(あとがき)これは敗戦後ものした私の第三の小説集である。この時期の作品には自然に敗戦の慟哭がにじみ出たようである。「哀愁記」と「命ながし」とは、雑誌に連載されたが、後者に挿絵を書かれた三岸節子さんは、いつも涙をこぼしながら挿絵を描いたという、それも感傷の涙ではなかろう。石狩書房の高橋君は、敗戦後、大きな理想を抱いて出版を初められたが、その良心も善意もこの不幸な時期には、生かす術がなくて、困却したことが多かったようである。しかし、初志貫徹して良書を刊行する覚悟であるという、将来を期待する次第である。 昭和二十二年春 三宿の仮居にて

哀愁記
全262頁
1947年7月10日 発行
定価 50円
石狩書房
絶版



【 掲載作品 】

哀愁記  わがむすめ  松下の場合  後姿  命ながし