2019/11/29
リヒャルト・ワーグナー
タンホイザー

タンホイザーのあらすじと解説

項目 データ
初演 1845年 ドレスデン宮廷歌劇場
台本 リヒャルト・ワーグナー
演奏時間 3時間10分

ワーグナーの『タンホイザー(Tannhauser)』は、
彼の作品の中でも最も人気のある作品の一つです。
正確なタイトルは『タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦
(Tannhauser und der Sangerkrieg auf Wartburg)』といいます。

台本はワーグナー自身によるもので、物語は二つの題材を組みわせて書かれています。

【二つの題材】:『タンホイザー』と『ヴァルトブルクの歌合戦』

 『タンホイザー』
タンホイザーは"快楽"のために、ヴェーヌスの洞窟に籠ります。
洞窟から出ると、彼はそれを悔い改めるためにローマ教皇を訪れますが、
許しを得ることはできませんでした。
タンホイザーは再びヴェーヌスの洞窟に戻ります。
皆は彼を探しますが、彼が見つかることはありませんでした。
 『ヴァルトブルクの歌合戦』
1207年、ヘルマン1世の宮殿(ドイツ)で、"負けたほうが命を落とす"
という歌合戦がおこなわれました。
歌合戦に参加したハインリヒは、逆境に立ちます。
彼は魔術師を呼びその力で勝利しようとしますが、魔術を見破られ敗戦します。

ここでは、そんなワーグナー『タンホイザー』のあらすじを紹介したいと思います。

登場人物

タンホイザー(テノール):ヴァルトブルク城の騎士
ヴェーヌス(メゾソプラノ):ヴェヌスベルクに住む快楽の女神

ヘルマン1世(バス):テューリンゲンの領主
エリーザベト(ソプラノ):ヘルマン1世の姪、タンホイザーの恋人
ヴォルフラム(バリトン):ヴァルトブルク城の騎士でタンホイザーの親友。
密かにエリーザベトに想いを寄せる。
ビテロルフ(バス)、ヴァルター(テノール):歌合戦で登場
など

第1幕:『タンホイザー』のあらすじ

"快楽を堪能し尽くした"タンホイザーが、人間界へ戻る

ヴェヌスベルクの洞窟

 タンホイザー:ヴァルトブルク城の騎士。"快楽"を得るために、
ヴェヌスベルクの洞窟に籠っている。
ヴェーヌス:ヴェヌスベルクに住む快楽の女神。

タンホイザーとヴェーヌスが寄り添っています。
"快楽を堪能し尽くした"タンホイザーは、人間の世界へ帰りたがっています。
それをヴェーヌスが引き留めます。

タンホイザーはヴェーヌスに頼まれ、彼女を賛美します。(Dir tone Lob!)
しかし地上を懐かしむタンホイザーは、途中から「神ではない人間の私は死ぬ運命にある」
「私を行かせてください!」と訴えます。
ヴェーヌスは「私に飽きたの!?裏切者!」と怒り、地上に帰ることを許しません。

「Dir tone Lob!/ヴェーヌス讃歌」

しかしタンホイザーが"聖母マリア"に祈りをささげると、ヴェーヌスの姿は消え、
ヴェヌスベルクの世界はなくなります。
舞台はヴァルトブルク城近くの谷間に変わります。

 ヴァルトブルク城:ドイツ中部、タンホイザーはこの城の騎士

タンホイザーの近くを「かつての仲間たち」が通りかかる

ヴァルトブルク城近くの谷間

タンホイザーは、美しい谷間にいることに気づきます。
タンホイザーは地上に帰ってこれたことに感謝し、神に祈りを捧げます。

 ヘルマン1世:テューリンゲンの領主。タンホイザーの君主。

そこにヘルマン一行が通りかかります。
皆は"長い間姿を消していた"タンホイザーを見つけて喜び、再び仲間として迎え入れます。
それに対し、"罪の意識が深い"タンホイザーは、「ここから去ってください。」と告げます。

タンホイザーがエリーザベト(恋人)に思いを寄せ、城に戻る

 ヴォルフラム:タンホイザーの親友。密かにエリーザベトに想いを寄せている。
エリーザベト:ヘルマン1世の姪、タンホイザーの恋人

しかし親友のヴォルフラムが「エリーザベトのもとに残れ!」と叫ぶと、
恋人を思い出し心が揺れ、タンホイザーは城に戻ることを決意します。
タンホイザーが「姫のところへ連れてってくれ!」と声を上げ、1幕は終わります。


第2幕:『タンホイザー』のあらすじ

タンホイザーとエリーザベトが再会を喜ぶ

ヴァルトブルク城「歌の広間」

エリーザベトが、「私の胸は高まっています。」「あの人はもうここから離れません!」と、
タンホイザーへの思いを歌い上げています。(Dich, Teure Halle)

