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Snow Scene Series in Seven Countries

 「ムーンリット・シリーズ」より


  暦の上では春だというのに、東方七都の一帯は季節外れの大雪に見舞われていた。
  七都の一つ、彩都の王宮の一室で、ふいに肌寒さを覚えて月鹿は目覚めた。寝ぼけ眼のまま、
  無意識に腕を伸ばしてみるが、ふかふかと馴染んだ毛皮には行き当たらず、あれ? と目を開ける。
  シーツにまだ温もりは残っていたが、一緒に寝ていたはずの衣織の姿がない。
  どうしたんだろう? と、月鹿はむっくりと身体を起こしてあたりを見まわした。
  まだ早朝らしく、窓の外は薄暗い。しかしぼぅっと地面のあたりが明るく光ってるのに引かれるように、
  月鹿はベッドを下りて窓際に近づいた。
  「うわぁ…」
  目の前に光景に思わず声を上げてしまう。
  視界一面、銀世界だ。屋根の上にも庭にも、遠くの森にもこんもりと白い雪が降り積もっている。どうり
 で寒いはずだった。
  まだ朝が早いせいで、眼下に広がる中庭にも足跡一つない。
  と思ったら、いきなり雪の一部がむくむくっと動き出して、月鹿はビクッとしてしまう。
  しかし次の瞬間、ぶわっ、と黒い塊が飛び出した。
  衣織だ。狼姿で、無邪気にやわらかな雪を蹴散らしながら走りまわっている。
  その子供みたいに楽しそうな様子に、月鹿は思わず微笑んでしまった。
  王という立場上――そして狼姿という状況からも――こんな人目がない時くらいでなければ、好きに遊び
 まわれないわけだ。
  月鹿は上着を羽織ると、急いで庭へ下りていった――。


  中庭に降り積もったきれいな雪の上で、衣織と月鹿が走りまわっている姿が窓の外に見える。
  声までは聞こえなかったけれど、月鹿が雪玉を作り、多分衣織を呼んで、振り返ったところにぶつけている。
 まともに顔に当たって、衣織がぶるるっ、と大きく身震いしていた。
  ……狼のくせにとろいな。
  と、思わず怜夜は、兄の情けない姿に内心で毒づいた。
  衣織はしっぽを振りながら走っていくと、その勢いのまま月鹿に飛びついて押し倒している。まったく即物的だ。
  月鹿が笑いながら、雪まみれの衣織の毛を撫でてやっていた。
  衣織のしっぽがうれしそうにパタパタ揺れている。
  王の威厳も何もない姿だが、……幸せそうだ。
 「うおっ、寒っ。――ああ…、雪、積もってるんですねー。すごいな」
  いつの間にか起きてきた雪那が窓際にいた怜夜の背中に張りついて、すっぽりと抱きしめるように腕をまわ
 してくる。
  うっとうしい、とは思ったが、やっぱりちょっと寒かったので――それだけだ――、怜夜はそのままにしておいた。
 「お、衣織だ。月鹿も元気だなー」
  そして窓の外の姿に気づいたらしく、感心した声を上げた。
  夜明け間近だ。白々とした月は消えかけていたが、雪が光を放っているようにあたりはふんわりと明るく包まれ
 ている。
 「俺たちも雪遊び、しますか?」
  喉で笑いながら、雪那が耳元でささやいた。
  首筋に、うなじに優しくキスを落とし、前にまわした手がするり薄い脇腹から胸へと撫で上げてくる。
 「しない。寒いのは苦手だ」
  ざわりと身体の奥に広がる疼きをこらえながら、怜夜は邪険に返した。
  うらやましそうに見えたのだろうか、と思うと、ムッとしてしまう。……まあ、ちょっと楽しそうだな、とは思ってしま
 うけど。
 「楽しいと思いますよ。雪だるま作ったり」
  誘いながらも、さらに雪那は唇を肩口に押し当て、片手が髪を撫でて、……そして小さく突き出している耳に触れた。
 「あっ…」
  やわらかくこするみたいに愛撫されて、思わずうわずった声がこぼれてしまう。
 「――ひぁ…っ!」
  立て続けにしっぽがするりと撫で上げられて、怜夜は大きく身体をしならせた。膝の力が抜け、無意識に雪那に
 身体を押しつけるようにしてしまう。
 「もうすぐ引っこんじゃいますからね。その前にたっぷり触らせてもらわないとー」
  にやにやといやらしく言った男を、怜夜は恨みがましい目でにらみつける。
 「雪遊びとか…、する気はないだろう…っ」
  この男がしたいのは別のイヤラシイ遊びだ。ゆうべもさんざんしたくせに。
 「急がなくても雪は逃げませんよ。ま、もうしばらくはね。……今はもっとあったまることをしましょう」
  すかした顔で言うと、雪那があっさりと怜夜の身体を抱き上げた。
 「雪那…っ」
  あせって声を上げるが、……温かい腕の中に埋もれるのは嫌いではない。力強い腕に身体を預けるのも、
 ちょっと安心する。
  顔を出し始めた朝日が雪を照らしはじめ、窓の外ではいつの間にか衣織の姿も人間にもどっていた。
  全裸で雪の中に埋もれて、月鹿がちょっとあせっている。
 「バカが……」
  思わず、小さくつぶやいた。
  が、すぐに怜夜も、衣織と同じ姿になっていた。
  ……温かいベッドの中で。

