寄りみち(Vol.69,99年2月号)

 さあて、今日はおかんにしようかな!かん酒の絵

 毎日、寒い日が続いていますがお元気ですか。
 寒いということもあってかここのところおかんでおいしいお酒や、おいしいおかんのつけ方などをよく聞かれます。

 おすすめのおかんの方法は湯せんにかけていただく方法ですが手軽に電子レンジでチンしようがなんであれ寒い日にかん酒は体もあたたまるし気持ちもホッとしていいですね。また、お酒を楽しむときにかんをつけるという動作を加えることで、また一味が加わるのでしょうか。実際におかんにするとお酒の味も変わります。

 おかんにむいている酒、むいていない酒、いろいろありますが試してみるといろんな発見があって楽しいです。
 自分でこのお酒は冷やがいいなあと思っていたものっが意外にもすごくおいしくかんがついたり、やっぱりこれは冷やが旨いなぁと納得したり、一つのお酒でいろいろな温度の変化を楽しむと、ちょっと得した気持ちになったりして。

 皆様も自分の好きな酒で自分の好みにピッタンコのかんの温度を探してみてはいかがですか。
 個人、個人の密かな楽しみが生まれてきます。

 だれも教えてくれない酒蔵のはなし<泡消し棒と泡消し機>

 もろみは泡を立てます。その泡には酵母がビッシリ付いているのです。
 仕込みタンクの中にいる酵母の過半数にもなります。
 だから吹き上がる泡をタンクの外にも溢れさせたり捨てたりはできません。まだ科学が酒づくりに入ってくる前から、私たちの先人はそれを知っていました。

 泡が溢れたり零れたりしないようにするにはどうするか。
 大きいタンクを使って、上部に空隙を持たせればいい。そこで仕込みタンクの大きさは、実際に仕込む米、米麹、水の合計の5割増の容量のものを使うのが酒づくりの常識となっていました。

 でも、5割の空隙でも足りなくなることがあります。高泡状態と呼ばれる数日間だけですが。

 問題はその数日間、その状態のモロミは数本なのですが、泡が高まるのは昼も夜もなのです。
 泡を消して30分もするとまた溢れそうになります。そこで蔵人の中に「泡番」という役目を置きました。
 泡番は24時間、昼も夜も手に泡消し棒を持って仕込み蔵を回ります。

 その道具ですが、岳を数本束ね、先を開いただけの簡単なものです。あまりに簡単すぎてかえって説明しにくいほどです。これを手にして仕込み桶から泡が零れそうなのを泡消し棒でかき回して泡を消す。古老に聞くと泡の消し方にも技術があったそうで棒は扇状に水平に振らなければならなかったとか。どんなに考えても簡単な仕事です。でも泡番は嫌われました。あまりに簡単だから2部交替などはできない。一人で24時間ぶっ続けやらされたのです。

 「眠い」。でも寸時の居眠りも許されない。泡番は順番にやらされました。だれも見ていないからと居眠りなどして泡が溢れると酒のできに関わってきますから「厳罰」が待っています。それでもチョクチョク失敗はあったようです。

 その時はたいへん。
 おやっさん(杜氏)に見つからぬ内に土間に零れたものを桶の外側に付いたものを拭き取らねばならない。これを怠るとあとで異臭の原因になって、さらに重い「厳罰」になるのです。

 今は辛い泡番はありません。昭和40年ごろ、モーター仕掛けの泡消し機(ホームページ作成者注:写真,喜久水酒造さんで撮影)ができたからです。機械というには幼稚な、機械好きな子供でも作れるような装置です。昭和40年ごろ、100ボルト電源の小型モーターが安価に買えるようになりました。モーターの軸に針金の羽を直結し、仕込みタンクのマンホール上に跨がせればいい。それだけの装置です。

 この泡消し機ができて、辛い泡番はなくなりました。泡番があったのは、ついこの間のことです。日本の科学文化の進歩は日進月歩です。それを取り入れて蔵人たちもどんどん若返りました。

 いま、酒蔵は若者の夢のある楽しい職場です。




今月の酒・味だより

満寿泉・花一献吟醸生酒

 まだまだ寒いですが,この酒が店に並ぶと,もうすぐ春だなぁと思います。花一献は春を想わせる華やかなお酒です。やさしく梨の様な香り,口中でやわらかく広がる,ふくらみのある辛口のお酒です。
720ml・・・1,750円, 1.8リットル・・・4,000円

萬寿鏡・道楽仕込純米

 ついに発売となりました。
 萬寿鏡が室町・古備前の大甕で仕込んだ純米酒です。未発売だった頃は,蔵元から送られてきた500mlビンを全員のみな様と粋人盃で楽しむことしか出来ませんでした。一昨年に蔵元はもう一本のカメを手に入れ,今回の発売となりました。一本のカメから約200本として今回約400本,当店1店当たりの本数は・・・。
 なにぶんにも量が限られております。
 味わいは,新酒とは思えない,つややかなやわらかさが広がり,少々酸を含んだ様な米の旨みがほのぼのと口中に花を咲かせます。
 一口飲めば,口元がニヤリとする様なほのぼのとしたふうあいを体感して下さい。
<生酒>1.8リットルのみ・・・5,100円

府中誉・渡舟ふなしぼり純米吟醸(生酒)

 たいへん長らくお待たせいたしました。
 府中酒造さんからやっと「渡舟」の新酒が送られてきましたよ。発売日よりは少々早くの入荷です。みな様に楽しんでいただける様に,半分は春に新酒で味わっていただき,そして残りの半分は秋まで蔵元の冷蔵庫で預かっていただく事になりました季節の変化を感じられる1本になると思いますので,ぜひ味わってみて下さい。
 若々しく,ひきしまった青りんごの様なイメージの力強いお酒です。
720ml・・・2,050円, 1.8リットル・・・3,900円

手取川・吟醸あらばしり(生酒)

 パインの様なやわらかく甘みを感じる香り,口中でやさしく広がって,透明感のあるキレイな酒質です。
 すっきりと後味の良い辛口タイプ。
 う〜ん,今夜もちょっと飲みすぎてしまいそう!
 そんなお酒です。
720ml・・・1,457円, 1.8リットル・・・2,913円

『荒走り』って・・・なんだ?
 吟醸酒などは酒袋(お酒のモロミを入れる袋)に入れ槽(ふね)に積み重ねて搾ります。その積み重ねた重さだけで最初にしたたり出てくる少し白濁したお酒の事です。(手取川あらばしりはおり下げして出荷されています)

刈穂・山廃純米生原酒・番外品

 さて,やっとの入荷,年末からよく聞かれていましたがやっと番外品の季節です。ググッと力強いお酒です。おっ,やっぱり辛いなぁと思いますが,温度が上がって来て常温に近くなると味もふくらんでとても良くバランスして来ます。山廃らしい旨酒です。
1.8リットル・・・2,762円

山鶴特別純米・辛口+15

 ふくらみがあって,力強く広がりキリッと切れ味の良い辛口の酒です。
 燗も辛口ながらバランス良くつきます。ぬる燗よりやや熱めがいいです。(←私は)
1.8リットル・・・2,800円



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