寄りみち(Vol.64,98年9月号)

涼しくなると またまた日本酒がうまい・・・みこし

 今年の夏は天候不良で,全国各地,特に北陸・東北・北関東では豪雨や長雨でたいへんなことになりました。ニュースでは土砂くずれ,川の氾濫で道路が川のようになり,田では稲が水につかってしまっている様子が放送されていました。
 災害に会われた方は本当にたいへんだと思います。そして,この秋の作物の収穫はどうなるのでしょうか。心配です。

 さて,川崎のこの夏はやはり夏らしくない夏でした。毎日の様に夕立が続いたり(商人泣かせの雨です)太陽が顔を見せずうす曇りでムシムシする,一日中,風呂場にいる様でドロンとした感じ。
 それでも例年よりは楽な夏だったのかもしれません。

 まだまだ日中は暑いですが,朝晩と少しずつ涼しくなってきました。
 朝起きた時に少しひんやりとした感じがあると,体調もいいし,気分的にやる気もでてきます。また不思議と食欲もわいてくる。
 秋刀魚やきのこなど秋の味覚の話題もぼちぼちと聞こえ始めて,旨い物で一杯やりたいなぁと思います。夏に疲れた体も少し元気になり,空きの味覚そして日本酒も夏を超えて酒質も柔らかく旨みもましてきます。

 なんだか欲求のポイントがピッタンコと合ってきます。楽しい季節の到来ですね。ただ気をつけないといけないのは食べ過ぎです。
 夫婦二人して体重が気になりだしている私たちは,焦って欲ばらずに,ゆっくりと秋を楽しみたいと思います。 (毎年,秋になると同じ事を思うのですが,体重計の針はずっと右方向に進んでおります。なんとかストップさせねば・・・)


だれも教えてくれない酒蔵のはなし

 酸度の計り方

 酸度はどう計るの?
 試験室で実際に酸度を測定しているのを見ると,作業は簡単なのですが,これを説明するのがむずかしい。

用意するもの (サンプル,試薬)

器具類

検査する物差し

 これで準備ができました。
 実際にどうやるか,順を追って説明します。

  1. 三角フラスコに,テストする酒を正確に10ミリリットル入れます。
  2. これに混合指示薬を2〜3滴入れます。この薬が赤い色をしていますから,フラスコの中は赤色(ピンク)を呈します。円を描くように振って混合させます。
  3. ピュレットから,NaOH を1滴ずつフラスコに落とし,振って混合します。フラスコの中の色が赤色で変わらなければ3の作業を何度も繰り返します。(何度目かに変化が起こります)
  4. NaOH を滴下してフラスコを振り,中身を混ぜると,赤色が薄いグリーン(青色)に変わります。(これで操作は終わり)
  5. ピュレットのメモリを見ます。NaOH が何ミリリットル減ったかわかります。メモリは1ミリリットルの10分の1の刻みになっています。NaOH の減った分が「酸度」です。

 こういうと,面倒な作業のようなのですが,NaOH を入れるピュレットは,50ミリリットルも入るので,テストする酒(など)をたくさん並べておき,次々に青色になるまで滴下して,その都度目盛りを記録しておくと,多数のテストを短時間で処理できます。
 テスト対象が酒母だと3.5〜9,もろみは1.3〜2.2ぐらい,市販清酒は1.0〜1.6ぐらいの酸度です。
 おわかりになりましたか。

 今年参加した月桂冠の酒造塾の酒造り体験で日本酒度・酸度・アミノ酸度の測定を体験しました。中学校以来の実験室での細かな作業,緊張しながらもよい体験でした。
 飲んで楽しむ側の一人として強く感じたのは計った数字では味わいはわからないなぁ,分析値はあくまでも目安だなぁということです。やっぱりごくりと味あわねばねっ。


9月のキーワード ”ひやおろし”

 秋によく聞く言葉です。
 1年を通して日本酒を醸造できる現代でも,大手の蔵をのぞいてほとんどのお蔵元は冬の寒い時期に1年分のお酒を仕込みます。

 秋9月〜10月頃になると早いところではぽちぽち蔵は動きだします。そして,厳冬の頃に吟醸を醸し,翌年の
3月頃に酒造りを終えます。

 日本酒は1年のサイクルで新酒から熟成したお酒へ育ってゆきます。(お蔵元によっては古酒という意味ではなく,お酒を熟成させるという意味で,お酒がそのお蔵元の考える年齢になるまで何年もねかせてから出荷するお蔵元もありますが)