     ◇        ◇

 「まーな、雪だよ。すごいね、この季節にこんなに降るなんて」
  郭都の王宮の一室で、世継ぎである咲埜がふと動きを止めて、窓の外に目をやった。
 「ほら…、見てごらん」
  優しげに言うと、腕を伸ばして真菜の身体を抱き上げた。
 「ふ…ぁっ、あぁぁ……っ」
  咲埜の腕に抱かれたまま、真菜は大きく身体をのけぞらせる。
  つながったまま背中が起こされ、腰の上にすわらされて、中に入ったままの咲埜のモノがさらに深く、
 真菜の身体の奥まで貫いていた。
  真菜の頬を撫で、うなじのあたりを撫でながら、咲埜がクスクスと喉で笑う。
 「今はそれどころじゃないかな?」
  軽く腰を揺すりながら言われ、真菜は泣きそうになりながら、男の首にしがみつく。
 「さくの…さま…っ、もう……っ」
  恥ずかしく蜜をこぼす先端が、咲埜の腹にこすられてもう限界に近い。
 「ごめんごめん。あとで雪を見ながら一緒に風呂に入ろうか?」
  のんびりと言いながら、咲埜が真菜の細い身体を抱え直した。
 「いい子だね…」
  意地悪で優しい人が、淫らにあえぎ続ける真菜の顎を取り、甘いキスをくれた――。


 「ずいぶんと積もったな…」
  季節外れの雪で、咲埜付きの警護役である央伽は馬で王宮近辺の見回りをしていた。建物が潰され
 ていないか、道が塞がれてないか、といったことだ。
  やはり咲埜付きである珂耶も一緒だった。
  ちょうど厩に行こうとしていた雪那と顔を合わせ、同行を頼まれたのである。
 「つきあわせて悪いな」
  馬上からちらりとこちらを見て、央伽が口にする。
 「かまいません。ヒマでしたし…」
  ふだんの役目がまったく違うので、こんなちょっとした仕事でも央伽と一緒にできるのはうれしかった。
 めったにないことだ。
 「まだしばらく雪が続きそうですね…」
  またちらつき始めた空を見上げ、珂耶は小さくつぶやいた。はーっ、と無意識に手に息を吹きかける。
 「寒いのは苦手か?」
  ゆっくりと王宮への道を馬に歩かせながら、何気ないように央伽が聞いた。
 「いえ、特には…。暑い寒いで任務を滞らせるわけにはいきませんから」
  深く考えずに答えてから、あっ、と珂耶は不安になる。
  可愛くなかっただろうか? そんな答えは。苦手だ、と甘えるみたいに言った方がよかっただろうか。
  以前の任務についていた時なら、普通にそんな言葉も出たはずなのに、やはり央伽の前だと簡単な
 媚態もとれない。
 「なるほどな」
  淡々と央伽がうなずいた。そして、ふっと珂耶を見てさらりと言った。
 「実は、俺は苦手だ」
 「そうなのですか?」
  珂耶は思わず目を瞬かせてしまう。意外だった。
  厳格な軍人だ。それこそ、暑い寒いと感情を動かすとは思わなかった。
  驚いた顔の珂耶に、央伽がふっと笑った。
 「王宮に帰ったら……、温めてくれるか?」
  その言葉に、一瞬、珂耶は目を見張る。じわり、と胸の奥が――頬が熱くなってくるのがわかる。
 「はい…」
  目を伏せて、無意識に手綱を握り直し、珂耶はようやく小さく答えた――。

