LANケーブルをスピーカーケーブルに使ってみる;この時の問題は?
AVCTのお客様が、イーサネットLAN用に使用される、4対のケーブルを、端末で4対をばらして、各4本の絶縁電線をショートして、1対のスピーカーケーブルとして使用したところ、そこそこの音質を得られた、とのお話を頂きました。
この様な使用方法はケーブルが短い場合には聞き取れないこともあるのでしょうが、LANケーブルは、4対に異なった信号を伝達するために、LAN ケーブルでの使用方法で問題になる対間の”漏話”を低減するために、4対は、対よりのピッチを変えてあります。この結果、短いピッチで撚った対の導体長 は、長いピッチで撚った対の導体長より、導体長が数%長い事に成ります。
この原理は、2心の導体が構成するループを対ごと変える事で、漏話の結合量を減らす効果があります。
この様に導体長が異なった絶縁電線の4本を端末でショートして、1回線のスピーカーケーブルを構成すると、4対の導体に流れる音楽信号は導体の長 さが異なった分、音質的には濁った音になる可能性があります。これを耳で聴き取れるか否かは、各自の聴感感度に因ることになるでしょう。仮に聴き取れなく とも、LANケーブルの本来の使用方法に合ったケーブル設計は、1対のスピーカーケーブルをLANケーブルで加工した場合には適さないというのが、ケーブ ル設計上からの結論です。
しかし、此の若干の電気信号の時間差が、聴感上は好ましい結果を生む可能性はあるかもしれません。解像度は悪くなりますが、音楽的には、好ましいと聞こえることもあり得るか???。
オーディオケーブルの使用前エージング等に付いて (何故、音が変わるか?)
エーブイケーブルテクノロジーズ(AVCT)ではご購入前に、ご購入を希望する製品の試聴貸し出しを行っています。
(但し、ケーブル長は一般的に多く使用されている長さを想定し、必ずしもお客様の使用長に合致していないことがあります。)
最近、スピーカーケーブルSP-BW-Uの試聴貸し出しのご要求があり、当方で準備している試聴貸し出し用ケーブルの長さは3mですので、これをお送りいたしました。
お客様の使用長は1.5m程度のようで、この余ったケーブルをどの様に配線するかが問題になりました。
お客様はこの余ったケーブルをトグロに巻き、AMPとSPセット間を繋げ、AMPの出力を最大にして、
1日中、スピーカーセットに通電をしているとのお話を頂きました。(音は出ていません。)
オーディオ用ケーブルが内在している歪で、音質が変わるのはオーディオ愛好家の方ならば、
どなたでもご存じのことと思いますが、この内在している歪をどの様に短時間で無くすかが課題です。
ケーブルが内在している歪の多くは導体にあります。
特にスピーカーケーブルの場合には導体断面積も大きくなりますので、この歪を軽減するのには時間を要します。
この為、AVCTでは、試聴貸し出しケーブルの期間を1カ月に設定しています。
(AVCTのホームページ;「AVケーブルの教科書」;http://avctnegy.music.coocan.jp/)
しかし、ケーブルが内在している歪は導体に電流が流れないと、歪を取り去るのは困難です。
できるだけ配線の曲げを少なくして音量を上げ、音質の変化を確認することが必要です。
音質が安定し、特に低音域の音量・音質がきちんと出る事が大切です。
低音域と高音域のバランスが適当かを、よく聴くソースをもとに判断することも大切です。
何故、ケーブルで音が変わるかという課題に関しては、上記したホームページに、
”一般社団法人 日本音響協会誌;SOUND A&T No.88号 (2017年1月発行)
「特集 電気音響はケーブルで音が変わる?」”
を日本音響協会のご了解を得て添付してありますので、ご興味のある方はご覧ください。
(その他資料にも同様の記載があります。)
ご質問があれば、AVCTへご連絡を頂ければ、出来る限りのご回答を致します。
市中では、ケーブルの音質紹介が幾つかの雑誌で扱われていますが、主として試聴比較が主ですが、
上記雑誌に示された、ケーブル技術と音質の関係をお知りになると、
ケーブルの使い方、ご自分のオーディオシステムに合致した選択ができることと思います。
理論的面からの音質改善にご利用ください。
特に、オーディオシステムでは、ノイズ対策として、アンプとスピーカーシステムの様に、
音源側機器は出力インピーダンス(Zo)を低くして受け側の入力インピーダンス(Zi)を高くして、
ノイズ対策にしていますが、(Zi/Zo)をダンピングファクターと称されます。
この様に、ケーブルの両端に異なったインピーダンスの機器が接続された際に、
ケーブル内で消費されるエネルギーを挿入損失;IL(Insertion Loss)と称されます。