 できたての新酒の若々しい味わいは芽吹いた若々しい山菜料理などのエグミと良く合いますし,夏はキリッと冷やした日本酒で暑さをのりきる。

ひやおろし

春にしぼった新酒に火入れをし静かに蔵の中でねかされ夏が過ぎて,さて秋,酒蔵の蔵内と外の温度差がなくなる頃に火入れをせずに出荷される酒
昔から春に出来たお酒は夏の間に熟成して秋口から出荷されるのが最も旨いとされた

という訳で,柔らかく旨みののった日本酒は秋の味覚にピッタリなのです。秋から冬にむかって食材の旨さにも拍車がかかります。日本酒もどんどん旨くなる。ですから”ひやおろし”と書いてなくても,みんな春よりもずっと大人になったお酒です。

 当店では季節限定のお酒以外は一年中同じ銘柄のお酒を定番として扱っています。(当店では日本酒を冷蔵庫(0°C)で保存しています。じゃあ冷蔵庫の中で熟成するの?はいだいじょうぶです。低い温度でキレイに熟成してゆきます。つまりお酒はおいしい方へ変化してゆくのです)

 この変化を楽しみたい方は春に一度楽しんだ銘柄のお酒を,秋・これからの季節にもう一度楽しんでみて下さい。”おや,おんなじ酒かな?”と感じられることも多いかと思います。お酒選びに迷ったら,ぜひもう一度もどってみて下さい。新しい発見があるかもしれませんよ。あなたの口にぴったりと合う定番酒の味忘れていませんか?

〜能代・喜久水酒造さんからのおいしいお便り〜

今晩はこれで一杯
 純米吟醸”喜三郎の酒”にぴったんこの秋田名物”だまこもち鍋”

  1. 鳥ガラスープを作ります(30分〜1時間)。沸騰させないように注意して,アクを取ってください。
  2. 炊きたてのご飯をすり鉢に入れて,すりこぎでつぶし,ねばりが出て米粒の形がなくなったら,一口大のだんご状にする。
  3. スープを別の鍋に入れ,しょうゆ,砂糖,お酒で味付けして,切ったゴボウ,舞茸,鳥肉を入れて煮ます。煮立ってきたら中火にしてアクを取り除きます。
  4. しょうゆ,糸コンニャク,セリ,だまこもちを入れ2〜3分煮込み,最後にネギっを入れやや弱火にて召し上がれ。(セリ,ネギは煮すぎないで,だまこは煮くずれない程度がポイント)
  5. ”喜三郎の酒”とご一緒に・・・




今月の酒・味だより

諏訪泉「鵬(おおとり)」 鳥取

 華やかな香り,やわらかく旨みが広がります。
 ここ数年,純米大吟の方は,ほどよい酸味がここちよく,ひきしまったキレ味を導いてくれます。また,大吟醸は繊細さに磨きがかかり,なめらかな舌ざわり,含んだ時のやわらかさを口中でしっかりと感じとることが出来ます。純米大吟か大吟醸かの単なるちがいではなく,まったく別の世界を楽しませてくれます。
 鵬純米大吟醸(生) 720ml・・・3,689円, 1.8リットル・・・7,887円
 鵬大吟醸(生) 720ml・・・3,398円, 1.8リットル・・・7,402円

府中誉・「渡舟」純米吟醸ふなしぼり<生>

 お蔵元に秋まで預かっていただいた純米吟醸「渡舟」が入荷しました。
 品切れしていてごめんなさい。でも待っただけの事はありますヨ。
 春先の頃とくらべて,ぐっと米から出る旨み(甘み)がのってきたようです。
 香りも若々しい柑橘系の香りからふくらみのあるデリシャスリンゴを思わせる香りに変化しています。
 味わいに香りがのってきて,すべるような舌ざわりがとてもいい。やさしい味わいを楽しんでいただけます。
 720ml・・・2,050円, 1.8リットル・・・3,900円

酒一筋「吉備よし」

 春に生で楽しんでいただいたお酒を火入れし,夏を越したものです。
 1.8リットル・・・2,100円


先月号へ 来月号へ トップページへ