(作者のことば)このごろの私たちの日常生活は、きびしく暗いことが多くて、たおやかな芽のような若い人々は、胸をいため、きずつくことが多かつたろうと思います。これはそんな期間に書きつづけた小説です。日本の将来は、若い人々の肩にかかつていると、よくいわれますが、その若い人々がすくすくとのびなければ、日本の将来は明かるくなりません。私は若い人々がのびやかに、自分を生かし、成長することを祈るつもりで、この小説を書きました。若いひとびとのけだかい心は、いつの世にも、宝石のように、貴くかがやいています。その貴いものをもつて、今日のようなけわしい人生の旅路を、美しくできないものでしようか。『美しき旅路』と題したのも、そうした意図でした。読者が、この小説の主人公の境遇にとらわれることなく、この主人公の生きようとするすなおな心にしたがつて、おなじ美しい旅路を行かれますように、祈つてやみません。 昭和二十五年二月末日 著者

美しき旅路
全230頁?
1950年3月15日 発行
定価 80円(地方は85円)
ポプラ社
絶版



【 掲載作品 】

美しき旅路