寄りみち(VOL.83, 2000年6月号)

飛び跳ねるカエル

 "キン"と冷えた日本酒で一献・・・爽!

 関東地方は6月9日に梅雨入りしました。例年どおりだと言うことです。これからだいたい40日間夏休み頃まで続くんですよね。
 あ〜ぁ、うっとおしい。けれど降る時に降ってもらわないといけないので、せめて、梅雨を楽しむ事でも考えたいと思います。

 さて、6月3日(土)に岡山県の酒一筋・利守酒造さんの実験田(実験田のお米で真白ラベルの「田植酒」、あの旨酒が造られます)で、酒一筋ファンによる田植がありました。酒米、赤磐雄町の田植です。
 赤磐雄町米は雄町の中でも最高の品質で利守酒造のある赤磐郡で作られる酒米です。

 「雄町米は旨い酒になる」、雄町米は昔から酒米としての評価のとても高いお米でしたが、丈が長く栽培がとても難しいため、いつしか消えて幻の酒米となってしまいました。その雄町米を苦労のすえ復活させたのが利守酒造です(利守酒造で作られるお酒はほとんど赤磐雄町米で造られます)。今年の田植に私たちは参加することが出来なかったのですが、粋人盃のメンバーより5名が参加されました。

 今回は今までの実験田と変わって、もっと広い田圃になったそうで、とても大変だったとのこと。
 おいしいお酒の為にガンバッテくれてありがとうございました。秋の稲刈りにはぜひ参加したいと思います。

 また当日は50名を越す参加者でとてもにぎやかだったそうですヨ。おいしいお米が出来るように元気に育ってほしいですね。田植の様子と稲の成長の様子が酒一筋のホームページで見ることが出来ます。気になる方は見て下さい。
利守酒造のホームページURL http://www.sakehitosuji.co.jp/

吟醸王国 石川県・松任・鶴来 主の住む里へ<3> 手取川正宗

 3月4日〜6日に北陸松任・鶴来の銘醸蔵3場を「木陰浮月粋人盃」のメンバーと探訪して参りました。4日の「天狗舞」、5日の「菊姫」、そして最終日は「手取川正宗」吉田酒造店を訪ねました。
 「手取川正宗」は明治3年の創業で、霊峰白山を源とする清水・暴れ川と言われた「手取川」を酒名とし、また熱心な吟醸酒造が熾烈な品質競争を続けていた昭和40年代の「全国新酒鑑評会」において昭和47年初出品で「銀賞」以来、昭和48年〜56年まで9年連続「金賞受賞」し一気にその名声を高めていった。
 北陸の地で迸る鮮烈な味わい、魂の酒「手取川正宗」、以来枚挙にいとまがない。
 今回のレポートは「木陰浮月粋人盃」のホームページを作成しています私、小泉が書きました。

【3月6日(月) 酒魂手取川! (株)吉田酒造店訪問】
 僕にとって、手取川と言えば第一に荒走りだ。日本酒連想ゲームをやったとして「荒走り」と問題が出されれば、答えは「手取川」である。その次にはは、吉田蔵の価格の謎は待っている。大吟醸で、あの美味しさで、なぜ1升たったの2500円で出せるのだろうか。
 もちろん、鳥越城とか古古酒大吟醸とか、すごい酒はいっぱいある。でも、サラリーマンの僕が毎晩飲める酒の価格は自ずと決まってくる。

 ということで、「手取川荒走り」を「槽(ふね)からの荒走り」のまま呑めたらいいな、というイヤシイ根性を持ちながら、吉田蔵の価格の謎を探るべく、吉田酒蔵さんに向かった。
ささゆり・梅舞花・恋つくし
 松任の駅からタクシーに乗ってちょっとで到着する。玄関まで吉田社長が出迎えて下さる。ぱっと見た印象は、お酒好きの人の良い田舎のおじさんという感じである(すいません)。
 ちょうど雑誌の取材が来ていて、蔵の玄関脇の苔生した庭石に手取川が並べてある。プロのアングルを盗もうとしてか、同じ構図で撮影会がはじまる(写真は左から「ささゆり」「梅舞花(うまいか)」「恋つくし」)。事務所の横を、「おじゃましま〜す」と言いながら通りぬけて、お座敷に入る。

 「うちは魂の酒でしょうか」と社長がおっしゃる。
 昭和42年に初めて東京に酒を持っていくが、その後に一度撤退して、本格的に東京進出したのは昭和56年と遅いことなど、石川県の大手の蔵によって地酒が守られてきたことへの感謝など、蔵のこれまでの経緯を話される。
 そして社長の酒造りの考え方は、地酒を造るのには限界があるから蔵元の目の届く範囲でやるべきであり、「蔵主でありたい」というものらしい。訪問の最後のほうで、自分が酒造りに参加した時はヒヤヒヤものだった話を交えながら、蔵元も酒造りに参加すべきである、ということもおっしゃった。