AVCTで販売している主なスピーカーケーブルの技術資料には、このILの周波数特性を記載しています。
一般の通信ケーブルでは、両端に接続される機器のインピーダンスはマッチング
即ち、反射が起こらないように、同じ値とされます。
しかし、オーディオ周波数帯では、ケーブルのインピーダンス(特性インピーダンス;Zo)は周波数特性を持ち、
周波数が上昇するにつれ、特性インピーダンスは低下します。
この様にミスマッチ状態でケーブルが使用されるので、音質が変化するのも一因です。
このミスマッチ状態でもILの周波数特性が音声帯域で一定であることが、
歪のない音質を得るのに重要な要素で、ケーブルの設計が重要となります。
音声帯域は、ケーブル特性を対数グラフで描くと4桁のグラフになりますが、
電話回線などで使用されている通信ケーブルは高周波ではありますが、せいぜい2桁で、
この点が音声を扱うケーブル設計上の難しさになっています。
音声帯域で挿入損失がフラットになっているケーブルは素直な音質を提供してくれます。
AVCTで設計・販売している主要ケーブルのILが上記分文献に紹介されていますので、
ご参照ください。
高周波伝送ケーブルとオーディオケーブルは別物です
現在、私が一緒にゴルフをさせていただいている皆様は高校時代の同級生で、私だけがこの中の二人と職場が同じだったという関係にあります。
先日、ゴルフとは別に、昼食会を他の友人も交えて行う会に参加させて頂きました。
久しぶりにお会いした、かつては高周波伝送ケーブルの技術を担当されていた方が、オーディオマニアになっておられました。
そこで私とは、スピーカーケーブルの音質議論になりましたが、彼は高周波伝送理論をスピーカーケーブルに適用して、この会が終了してから、秋葉原に同軸ケーブルを買いに行き、この同軸ケーブルをパラレルに7本を接続したものを手作りするとのことでした。
同軸ケーブルを使用したケーブルは出来上がり、AVCTのスピーカーケーブルと比較試聴をしたいので、サンプル提供の話が当方に来ましたので、最も基本的なSP-6P-PCUHDスピーカーケーブルを試聴用にお送りしました。
比較試聴の結果はSP-6P-PCUHDに軍配が上がったようです。
音声帯域のケーブルを扱う際は、導体の表皮効果が影響しはじめ、又、絶縁体の材質によっては、比誘電率が変化しますので、高周波域では問題とならないこれらの事項に注意を払う必要があります。
音声帯域は直流〜20kHzと帯域が狭いとお考えになられる専門家の方もいらっしゃるっと思いますが、対数グラフで描くと、4桁〜5桁になります。
高周波伝送は伝送方式にもよりますが、使用する周波数帯域は2桁程度です。
オーディオケーブルでは、この帯域の広さでケーブル特性が大きく変化しますので、音質が変わる要因になります。
最近珍しく、ケーブルの音質について、技術論を戦わせました。ご参考まで。
スピーカーケーブルの左右の長さは何故同じ方が良いか?
09/6/8
OKWaveと言うQ&Aコーナーがあって、登録しておくと、自分の気に入った項目の質問があるとメール配信してくれます。
タイトルの質問が有ったので、その理由を回答してあげようかと思いましたら、既に回答が締め切られていました。
回答内容を見ると、回答の頭出しに辛らつな事が書いてあって・・・と言う事で質問者はすぐ回答を締め切ったのかとも思いました。
私の文章も頭に血が上ると、かなりひどい事を書くという自己認識を持っていますが、注意しないと・・
回答者の回答内容が的を射たもので無いと思いましたので、技術的解説をしましょう;
パワーアンプの特性にダンピングファクター(詳細は下記URL参照)と言う指標があります。
これはパワーアンプの出力抵抗を小さくすることで、スピーカーの逆起電力の影響を少なくしようとの発想です。
(この別の解決手法がバイワイヤリングです。)http://www.netlaputa.ne.jp/~cadeau/Q&A34.htm
ダンピングファクターはアンプとスピーカーを直接(スピーカーケーブル無しで)接続した場合のスピーカーの抵抗とアンプの出力抵抗の比で定義されていますが、実際に音楽を楽しむ場合にはスピーカーケーブルが介在します。
スピーカーケーブルの導体抵抗はケーブルサイズ・使用長にもよりますが、概ねアンプの出力抵抗と同程度の抵抗値になりますので、ケーブルの抵抗分を加算したシステムとしてのダンピングファクターは低下します。
左右のケーブル長が違うと、導体抵抗はケーブル長さに比例して大きくなりますから、左右のダンピングファクターが違ってきますので、左右に同じ音を流した場合、理論的には(耳で聴き取れるかは別として)音には差が出てくる筈です。
これが左右を同じ長さにしたほうが良いと言う本質的な理由です。
AVケーブルが持つ固有の音は誘電体歪??