    ◇        ◇

 『珀苓、珀苓っ! すごいっ! いっぱい雪が積もってるっ』 
  悠都の王宮の中庭で、白ウサギのユキがうれしそうに跳ねまわっていた。
 「大丈夫か? 埋もれたら見つけられなくなるぞ」
  第一皇子である珀苓は、心配しつつもその様子を微笑ましく眺めていた。
 『大丈夫っ。……あ、でも育ててる野菜とか、大丈夫かなあ』
  ぽてぽてと跳んできて、不安そうに珀苓の足下に鼻をこすりつけた。
 「そうだな。父上が対策はしていると思うが。だが白菜とかにんじんとか、雪の下の埋めておけば甘くなると
 言うぞ?」
 『えっ、そうなのっ?』
  ユキが丸い目をさらにくりっとさせる。
  と、その時だった。
 『うわぁぁぁぁぁっ!』
  大きな悲鳴とともに、二階の窓から何か黒いものが跳んできて、勢いのまま白い雪の中にめりこんだ。
  反射的に珀苓はユキを抱え上げ、その怪しい物体を警戒する。
  少しして雪の中からのそのそと這い出てきたのは、黒ウサギだった。ぶるるるっ、と身震いしてから、 
 二階を見上げて哀れっぽい声で訴えている。
 『ひどいよー、寒いよー、入れてよー、葉月ー』
 「しばらくそこで頭を冷やして反省しろっ!」
  二階の窓から大声で叫び、バン! と窓を閉ざしたのは、珀苓の弟である悠都の第二皇子である。
 『あ、兄ちゃん…』
 「葉月……」
  黒ウサギを見てユキがつぶやき、珀苓も二階を見上げてつぶやいた。
 『きっとまた何かやらかしたんだね、兄ちゃん』
  ユキがやれやれ…、というみたいに腕の中で小さな頭を振っていた。

    ◇        ◇

 「おーい、もう春だぞ?」
  郊外にある館の一室で、第二皇子の香管はハルの枕元でうなっていた。
 「おい、ハル。起きろ」
  本体がコウモリのハルだが、冬眠中はころころと寝返りを打つみたいに、コウモリと人型があちこちして
 いる。今は人間姿で、すやすやと安らかな寝息を立てていた。
  つんつん、とピンク色のほっぺたをつっついてみるが、まったく目覚める様子はない。
 「おい、ハルーっ! そんな格好だと、寝てる間にやっちまうぞっ? ――いてっ!」
  全裸のハルはただでさえ寝相が悪く、手足がシーツからはみ出していて、なにげに扇情的だ。
  が、顔を近づけて耳元で脅していた香管の頬が、ちょうど向きを変えたハルの手でぶん殴られた。
 「んん…、ダメ…ぇ…、それ、私の桃……」
  どうやら誰かに桃を盗られる夢でも見ているらしい。
 「くそっ、いつまで寝てるんだっ」
 「香管様、まだ雪が降ってるんですから…」
  兄の側近である迫佑があきれたように言ったが、もう数カ月もの間、禁欲生活を強いられていた
 香管は、さすがに我慢の限界なのである。
 「ええい、雪が降ろうと槍が降ろうともう春だっ。さっさと暖炉に薪をくべろ。たたき起こすぞ!」
  起こしてしまえば、こっちのモンである。
  にやり、と香管は極悪な笑みを浮かべていた――。