 その後、「吉田蔵」について話が始まったので、隙があれば「なんで安いのですか」と質問しようと待ち構えていると、  「吉田蔵が安い理由は、人件費を無視しているからです」といきなり秘密を明かされた。
 「吉田蔵」は吉田杜氏(社長の息子さん)と吉田酒蔵の社員方々が造っており、社員の方々は、社員としての給料の中で働いているので、結局、人件費がほとんど掛からないということらしい(厳密には、決算上の原価計算と仕込み上の原価計算を分けて考えているということだ)。
 社長は、吉田蔵を出すことで、他のメーカーからディスカウントの反撃が来ることや、社員の方々から労働強化だという反発がくることを心配されていたが、特に大きな問題はなかったということだ。ただ、吉田蔵は1ヶ月で売り切れてしまう人気商品なので、継続的な生産と供給が必要であると感じているらしい。

 古酒についても、本来古酒とは、消費者、酒販店、あるいは料飲店の人が、「自分だけの酒」として作るものであり、メーカーが作るものではない。それに対してメーカーの役割はは、科学的に分析して古酒にしやすい酒、あるいは古酒にすると良くなる酒を開発することである、という考えをお持ちのようだ。でも、社長自らが、自分だけの酒として、古酒をたくさんお持ちであるところが、うらやましい。
店頭ディスプレイの概念図
 さらに石澤さん(栄治さん、さとみさんにもかな?)に向かって、「せっかくここまで来たのだから、商売のネタの一つでも」ということで、店頭ディスプレイの話をされました。手取川、菊姫、天狗舞と3種類のビンと、酒菜の入った小鉢と、「北陸の三蔵を回ってきました。」のようなカードを添えて、お客さんに少しでも情報を発信してほしいということでした。

 続いて蔵見学をさせて頂く。洗米、仕込みタンク、酒母室、貯蔵タンク、ビン詰めラインを順番に見て回る。小さい(失礼!)蔵なので、酒母室で仕込み(?)をするなど、一つの部屋を色々に使いまわしていて、目一杯に頑張っていることが感じられて、なぜか嬉しくなった。
 2階へ上がった時に、その真下に洗米工程を見ることができた。桶の中へ水が注ぎこまれて米が洗われ、クレーンで吊り上げられていく。また途中で、無炉過原酒を味わう。思ったよりも渋味が少なく飲みやすい。としているうちに見学が終わってお座敷に戻る。

 社長には、他にも、「ミスター・ジョージ(?)」「梅舞花(うまいか)」「夢見る星」などの酒の話や、純水で作った酒はなかなか醗酵しなかったこと、生の酒は1年くらい置いて1〜2月くらいに飲むのが美味しいこと、6月が一番ゆっくりできること、7月になると蔵人の手配などで忙しくなり始めること、3月26日が甑(こしき)倒しだけれど今後は大吟醸の仕込みをもう1サイクル増やしたいと思っていること、そうすると搾りの最後は4月末になるので田植の時期(ゴールデンウイークは田植の時期らしい)に重なってしまうことなど、とてもたくさんのお話をして頂きました。でも全部は書ききれないのでこれで終わりにします。

 見学をさせて頂いた手取川(吉田酒蔵店)のみなさん、ツアーを企画して下さった石澤さん、どうもありがとうございました。この次もよろしくお願いします。


★ 快く、私たちを受け入れて下さいました「天狗舞」「菊姫」「手取川」の蔵元社長をはじめ、お蔵の皆様、本当にありがとうございました。心より御礼を申し上げます。

粋人盃メンバー一同


今月の酒・味だより

杉勇 特別純米原酒スペシャル H9BY・10BY・11BY

 お待たせしました。山形の蕨岡(わらびおか)酒造の茨木さんが、店を訪ねて見えられたときに、きき酒用にと無印の原酒を持って来られた。
 ピシッとハリのある素晴らしい純米原酒だった。”このまま出すの?”とたずねると、”いえ、加水してから出します”との答えがかえってきた。ラベルも瓶も凝らないで良いから是非このままでと、出していただいたのが、この特別純米原酒です。今年出荷の11BYをお願いしたところ、”9BY、10BYも少しだけなら”と茨木さん。・・・なんてラッキーなんでしょう。
 皆さん、3年間の時のうつろいを同じ規格の特別純米原酒で味わってみて下さい。
 1800mlのみ各・・・2500円

9BY
蔵内の常温でねかされた深い味わいと、古酒らしい熟成感が出始めたところで、まぁ、古酒の風格が備わりはじめた1年生といったところ。プラムを思わせる香りの口中感と、まだいきいきとした心地よい酸味を味わえる辛口。クラッシュアイスを入れて飲んでもさわやか。
10BY
昨年に新酒で楽しまれた方!あの時の味わいを思い出してみて下さい。う〜ん、思い出せない・・・それでもいいんです・・・一度口に入れるときっと記憶がもどってくるんじゃないかな。お〜こんな風に変わるんだって・・・
11BY
若さにあふれた原酒ならではの力強さを感じます。飲みごたえは十分にあり、また、これからの暑い日にはオンザロックでも貴方を受けとめてくれます。

日高見の限定純米原酒 「天竺(てんじく)」八反錦がそろそろ入荷してきます。

 春先にきき酒をさせていただいた時は「雄町」純米吟醸よりも先に出していただきたいと感じました。どう変化しているのか。待ち遠しいです。
 また、この1月で「雄町」純米吟醸がぐっと味のりしてきたので、くらべ飲みできれば最高です。いま気合いの入りっぱなしの日高見です。
 1800mlのみ・・・各4000円


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