09/4/27
最近AVケーブルの音質問題で下記のような記述を見つけました。別に悪口を言うつもりはありませんが、その根拠が示されてないのと、ケーブルの伝送技術論と懸け離れた主張であるようで、私の理解の範疇を超えています。
別に理論立てが正解でなくとも、結果としてスピーカーから出てくる音が心地よければ良い世界の話ではありますが・・・
@ ケーブルが持つ固有の音は誘電体歪である
A 絶縁体が遅延時間を有する
B 誘電体が振動する
@の誘電体歪とは何を指しているのか分かりませんが、ケーブル伝送理論でいう誘電体は、導体間に挟まれる絶縁体であります。
電気的な等価回路(4端子回路)では直列に導体抵抗:Rと導体の持つインダクタンス;Lが入りZs=R+jωL、並列に漏洩コンダクタンス;Gと静電容量;Cが入りZf=G+jωCとなります。
誘電体が関与しているのは、GとCであります。
GはさらにG=ωCtanδで、tanδは誘電正接と言われ、誘電体固有の定数でありますが、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)のように信号伝送のケーブルの使用される材料ではtanδ=0.0002程度であるので、ZfはほとんどCの関数になります。
そこでCですが、これは使用される誘電体の比誘電率とケーブルの構造に由来します。
上記したPEやPPの比誘電率(εs)は低周波域から高周波域まで一定で、εs=2.3程度です。
通称”塩ビ”と称されるポリ塩化ビニル混合物(PVC)はケーブルに使用する場合には、柔軟性の要求があるので、可塑剤といわれる液体等と混ぜ合わせて使用されます。
PVCは内部に液体があるので、イオン化された電荷や電子が動きやすいために、PVCのεsは商用周波数の50Hz程度では7〜8、周波数が上がると、大きなイオン化されたものは周波数に追随出来なくなるため、100kHzでは4程度まで低下します。
即ち、Cは周波数で大きく変わるのでこれを称して歪と言われる事があります。
PVCは現在も電源コード等には多く使用されていますが、信号伝送用AVケーブルに使用されることは上記理由で無いでしょう。
これがケーブル技術の概説でありますが、何を称して”固有の音は誘電体歪”なのでしょうか?
Aの絶縁体が遅延時間を有するのは事実です。この事は下記URLの「伝播速度」という項に詳細な説明がしてあるので、参考にして下さい。
実際にケーブルを伝わる信号は20Hzでは真空中を伝わる電磁波(C=3x10^8m/sec 1秒間に地球を7周半回る)の10%程度で、100kHzになると50%程度にアップします。しかし考えてほしい。
10%でも地球を0.7周です。
我々が使用するオーディオケーブルはせいぜい数mであり、この違いが分かるだろうか?
又、音声帯域の周波数では遅延時間を決めるのは絶縁体(誘電体)だけでは無く、R、L、Gも関与している。
専門的には位相定数(β)から計算されます。
因って、遅延時間が音質を決定しているとはとても考えられない。
LANの様な高速のデーターをパラレル伝送する世界では、対間の伝播時間差が議論される事がありますが。
http://homepage2.nifty.com/NEGY/
Bの誘電体が振動するとはどんなメカニズムなのでしょうか? 誘電体が静電気で帯電でもしていないと、力は働かないのではないでしょうか?
導体には電流が流れますから、磁界があればフレミングの法則で力が働くというのは理解できますが、ただ計算していないので分かりませんが、オーディオ信号は電線が振動するほどの力を発揮できるのでしょうか?
音声帯域の電流で振動するなら耳に聞こえる音がするはずです。
これは冗談ですが、スピーカーが要らなくなるか?
実際に製品化した、ケーブル構造が、この@ABの主張をしているURLに記載されていますが、この構造は静電容量が大きくなる構造ですので、@の誘電体歪みを少なくする方向と違っているように見えます。
音質が良いという評価を受けているとしたら、音を良くしている理由はこの謳い文句とは違った要素が寄与しているのではないかと思う次第です。
このページの文章(上記)は、AVCT社様ブログのコピーです。
内容のみお使い下さい。
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