    ◇        ◇

  しんしんと雪が降っていた。
  冬場は雪に閉ざされた山奥の温泉地で湯治をしている采駕も、そろそろ里へ下りられるかな、と
 思っていた矢先だった。食料や酒も、そろそろ残りが少なくなっている。
  だがどうやら、もう少しとどまらなくてはならないようだ。
  話し相手もおらず、見える景色も変わらないが、のんびりと過ごすことは嫌いではない。
  それに一人というわけでもなかった。
  采駕は、かたわらでとぐろを巻いている白蛇の小さな頭を軽く指先で撫でてやる。
  本体が白蛇のミトは、冬場のほとんどの時間、冬眠して過ごしているのだ。
  ミトが寝ぼけるように頭を采駕の指にすりすりとこすりつけ、身体を伸ばして腕に巻きついてくる。
  片手を奪われた采駕は苦笑して、その手をそっと膝に置くと、もう片方の手で小さな盃に酒をつぐ。
 「今年は春が遠いな…」
  クッと一息にあおってから、小さくつぶやいた。

    ◇        ◇

  寒いと思ったら、雪が降っていた。
  レキ都の世継ぎである暁飛は、ベッドの上でのっそりと首だけ持ち上げ、窓の外をちらつく白いものを
 眺めた。
  まだ夜明け前だったので、暁飛は白虎の姿だ。
  なるほど、いつになく白蓮が暁飛の身体にしがみついているはずだ。温かいもふもふの毛布を、
 無意識に引き寄せていたのだろう。
  ……それにしても、だ。
  こんなに熱烈に抱きしめられて、おとなしく寝ていろというのは無理な話ではないのか?
  暁飛は自問する。
  何と言っても、正式な夫婦なのである。
  これはお誘いと受け取ってもよいはずだ。
 『これはおまえのせいだぞ? 白蓮』
  にやりと笑って独りごちると、暁飛はのっそりと身体を起こした。白蓮の身体を囲うように四つ足で
 立ち上がると、身を屈めてそっと白蓮の首筋に舌を伸ばす。
  邪魔な夜衣は爪の先で引っかけて、なかば破るように引き剥がすと、じっくりと白蓮の身体を味わい
 始めた。
  小さく突き出た乳首を舌先でつっつくようにしてなめ、脇腹からへそ、さらに足の付け根から内腿の
 あたりまで、たっぷりとなめ上げてやる。
 「んん…っ、や……」
  目は覚まさなかったが、なまめかしく白蓮の身体がよじれ、無意識に暁飛を押しのけようとする。
  かまわず、暁飛は片方の前足で白蓮の膝を押し広げると、まだほとんど反応のない中心に舌を絡めた。
  虎の舌なので結構ざらざらしているわけだが、半分は人間なので野生の動物の肉を食らう必要はなく、
 おそらく普通の虎ほど痛くはない。それでも用心して、側面の方を使って愛撫してやる。
  くちゅ…くちゅ…、と濡れた音だけが夜明け前の空気に溶け、それにだんだんと白蓮の甘い息づかいが
 混じってくる。
 「あ…、ん…っ…、あぁ……っ」
  口の中で白蓮のモノはあっという間に硬くしなり、先端から蜜をこぼし始める。無意識のように暁飛の
  頭をつかみ、小刻みに腰を揺すった。
  暁飛は白蓮がにじませた蜜を舌先でなめとり、その露口を舌先でなぶってやる。
 「あぁっ、は…ぁ…っ!」
  刺激が大きすぎたのか、白蓮が腰を跳ね上げた。
  と同時に、さすがに目が覚めたようだ。
 「なに…? バカっ、やめろ……っ!」
  ようやく状況を察して、とたんに暴れ出す。
  暁飛は前足でその抵抗を抑えこむと、かまわず舌を伸ばし、奥の方までたっぷりとなめ上げてやる。
 「バカ…っ、よせ…っ! 離せっ、暁飛…!」
  腰をくねらせながらも、行儀の悪い白蓮の足が暁飛の腹を蹴り上げる。
 「おっと…」
  危うく身をかわした暁飛は、暴れる足をつかんで逆に大きく広げてやった。――人間の手で。
  いつの間にか暁飛は、人間の姿にもどっていた。
  いいタイミングだ。
 「相変わらずのじゃじゃ馬ぶりだな、奥様は。いや、じゃじゃ猫か?」
  にやにやと笑いながら、突き放そうとバタバタ振りまわす白蓮の手をかわし、顎をつかんで強引にキスを奪う。
