寄りみち(VOL.84, 2000年7,8月号) さざえ

 暑い日が続いていますがお元気ですか?
 この暑さに負けないように、しっかり食べるために欠かせないのがおいしい日本酒。
 キンと冷やした日本酒で心と体にたっぷりと栄養をあげて、この夏を元気で楽しみましょう。
 今年の夏はとても暑い夏だとか・・・。くれぐれもご自愛くださいませ。

 さて、この暑〜い7月1日より酒蔵では新しい酒造年度が始まります。
 12BY(BYは Brewery Year の略)のスタートです。12BYは平成12年7月1日から翌年平成13年の6月30日までの1年間です。10月1日の日本酒の日にスタートというイメージが強いですが、実は夏の盛りなんですね・・・。
ちょっぴり不思議ですね。
 また、夏の酒蔵の行事に初呑切り(はつのみきり)があります。活気のある冬とちがって静まりかえった蔵で行なわれます。温度が上がってきて、火落ち(清酒の変敗現象)の危険性のでてくる6月〜7月に貯蔵タンクの呑口(酒のタンクの底に近い所に酒の出し入れのための穴がある)から少量の清酒を取り出して、各貯蔵タンクのお酒が健全に貯蔵されているかを検査したり、香味の変化を調べたりします。現在は貯蔵技術の向上で貯蔵中に火落ちする事はなくなりましたが、昔の習慣通りこの季節に行われています。
 冬に造られたお酒は夏の間も大切に管理されて私たちの所へやって来るんですね。

 先月号で紹介した利守酒造の「田植え」のレポートが参加者の池田さんより届きました。

『田植レポート』 池田浩一

 前日に高松市に宿泊していた4人(鈴木さん、小泉さん、中川さんと私)は、朝6:43高松発のマリンライナー6号に乗り込み岡山に向かった。天気予報では、当日岡山は雨ということだったが、中川さんの「毎年、田植えの時には予報は雨だけれど、田植え中は降ったことがないから今回もきっと雨なんか降らないよ」といった根拠のない妙な自信??に勇気づけられて岡山に田植えに向かった。

 岡山駅には7:42に到着したが、バスの発車時刻が8:20とのことで岡山駅地下街にて軽く朝食をとって待機した。

 連日の早起きの割にはみんな元気であったが、このバスでいくと集合時間に間に合わないことがわかって少し焦りがでてきた。9:10にやっと利守酒造に到着した。店先で利守弘充さんの「遅刻ですよ」のお出迎えをうけ早々に着替えて田植えの準備に取りかかった。(写真1写真2

 我々が田圃にでる頃には(私が一番遅れたけど)、皆さん先に始められていて早々仲間に入れてもらって田植えを始めた。(写真3)昨年の経験があると言っても一年ぶりで少々はじめは戸惑ったのだ。はじめは一本、二本、三本と苗束からとって正確に植えていくようにしていたのだが、なかなかみんなに追いつけない。私は石毛さんの隣で植えていたのだが、田圃は四角でないために進むにつれて端にいる人が請け負う量が増えていく。やっとの事で植えるとすぐに次があって、はじめはついていくのがやっとだったが、少し植えるうちに調子が出てきた。それにしても隣の石毛さんは手際がいい。さすが何度も参加していて手慣れたもんだと感心する。

 途中通りがかりの人に「何のイベントですか?」と珍しそうに声をかけられた。確かに手植で田植えは珍しいでもこっちは好きでやってきて植えているんだから手植えでなくちゃ納得がいかない。

 田植えをしながら「きゃあーアマガエル!イボガエル!」と叫び声もでていたけれど蛙も居ないような田圃で田植えする方がもっと気持ちが悪いやと心の中でつぶやいた。

 結構調子よく行き始め、少し疲れたなといったところで1枚目の田圃の田植えが終わった。
今年の田圃は、昨年のとは違う場所で、1枚の田圃が植え終わると隣の田圃が待っていた。今年は張り切っても結構やりがいがある。(後で少し筋肉痛がでました)2枚目もはじめの方からほとんど最後まで植えることができた。(満足)(写真4

