」以外に相の区別を認めるか、認めるとしてもそれを相と呼ぶか、あるいは相と呼ぶとしても、どのようなものを相と呼ぶかなどについては、学者の意見は一致していない
(荒木一雄・安井稔編『現代英文法辞典』Aspect(相)の項)(下線は引用者)
Curmeは相を「終結相」と「進行相」に大別し、次のように説明している。
1.Terminate Aspect. [終結相]
   この相は、当の動作行為[the act]を一つの全体、一つの事実として表す。
   (CURME, Parts of Speech, 52.1)
2. Progressive Aspect. [進行相]
   この相は、当の活動作用[the action]が進行中である[progressing]、続いている[proceeding]、それゆえ終結していない[not ended]ことを表す。
   (ibid, 52.2)
   相については更に[7−76]参照。

(〔注7−74〕 了)

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