 「うっ…、ふ…っ、ん……、やめ…っ」
  息苦しくなったのか、白蓮の抵抗が少し収まり、暁飛の肩に爪を立てるようにしがみついてくる。
  あやすように何度もキスを繰り返しながら、暁飛は白蓮に背中をたどって深い谷間へと指を沈めた。
  すでに濡れてとろけている襞を軽くなぶると、びくん、と白蓮が背筋を反り返らせる。
 「最低だなっ!」
  そして噛みつくようににらんできた。
 「虎にされて、さっきまで可愛く泣いてたくせに」
  にやりと意地悪く暁飛は教えてやる。
 「そっ、そんなことしてないっ!」
  真っ赤な顔で泣きながら否定するが、白蓮の中心はすでにねだるように蜜を垂らしながら小さく震えている。
 「そうか?」
  とぼけるようにうそぶくと、暁飛はさらに指を動かして、くちくち…と淫らな襞を掻き回してやる。
 「バカ…っ、やめろ……、もう……」
  暁飛の首にしがみつき、腰をくねらせながら、白蓮は息も絶え絶えの様子だ。
 「やめていいのか?」
  意地悪く言いながら、今度は二本の指で襞を押し広げ、入り口のあたりだけで浅く出し入れした。 
 溶けきった襞が、もっと、とねだるみたいに暁飛の指に絡みついてくる。
 「もうすぐおまえはネコになる。こんなにとろとろにして、疼きっぱなしで一日過ごすか?」
 「なっ…」
  真っ赤な顔のまま絶句して、白蓮がにらみ上げてきた。
 「ここに俺が欲しいと、素直にねだってみろよ」
 「誰が…っ!」
 「強情だな…」
  そんなところも嫌いではない。むしろ、気に入っている。
  にやにやと笑って、暁飛はぐいっと奥まで指を一本、差しこんでやった。中をえぐるように掻き回して
 から、あっさりと引き抜く。
 「いやっ、いや…っ、――あぁぁぁっ、ダメ…っ」
  こらえきれないように白蓮が腰を振り立てる。
 「……うん? そろそろ朝日が昇るぞ? 人間でいるのも限界じゃないのか?」
 「バカ…っ! 嫌い…っ! 嫌いだっ! おまえなんか…っ」
  我慢できないように腰を揺すりながらも、悔し泣きで白蓮がしゃくり上げる。
  下肢を直撃する可愛さだ。
 「仕方がないな…」
  いかにもな調子で暁飛はうなったが、自分の方が限界だった。
 「ほら…、入れてやる」
  熱く溶けきった襞へ先端をこすりつけると、暁飛はすでに猛りきっていた自身を一気に押し入れた。
 「あぁぁぁ……っ!」
  白蓮が大きく身体をのけぞらせる。
  ギュッと熱い粘膜に締めつけられ、すさまじい快感にたまらず暁飛も低くうなっていた。一気に放ち
 そうになるのを、必死にこらえる。そして白蓮の腰をつかんだまま、激しく、何度も突き上げた。
 「あぁぁ…っ! いい…いい……っ!」
  細い両腕が暁飛の肩につかみかかり、暁飛も白蓮の身体を強く引き寄せる。
 「白蓮……っ」
  唇を奪い、肩口に顔を埋めて、白蓮の匂いをいっぱいに吸いこむ。
  こらえきれず、あっという間に上り詰めた。
  白蓮もほとんど同時に達したようだ。余韻に震える身体がシーツに沈み、荒い呼吸をしていたと
 思ったら、……いつの間にか、腕の中で赤茶けたネコに姿を変えていた。
  まだちょっとばかりもの足りなかったが、仕方がない。続きは夕方まで待つしかなかった。
  気だるい身体をシーツに横たえ、暁飛は指先でそっと、ぐったりと丸くなったネコの背中を撫でてやる。
 「今日は外は雪だからな」
  喉のあたりへ指を伸ばしながら、暁飛はにやりと言った。
 「一日中、可愛がってやる」
  小さな頭が持ち上がり、「みっ!」と恨みがましい目で鳴くと、がじっ、と白蓮が暁飛の指に噛みついた――。
                  

                                                                                               END.