寄りみち(VOL.72, 99年5月号)

 心わく,新緑の季節です

 みな様,ゴールデンウィークは楽しみましたか?
 天気の良い日には,早くも初夏を感じるくらいにすがすがしく,気持ちのよい季節になりました。このところの気温で,洋服も一気に半袖,気持ちも家の中からどんどん外へと向かっています。

 緑もグッと濃くなってきて,私たちの気分をグッともり上げてくれます。こうなってくると,景色と空気の良い所+美味しい物のある所へ行きたくなります。
 「あ〜,どこかへ行きたい・な」が,つい口から出てしまう毎日です。

 ところで,4月9日午後1時15分より2時までの45分間,地元のFMラジオ・かわさきFM・K-Cityに,石澤文範が出演しました。しかも生放送です。
 本人よりも家で聞いている家族の方がドキドキです。

 「市民スタジオから・こんにちは」のパーソナリティの岡島祥子さんの優しそうな声から始まって,次に紹介を受けた本人がガビガビに緊張した声が・・・

 「こりゃ大丈夫だろうか?」と思いましたが,岡島さんの的確な質問とやさしいリードでミニ新聞「寄りみち」の事,日本酒を楽しむ会「木陰浮月粋人盃」の事を始めとして,自分の事,どうして日本酒が好きになったのか,日本酒に対しての考え,等など話しました。

 ちょっぴり話は横道に外れたりしましたが,無事終了。
 本当に岡島さんがいい人でよかった。
 本人は,かなり疲れたらしく,素人に45分は「キビシー」と言いながらもよい経験だったそうです。

(かわさき市民放送のホームページhttp://www.city.kawasaki.jp/25/25hoso/home/fm.htm )

極寒の東北<3> 酒楽童子酒蔵訪問の旅

 東能代はローカルの匂いの一杯詰まった駅で,地元の人たちが知り合いの見送りに来たり,待ち合わせしたりと,列車の到着と共にしばしにぎあう。そんな中に「天洋酒店」の浅野さんを発見!ご無沙汰です。
 相変わらず元気そうだ。一行とあいさつを済ませてその足でタクシーに分乗して,「喜久水トンネル貯蔵庫」に向かった。能代は青森と違ってドンヨリと曇ってはいたが,時おりお日様が顔を出したりしてくれた。
 私が能代を訪れるのは何度目になるだろうか。

 定かな記憶でないが「喜久水」の平沢社長がJRの旧鶴形トンネルを手に入れるには大変な苦労があった。

 当初の計画ではトンネルの入口と出口はJRの管理下に置かれていたのでJRに使用の申請。近隣の農家の生活抜け道(近道)として使われていたこともあり,残炎ながら却下される。

 そこで平沢社長は「下が駄目なら上だ!」と今度はトンネルの通っている上物,つまり「山」ごと買う計画を立てる。

 地主は何件かに分かれていたが,一件ずつ口説いて歩き,やっとの思いで全ての山の権利を手に入れる。入口と出口はJRの物でも山の権利は「喜久水」にあるので中の使用(トンネル)を申請し許可をうけた。

 私自身も貯蔵庫になってから初めて来るので,少々浮き足立っている。約20分程で「喜久水地下貯蔵研究所」に到着。トンネルの入口に,ここがトンネル貯蔵庫であることを示す看板が掲げてあった。

 看板の前で一同記念撮影。浅野さんの後についてワクワクしながら,いざトンネルの内部へ・・・(トンネルの合鍵を持つ浅野さんがやけにカッコイイ)

 入った瞬間「あったか〜い」と感じた。
 そしてかなり向こうの方に出口が見える,と同時にトンネル預かり「木札」が目に留まる。すかさずツアー参加の中川さんの預かり札を探す。沢山の預かり札の中に確かにあった。
 そして,片割れの木札とぴったりと重なる,一同感激!

 トンネルの中で,瓶貯蔵された吟醸酒が静かに眠りについている。
 トンネル内は約11度・湿度85%。

 そこへ平沢社長が駆けつけてくれた(いつも迫力を感じるオーラが出ていると思うのは私だけだろうか)。社長にトンネルの年間の温度差を伺うと,ほとんど変わらないらしい。夏場はとても涼しいと話してくれた。

 ひとしきり見学した後,ホテルにてしばし休息を取り「酒どこ・べらぼう」にて大宴会となりました。行者にんにく,花咲蟹,ハタハタの飯寿司,だまこもぢ・・・次から次へとテーブルを賑わし,酒談義に花が咲き,能代の夜を満喫しました。

 翌朝,市場見学の後,いざ「喜久水酒造」へ。弘化年間(1884年〜1849年)麹屋から始まり明治8年酒造免許取得,昭和18年企業整備で一時廃業,23年に平沢酒蔵店として復活し現在に至る。「喜三郎」は代々襲名し,現社長で6代目にあたる。

 現社長は,いろいろな試みをしていて,その一つに一週間の酒造り体験,喜久水酒造に一週間泊り込んで酒造りを体験させていただける。そしてその体験の証として「醸蒸多知(カムタチ)」の称号が与えられるのだ。これは,酒の仕事に係わる人に限らず受け入れてくれます。