「Dich, Teure Halle」

そこにタンホイザーが登場します。
エリーザベトが「今までどこにいたの?」と尋ねますが、タンホイザーは答えをはぐらかします。

その後、二人は再会した喜びを情熱的に歌い上げます。

「歌合戦」が始まる〜テーマは愛〜

騎士や貴族たちがヘルマンを讃え登場します。(Einzug der Gaste)
それに続いてヘルマンが「歌合戦」の開催を宣言し、歌合戦のテーマは「愛」とされます。

「Einzug der Gaste/大行進曲」

まず最初にヴォルフラムが「愛の純粋さ」を歌い上げます。
それに対しタンホイザーは「官能的な愛」を訴え、ヴァルターは「徳」を、
ビテロルフは「名誉」を訴えます。

タンホイザーが「ヴェヌスベルクの洞窟」にいたことが露見し、
巡礼が命じられる

むきになったタンホイザーは「ヴェーヌス讃歌」を歌い上げます。
皆は「タンホイザーがヴェヌスベルクの洞窟にいた」ことを理解し、彼を非難します。

貴婦人たちが嫌悪感をあらわにし逃げていきますが、エリーザベトは残ります。
そして皆が「追放の処分」を願う中、エリーザベトは「タンホイザーの償いの機会」を求めます。

タンホイザーは、後悔の念に駆られます。
ヘルマンはタンホイザーに「ローマに巡礼し、償いをする」ように命じます。

第3幕:『タンホイザー』のあらすじ

巡礼を終えた人々の中に、タンホイザーはいない

ヴァルトブルク城近くの谷間

聖母マリア像の前で、エリーザベトが祈りを捧げています。
エリーザベトを密かに愛するヴォルフラムが、それを見守ります。

そこに巡礼を終えた人々の列が通ります。
しかし、そこにタンホイザーの姿はありません。

エリーザベトが「死」を覚悟して、マリアに祈りを捧げる

エリーザベトは「マリアよ、願いを聞いてください!」
「私は死んでもかまいません!」と再び強く祈りを捧げます。
エリーザベトは近くにいたヴォルフラムに気づきます。

そしてヴォルフラムを制止すると、エリーザベトは高みへと進み、
次第に見えなくなります。

"赦されなかった"タンホイザーが戻ってきて、
絶望の中「ヴェヌスベルク」へ再び行こうとする

ヴォルフラムは天を眺めながら、エリーザベトの無事を祈ります。
(Lied an den Abendstern)

「Lied an den Abendstern/夕星の歌」

そこに"ローマで赦しをもらえなかった"タンホイザーが帰ってきます。
タンホイザーは絶望し、ヴォルフラムに「ヴェヌスベルクへの道」を尋ねます。

ヴォルフラムが止める中、タンホイザーは「私が赦されることはない。」
と自暴自棄になり、ついには「ヴェーヌス」の名を叫びます。

すると辺りが突然明るくなり、ヴェーヌスが現れます。
ヴェーヌスの誘いにのってタンホイザーは旅たとうとしますが、ヴォルフラムは必死にそれを止めます。

我に返ったタンホイザーが留まり、エリーザベトの亡骸の近くで息絶える

ヴォルフラムが「エリーザベトの名」を叫ぶと、タンホイザーは我に返ります。
そしてヴェーヌスの姿も消えてなくなります。

そこへ"タンホイザーのために命を投げうった"エリーザベトの亡骸を運ぶ葬列が近づいてきます。
タンホイザーは、その棺桶に倒れ込み息絶えます。

皆が神を讃える中で、オペラは終わります。


ジュゼッペ・シノーポリ指揮
フィルハーモニア管弦楽団
コヴェントガーデン王立歌劇場合唱団
1988年の録音

タンホイザー:プラシド・ドミンゴ
エリーザベト:シェリル・ステューダー
ヴェーヌス:アグネス・バルツァ
ヴォルフラム:アンドレアス・シュミット
領主ヘルマン:マッティ・サルミネン
牧童:バーバラ・ボニー

この「タンホイザー」は素晴らしいと思いました。
ドミンゴのタンホイザーには賛否があるみたいですが、
元々タンホイザーは異質な人なのでこれはこれで良いかも。
フィルハーモニア管の美しい響きにも魅了されました。
合唱が遠くに聴こえるからでしょうか、全体にこじんまりとした印象で、
少々物足りなさを感じますが、それでもやはり素晴らしいと思います。



ゲオルク・ショルティ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン少年合唱団
1970年の録音

タンホイザー:ルネ・コロ
エリーザベト:ヘルガ・デルネシュ
ヴォルフラム:ヴィクター・ブラウン
ヴェーヌス:クリスタ・ルートヴィヒ
領主ヘルマン:ハンス・ゾーティン

このオペラで最も条件の良さそうなCDです。
歌手は女性陣がよいですね。指揮はワーグナーの主要オペラを録音しているショルティですし、
オーケストラもウィーン・フィルで魅惑のサウンドを聴かせます。
名曲名盤500でも「タンホイザー」はダントツ1位でショルティ盤でした。
ショルティだったらもっとダイナミックで鮮烈な演奏を残せそうな気もするのですが、
それでもやはりいいですねショルティーは。



さまよえるオランダ人です。
ニュルンベルクのマイスタージンガーです。
パルジファルです。


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