喜久水酒造(資)見学レポート

トンネル貯蔵庫見学

 青森とうってかわって秋田は晴れていた。
 東能代の駅で天洋酒店浅野さんが出迎えて下さる。浅野さんにお目にかかるのは初めてだが,この木陰浮月粋人盃の第五回例会(夏子の酒特集)の時に,ゲスト出品酒として喜久水など3品を頂いていた。

 浅野さんの車とタクシーに分乗してしばらく行くと,トンネル(写真1写真2)が見えてくる。看板は「トンネル貯蔵研究所」である。
 JRが持っていたトンネルを購入したもので,今は貴重な酒の貯蔵庫(写真)になっている。内部の気温は10度C,湿度は85%である。地下水が漏れてくるところがあり,ビニールを壁面に貼ってそこに水を集めてポンプで排出しているそうだ。

 入り口すぐのところに酒を保管している人の札が並んでおり,粋人盃の中川さんの札(写真)も「ちゃんと」あった。

酒どこ「べらぼう」での宴会

 べらぼうは「おいしいお酒とだまこもぢの店」なのだが,本当にだまこもぢが美味しい。だまこもぢ(以下は共通語っぽくだまこもちと言う)は,秋田名物きりたんぽと同じくお米でできた団子なのだけれど,すり鉢でお米をつぶして丸くまるめて寄せ鍋と一緒に煮るものだ(詳しい作り方は寄りみち98年9月号をご覧ください)。

 べらぼうでは,お忙しいところ喜久水平沢社長,天洋酒店浅野さんも参加して下さった。
 行者ニンニクに始まり,カニ,いぶりがっこ,いい寿司と延々と食べ物が続き,最後にはマスターの成田さんご夫妻も宴会に参加され,いろいろな「秘宝」も見せて頂いた。

 平沢社長がいろいろと面白いお話をして下さった。中でも興味深かったのは,社長は営業活動をしないのだそうだ。営業活動をして,あちらこちらと顔をつないで仲良くなれば一時的には酒が売れる。しかし,それでは長続きしないだろう,という考えだそうだ。それだけ自分の酒に自信がある − 飲んでもらえば解る − ということかもしれない。

 18時に始まった宴会が22時になっても終わらない。「川崎の人はあんまり食べないねぇ」という意味のお叱りをうけながら,(もうヘロヘロになった)我々は店を出た。

喜久水酒造へ

 昨夜あれだけ飲み食いしたにも関わらず,翌朝みんなすっきりと起きてきた。昨夜べらぼうでいっしょになった横浜からの二人連れの方と一緒に喜久水酒造さんを見学することになった。
 まず公設市場に寄ってお土産を買い,それから喜久水酒造さん(写真)へ向かった。

精米

 亀の尾を55%の偏平精米したものを見せてもらった。

蒸米と麹かけ

 掛米用に蒸し上げた米をスコップですくい上げて(写真),コンベアに広げて放冷しパイプで次の工程に送っていく。西田酒造さんで見た光景と似ているが,コンベアに広げてパイプに入る直前に,麹菌を振りかけていた(写真)。

 今まで酒造りの本(マンガ)などで見たのは、床に米を広げてそこに麹菌を振りかける、というものだった。石澤さんによると「これが秋田流なんじゃないの」とのことだ。

もろみ

  一時の作り方を教わった。出来上がったタンクに目の荒いザルを押し付けて,ザルの中に濾されて入ってくる酒が一時になるらしい。もろみ(写真)や泡消し機(写真)を見せてもらった。泡消し機に関する情報は寄りみち99年2月号に載っています。
 浅野さんによると,今年の田身の酒のもろみには玉泡(たまあわ)ができたので,とても期待できるそうです。

きき酒

 醸蒸多知の女神像の下に丸いテーブルが置かれて,女神に見つめられながらきき酒を行なった。
 大吟,だびょん(大吟)(写真),能代しぼったばし寒造り,大吟能代比羅夫(写真),特吟 能代,神龍亀の舞(新酒,大吟純米),純米吟醸亀の舞,高橋良吉,喜三郎の酒(写真),縄文能代と,何度もテーブルを回って味見を続けていたら,酔っ払って目も回った。

天洋酒店(浅野さん)

秋田県能代市住吉町9-22, TEL.0185-52-3722, 営業時間 9:00〜19:00, 無休