/// 五条天神 /// (06/05/17)

 西洞院松原下ルにある五条天神です。
地下鉄の五条駅、または四条駅からも徒歩10分ぐらいでしょうか。
住宅、ビルに囲まれた一角にあります。

大己貴命(おおなむらのみこと)、少彦名命(すくなひこなのみこと)、
天照大神(あまてらすおおみかみ)を祭神とする神社です。

桓武天皇の平安遷都に当たり、大和国宇陀郡から天神(あまつかみ)を
勧請(かんじょう)したのがその興りと伝わり、弘法大師が関わった
との話も伝わる古い神社です。
ビル、住宅街の中にある五条天神
天神とは天之御中主神(あめのみなか
ぬしのかみ)に始まる日本の神々の中で、
高天原に生まれたか、葦原中国に降臨
した由緒正しい神々のこと。

天神社と云えば菅原道真を祀る神社かと
思ってしまいますが、五条天神で云う
天神は”あまつかみ”、日本神話の
お話のようです。

五条天神は当初「天使の宮」、「天使社」
と称していたとか。西側の通りは通称
「天使突抜通」(てんしつきぬけどおり)、
この五条天神の境内を突き抜けて通りが
造られた為にそう呼ばれます。
ただ、一般には「東中筋通」と云われ、
地図もこちらになっている場合が多いです。
また「天使突抜町」なる地名も残ります。
端正な社殿です。
五条天神にまつわる話として、「源平盛衰記」
巻十八には文覚上人が伊豆に配流の折、
上人は自らの財産を狙う船員の話を聞きつけ、
「金を五条天神の鳥居のそばに埋めて
おいたが、帰洛するまで守護せしめ給え」と、
わざと祈念したとか、これを聞いた船員は
急ぎ上洛し、鳥居の周囲を隈無く掘ってみるも、
金は出ずに鳥居が倒れたとの話が伝わります。

また義経記には牛若丸と弁慶が初めて出会った
のは、この五条天神と記されています。

文覚上人はかつて”二つの恋塚寺”で登場
した人物、牛若丸と弁慶の話も
”ここにも義経の足跡”で触れた話です。
他の天神と同じく”牛”も奉納されています。
もう一つ、「宇治捨遺物語」には五条天神の
近くの柿の木に仏様が出るらしいとの噂が
あって、庶民の参詣も多かったとか。

その天使社も後鳥羽天皇の時代と云うから
鎌倉時代初期に五条天神宮と名を改めること
になります。

祭神の一つ少彦名命は禁厭(きんえん)、
いわゆる”まじない”や医療、酒の神として
知られ、五条天神も今なお厄除け祈願に詣る
人が多い社です。また、少彦名命は小さ子神
の由来を持ち、童話の一寸法師の原型とも
云われます。一寸法師、桃太郎など小さな子
が人並み以上の能力を発揮する童話、神話は
古今東西、世界にも存在するようで、
その意味では牛若丸と弁慶の話とも共通する
ものでしょうか。

最後に五条天神で節分に授与される”宝船図”
は船に稲穂が一本あるだけの素朴な絵柄
ですが、日本最古の宝船図とも云われ、
厄除け祈願に授かる人も多いとか…

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