 2枚の田圃に植えている間、中川さんの予言の通り雨は一滴も降らずにどうにか12時前には終えることができほっとした。

 その後は、昼食で、にぎりめしと山葵漬け、それに今年はしじみ汁もいただいた。今年の田植酒と赤磐雄町も一緒に出していただいたが、今年の田植え酒はもう一升瓶2本しか残ってないそうでぐっと飲み頃になっていてうまかった。

 しじみは、弘充さんが近くでとったのだそうだが、より分けると採った量の二割しか無くなちゃうそうで、しじみ汁全部、全員分をとるのは、大変だったそうだ。

 田村杜氏の酒米のルーツには雄町がくるといった思い入れがこもった言葉をききながら雄町で作ったお酒をいただくとおいしさも少し違って感じてくる。田植えの後の、冷酒ににぎりめしの取り合わせも程良く疲れた身体には絶妙だった。宴会でもお酒が進んで結構打ち解けたムードになってきて、参加者した他の人とも話をすることができ、盛り上がったところで終了。

 宴会が終わって改めて今植えたばかりの田圃を見渡しながら今年も豊作であるようにと祈った。

 20世紀最後の田植はこのようにしておわったのでありました。

 これが、田植酒となって飲めるのは21世紀。楽しみに待つとしよう。

第41回木陰浮月粋人盃のようす


今月の酒・味だより

能代・大吟醸 花散里

 今、やや冷たいぐらいの温度に戻ったお酒を楽しんでいる。
 口の中にしんみりと味が絡んでくる。旨味と切れのアクセントとなる適度な苦みと渋味が、酒の若さを伝えながら静かに去ってゆく。この辺が喜久水の魅力だろうか!
 水の持ち味とは別に、味への探求心が頑固に主張する。張りのある酒質はあくまで辛口の一言では言い表せない。じっくりと楽しんで下さい。
720ml・・・2600円

辛口純吟 くどき上手 亀の井酒造

 冷蔵庫から出してきたキンキンに冷えている辛口純吟をクッと一口、やわらかな旨味が口中に広がったと思うや、舌の中ほどでスッと消えてゆく、とてもキレの良い酒です。超スッキリ、思わず盃がすすみます。テーブルの上に置いていたお酒も、汗をかきやや冷たいぐらいになってきた。
 また、ここからがいい。

 フルーティな口中香と旨味がどんどん広がってだんだんと酒の骨格が表われてくる。そしてキッとした辛さも顔を出す。キンキンの時の超スッキリの味がどんどんと柔らかく味わいのある辛口の酒へ変わってゆく。
 こうなると、食べながらのお酒にもってこい。どんどん盃がすすみます。 キンキンでもやや冷えでも飲み過ぎ要注意のお酒です。
1800ml・・・3000円

天狗舞・石蔵純米大吟醸

 ほのかにチェリーかプラムを思わせる上立ち香、口中感は繊細かつ滑らかで、あくまで優しい米の甘みがしっかりと広がる。
 また、それぞれの五味が切れをともなうすばらしいアクセントとなって味わいの輪郭を表現している。「素晴らしい」とつい一言出てしまう。僅かな余韻を口中に残して去っていく引き際、味わいはまさに「魔術師」の酒。
720ml・・・4000円

清泉・亀の王 特別純米(生貯)

 ちょっぴりフルーティーな香り、やさしくお米の旨みが口中に広がります。後味がさっぱりとキリッとしているのは、ここちよい酸がお酒を引きしめているからでしょうか・・・。
 すっきりと、やわらかく食中に気取らずに楽しめます。亀の尾80%、五百万石20%の特別純米酒です。
720ml・・・1429円(限定入荷)


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