 蔵では偏平精米・蒸し・種付け・搾りなど見学し,いよいよきき酒に移る。
 瓶詰め場の脇で11酒ほどきき酒させていただいた。高橋良吉,特吟能代,神龍亀の舞,純吟亀の舞,比羅夫大吟,だびょん大吟,縄文能代,能代しぼったばっかし,熟成とどりとっぺね,喜三郎の酒純吟と続いた。

 個人的には,喜三郎の酒の出来の良さが強烈に印象に残っている。
 昼食の時間ぎりぎりまできき酒し,寿司弁当で昼食。12時38分発・特急いなほ12号で東能代をあとにした。(つづく)

トンネル預かり木札 ・・・ 喜久水のトンネル貯蔵庫でファンのための酒を預かってくれる約束札で,喜久水のこの吟醸酒を10年寝かせてみようとか,何かの記念にとか,理由は何でもOK。ちなみに年間預かり料はたったの500円。


第35回木陰浮月粋人盃のようす


(高井さんの)のんべえのたわごと2

・上元須豪友
 上元にはすべからく豪友と酌むべし(上元の節句には豪放磊落(ごうほうらいらく)な友と酒を酌み交わすがよい)。

・端午須麗友
 端午にはすべからく麗友と酌むべし(端午の節句には眉目秀麗な友と酒を酌み交わすがよい)。

・七夕須韻友
 七夕にはすべからく韻友と酌むべし(七夕の節句には風雅な友と酒を酌み交わすがよい)。

・中秋須淡友
 中秋にはすべからく淡友と酌むべし(中秋の節句には活淡な友と酒を酌み交わすがよい)。

・重九須逸友
 重陽にはすべからく逸友と酌むべし(菊の節句には俗気のない友と酒を酌み交わすがよい)。

※ ホームページ作者注: 漢文の表現がちゃんとできていないかもしれません。




今月の酒・味だより

満寿泉・冷用吟醸「涼」

 さぁ,いよいよ「涼」が入荷しおてきました。夏のお酒,満寿泉の季節の吟醸酒です。今年はすごくやさしい口当たりで,キレの良いお酒です。そばやそうめんなどとさっぱり,キュッとやりたい感じ。
 さっそく店で試飲用に封を開けたのですが,「なんだか風鈴の音がきこえてくるようなお酒ですね」なんてオシャレな事を言う方も・・・。
 一杯・二杯・三杯・よいかな風鈴(山頭火)

 ちょっと気が早いですかねぇ。
 720ml・・・1,750円,300ml・・・510円

酒一筋「秘伝」(生) 山廃純米大吟醸

 限定200本,火入れ熟成の前に特別に生で出荷されました。
 山廃なのですが,口中で若々しく巨峰,う〜ん,もう少しすがすがしいマスカットの様な香りも含みます。すこし,常温に近づくと本領発揮。存在感のある酒米・赤磐雄町の味がどんどんとおしてきます。
 口の中いっぱいに広がった旨みを引きしまった酸が切ってゆきます。キレも良く,旨い。ついに次の一杯へと手がのびてしまう。う〜ん,あぶない酒だ・・・
 1.8リットルのみ・・・5,800円

富久長大吟醸 閑花風(かんかふう)

 みずみずしい香りとともに,たっぷりとした味わいが口中に花を咲かせてくれますョ。
 香りが高くても,いくらでも飲める飲みあきしない酒です。
 1.8リットル・・・3,850円

酒屋女房の盗み酒(生)

 ちょっと変わった名前のお酒です。全国の日本酒大好きな酒販店の奥さん50名ほどが集まって愛媛の梅錦さんにお願いして醸しておただいた純米吟醸です。
 やさしい吟醸香とスッキリとしたキレの良いやや辛口タイプ。
 さらりとしているので,すいすいと飲めます。これからの暑い時にもさっぱりと飲めるので,おすすめです。
 1.8リットル・・・3,000円,720ml・・・1,500円

府中誉「渡舟」濾過前純米(五十五)

 今年初めての試みとして,タンク1本だけ醸されました。
 復活米「渡舟」(山田錦の親のお米)で造られています。

 フルーティーな香りの中にも純米酒らしく,しっかりとしたふくらみがあり,口中ではお米らしいやさしい甘味のある香りと旨みが広がります。
 やわらかな口当たりときれいなキレ味についつい盃が進みます。
 生詰め1.8リットルのみ・・・2,950円

萬寿鏡・亀覗(かめのぞき)

 かめより,ひしゃくでお酒を汲み出すおいしいお酒に,楽しさとゆったりとした時間がくわわります。ゆっくりと一献・・・。
 1.8リットル・・・4,760円

★今年は小甕3個のセット「甕三昧」9,800円もありますょ・・・。

一本義・伝心

 こころ伝える酒”伝心”。やわらかくすっきりとしたキレイな辛口の酒です。
 常につまみのあいの手をつとめてくれるそんな酒です。ぬる燗もいい。
 1.8リットル・・・2,629円,720ml・・・1,165円

梵「寒椿」純米大吟醸

 やわらかな口当たり,しっとりとした落ちつきと,奥行きのある深い味わいのあるお酒です。きっと”旨い”と感じていただける吟醸酒です。じっくりと楽しんでいただきたい一本です。
 720ml・・・3,500円

 ※ 超吟の入荷は6月です。

杉勇・特別純米原酒9BY

入荷しております。品切れしてゴメンナサイ。


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