第2部



☆徳島に泊まる

山口さんと別れ、地図をしばらく眺めていた、というか又、腹が減っていた。山口さんがうどんの話ばかりしていたのでついつい空腹なのに気が付いた。高松行くには、約70キロで徳島までは約20キロどうしよう・・・・・。3時だったので、高松行ったら7時前、徳島行ったら1時間。取り敢えずうどん食って考えよう。うどんはすぐ腹が空くので悲しいけど、またうどんが食えることがうれしい。


すぐうどん屋は見つかった。入ってうどんを注文する。

さすが四国のうどんはうまい。

すると隣の親父がうまそうにビール飲んでる。

あーうまい!」]無視して食べてると

うめーーー!」。

「・・・・・」

うめー言うな!頭の中で叫んでいた。酒飲むと、走れなくなるのは良く分かっていた。今の状況なら確実に眠くなるので飲むわけには行かなかった。


「中生一杯と、押し寿司一つ」


しまったー頼んじゃった。ほとんど無意識だったけど注文を断れ無かった。いつのまにか小休憩だったはずが、長い休憩になっていた。自動的に行き先は、徳島になった。


徳島で電話して、山口さんと飲むことも考えたが、学生でないことが確実にばれるのでやめることにして、駅の観光センターに向かった。駅では有料で教えてくれるのだが、お姉さんがタダでしかも案内所と契約していない一番安いビジネスホテルを紹介してくれた。


自分の中では、貧乏学生だからしょうがないと、妙に納得していた。


やったー風呂入ってビール飲んで寝よー。




☆龍馬の教え


5月2日

朝起きて、良い天気だった。気持ちも晴れてよいはずだったが、また憂鬱な気持ちが頭の中を支配し始めていた。


「つまんねー世の中だなー」


昨日あんなに色々面白いことあって、断ち切れていたはずなのにどうしたんだろう。


「徳島からなら吉野川を上がって池田で曲がるのがいい。しばらくすれば高知じゃ。景色もいい。」

昨日の山口さんの言葉を思い出しながら、まず走り始めた。


なんか憂鬱。景色も天気も最高なのに・・・。ぶつぶつ日常の不満のあることを思い出し、声に出しながら走っていた。


参ったなーうどん食うか。

又うどん食っていた。


バイクで周っている人に話し掛けられコースの情報を聞き、世間話をした。

うどん屋を出て又走り始める。なんかしょうもないことがまだ自分の頭の中を支配していた。

なんか四国まで来てどーしょもない奴。

しばらく走っていると、日本一の一本杉と書いてある道の駅に着いた。

「日本一か。」なんかさめていた。

取り敢えず中でアイスクリームを食べ日焼け止めを塗ってボーとしていた。そのころ日本一の一本杉はなんとなく忘れていた。「走るか。」。なんとなくお土産を見ながら、出ようとした時坂本龍馬の人形が置いてあった。

突然衝撃が走った。これから高知の土佐に向かうので当然龍馬の故郷であることは分かっているはずだった。でも人形を見た瞬間自分の高校時代から尊敬し手本としていた龍馬のことが急に頭の中を駆け巡った。

「おんしは小さくなったのー。昔は違ったのになー。」

話し掛けられた気がした。人形を見つめてから、自転車を走り始めた。


急に憂鬱な気持ちがなくなっていた。竜馬については、「竜馬がゆく」に始まって、政治学からリーダー論などさまざまな本を読みあさっていた。だがここ2.3年龍馬の本に触れてなかった。あれほど好きで困った時は、いつも竜馬ならどうするか考えたものだった。心底尊敬し濃い人生を生きたいと思っていた。

彼からは簡単に言うと、言葉よりも「実行力」を学んだ。迷うことでなく考え実行すること。
今でも俺の気持ちの中では、基本となっている。

いつのまにか頭の中で彼の生涯を思い出し、今の自分の立場なら彼はどうするか考え始めていた。それから約4時間あまりこのことだけを考えながら走っていた。

ずいぶん龍馬に怒られたような気がした。なんかちっちゃいことばかり、気になり始めていた自分が恥ずかしい。

気分が晴れ晴れし、風景も空も美しく感じ、すっきりしていた。

暗殺に行った勝海舟の話を聞いてその場で弟子になったり、大政奉還された後、一番の功労者なのに自分は権力に加わらず

「わしは、世界の海援隊になる。」カッコイーよなー。

「面白く無き世を面白く」カッコイー。・・・・・ん?これは、高杉晋作の辞世の句だった。

でもいずれもすばらしく、自分の心に刻まれている言葉だ。いつのまにか高知についていた。



高知に来てよかったー。なんかとてもすがすがしい気持ちになった。龍馬の銅像等は、桂浜に行けばある。でも今日は170キロ走っていたので時間は7時を過ぎていた。「龍馬に会うのは、明日にとっておこう。」今日はもう休んでOさんの指令のカツオのタタキにするか。



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