第6節 何が曖昧なのか
〔注7−93〕
この五文例については次のような解説が付されている(以下の解説文中の「(3)cのタイプ」については[7−85]参照)。
同時生起の、後置される分詞構文と関係する重要なグループの例を次にみる。
これらはすべて(3)cのタイプであり、継起するできごとの最後のものを描く部分を分詞句にしている。すでに述べた理由からこの種の文はしばしば不自然になる。上の例にこのような分詞句の選択と順序がみられるのは、明らかな表現意図的理由による。すべての例に共通していえることは第一の部分に重きを置こうという話し手の意図があることである。そしてしばしば、後置される分詞句は追想付加的である。他に次のように補足されよう。
a で「彼」が「私」に飲み物をもってきたことと「彼」が振り向いて他の人に話しかけることとは同時的というよりは継時的であろうが、同時的として表現してもいいほど二つの動作の切りかわりは瞬時的であったことが、一般に同時生起を表わす後置される分詞によって示される。このことはまた分詞句が含む as の節(同時性を表わす)によって補強される。
b でも最後を分詞句にすることにより、「彼女」の第二の行為と節三の行為とがほとんど同時といえるほど間髪を入れぬものであったこと、第三の行為の時、第二の行為はまだ持続しており、両者が重なっていることが暗示される。
c で、最後の分詞句が表わす第二の行為は第一の節が表わす第一の行為の必然的結果で結びつきが緊密である。また最初の前置詞句 with a quick motion によっても速やかな動き、位置変化が示唆される。
d で Della の「指摘する」(発言)行為と二つの後続する分詞句が表わす行為とは継起的である。しかしほとんど同時的といえるほど相ついで生じている。二つの分詞句が and を用いず並べられていることがこの効果をよく出している。
それにひきかえ e では後置された二つの分詞句――第一のできごとに継起するできごとを表わす――が and によって連結されており、それ自体の継起性がよく示される。
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