≪物欲番長北海道旅行第3部≫
平成12年7月19日
朝5時半に時計の目覚ましを合わせていた。アラームが響く。目がさめると、雨は上がっていた。「やったぜー!」
晴天とはいえなかったが、昨日を考えればずっといい天気といえよう。これからこの旅行で一番標高差がある狩勝峠(かりかちとうげ)を越えなければならない。大体標高差は500メートル。地図を見た感じでは、つづら折りの坂道ではなく、ほとんど直線。これは、それほど急な坂道が続いていないことを表す。日差しも強くないし、気温も20度ちょっと。初めての峠越えのポンチャンにとっては、丁度良いだろう。
二人で、ボイラー室に入ると持ち物は全部乾いていた。ずぶ濡れだった地図も、靴も、サングラスも・・・・。
昨日、旅館のおばさんには、朝早いので勝手に出て行くことを告げていた。親切にしてくれてありがとう!!荷物は乾くし、雨はやんでるし、おばさんのおかげで今日は気持ちが軽い。
「さあ出かけよう!!」
朝ご飯食べてなかったのでまずは、コンビニを探しながら走り始めた。俺の場合は特に空腹だと力が出ないのだ。ゆっくりと景色を見ながら走り始めた。潤滑オイルをさしたのだがまだギア跳びは直らない。あまりチェーンに負担をかけすぎて、チェーンが切れるのが怖かった。ポンチャンに先を走ってもらい。あまり負担をかけないようにゆっくり走った。しばらく走ると牧場が広がっていた。広い!!一人でゆっくり走っていると、ますます広大な北海道を肌に感じ、嬉しくなった。
牛が1匹カコイ越しに並走してきた。「おっ」
それが2匹になり3匹になり・・・20匹ぐらいが俺を見つめながら並走してくる。「すげーーー!」
もう止まらない訳にはいかない。「元気かーー!」大声で話し掛けた。牛が皆で近寄ってくる。牛達が可愛くてたまらなかった。大歓迎されたような気がした。北海道ばんざーい!!(本当はえさ欲しかっただけかもしれないが・・・)
しばらく牛と一緒にいて「頑張ってくるからなー」と言い残してまた走り始めた。
しばらくすると、ポンチャンがコンビニの前で待っていた。すまん牛と遊んでた。
コンビニで朝食を取っていると、馬を乗せた車が止まった。「何をする馬ですかー?」聞いてみた。
「一応競走馬だよ。違うのもいるけど・・。峠越えるんかー。頑張れよー。」
馬見ながら朝食を取り、振り向くと「お前らどこ行くんだー」と、トラック運転手のおじさんが話し掛けてきた。「峠越えて富良野に向かいます。向こうの天気は、どうですか?」「ジャーンジャン降ってるぞ、お前ーーー!」と言われた。言い方が元N部長に似ていた。
雨が降っている事より、その言い方がおかしくて、しばらくしてから二人でずっと真似していた。何で「お前ー」なんだ?今回の旅行中ずっとこの言い方ばっかりになった。
「ジャーンジャン走るぞ、お前ーー!」(N部長風に読みましょう)
走り始める。これから10キロぐらい登りになる。霧が出てきたた。ポンチャンに「ペースを崩さずにゆっくり登ろう」と話し掛けてから、別々に登り始めた。上に行くほど霧も濃くなってくる。10メートル先が見えないほどの濃さだ。
相変わらず力を入れてこぐと、ギア跳びする。「チェーンここで切れたらコエーなー。」ゆっくり登った。雨は降っていないのだが、体中に水滴がつく。ビショビショになった。
ポンチャンにとってはきついだろうなーと思いながら、走っていた。上でどれくらい待つのだろう。着いたら彼の様子を見てどこまで行くか目安を立てよう。ここを越えれば、富良野までは登りは無くなる。ある程度は時間どおりに走れるだろう。
あまりのギア跳びに自転車降りてオイルをさしていた。するとポンチャンがすぐ追い抜いていく。びっくりした。ゆっくり走ったとはいえ思ったよりずっと早い。彼は、ただの物欲番長おじさんではなかった。
とりあえず、頂上まで行こう。こっちが待たせたらカッコワリー。ほぼ一緒に到着した。見くびってました御免なさい。
上は寒かったので、ホットコーヒーを飲みながら、次の計画を練った。ポンチャンの話によると、ここから20キロ先の幾寅の駅が映画の「ぽっぽや」の撮影現場だそうだ。別に遠回りになるわけでもないので、寄ることにした。
「目指すは幾寅!ジャーンジャン行くぞ、お前ーー!」(N部長風に読みましょう)
ここからは、ずっと下り坂。峠越えは上り坂の苦しさから下り坂の楽しさが倍増する。よく下りだけ走りたいという人がいるけど、これは邪道。下っているだけでは喜びが感じられない。登った人だけが登った分下る権利を得るのだ。これが峠越えの醍醐味だ!
しばらく下ると霧がなくなり晴天になった。きもちいーーー!!