2019/11/29
リヒャルト・ワーグナー
タンホイザー
◆タンホイザーのあらすじと解説
項目 | データ |
---|---|
初演 | 1845年 ドレスデン宮廷歌劇場 |
台本 | リヒャルト・ワーグナー |
演奏時間 | 3時間10分 |
ワーグナーの『タンホイザー(Tannhauser)』は、
彼の作品の中でも最も人気のある作品の一つです。
正確なタイトルは『タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦
(Tannhauser und der Sangerkrieg auf Wartburg)』といいます。
台本はワーグナー自身によるもので、物語は二つの題材を組みわせて書かれています。
【二つの題材】:『タンホイザー』と『ヴァルトブルクの歌合戦』
ここでは、そんなワーグナー『タンホイザー』のあらすじを紹介したいと思います。
タンホイザー(テノール):ヴァルトブルク城の騎士
ヴェーヌス(メゾソプラノ):ヴェヌスベルクに住む快楽の女神
ヘルマン1世(バス):テューリンゲンの領主
エリーザベト(ソプラノ):ヘルマン1世の姪、タンホイザーの恋人
ヴォルフラム(バリトン):ヴァルトブルク城の騎士でタンホイザーの親友。
密かにエリーザベトに想いを寄せる。
ビテロルフ(バス)、ヴァルター(テノール):歌合戦で登場
など
ヴェヌスベルクの洞窟
タンホイザーとヴェーヌスが寄り添っています。
"快楽を堪能し尽くした"タンホイザーは、人間の世界へ帰りたがっています。
それをヴェーヌスが引き留めます。
タンホイザーはヴェーヌスに頼まれ、彼女を賛美します。(Dir tone Lob!)
しかし地上を懐かしむタンホイザーは、途中から「神ではない人間の私は死ぬ運命にある」
「私を行かせてください!」と訴えます。
ヴェーヌスは「私に飽きたの!?裏切者!」と怒り、地上に帰ることを許しません。
「Dir tone Lob!/ヴェーヌス讃歌」
しかしタンホイザーが"聖母マリア"に祈りをささげると、ヴェーヌスの姿は消え、
ヴェヌスベルクの世界はなくなります。
舞台はヴァルトブルク城近くの谷間に変わります。
ヴァルトブルク城近くの谷間
タンホイザーは、美しい谷間にいることに気づきます。
タンホイザーは地上に帰ってこれたことに感謝し、神に祈りを捧げます。
そこにヘルマン一行が通りかかります。
皆は"長い間姿を消していた"タンホイザーを見つけて喜び、再び仲間として迎え入れます。
それに対し、"罪の意識が深い"タンホイザーは、「ここから去ってください。」と告げます。
しかし親友のヴォルフラムが「エリーザベトのもとに残れ!」と叫ぶと、
恋人を思い出し心が揺れ、タンホイザーは城に戻ることを決意します。
タンホイザーが「姫のところへ連れてってくれ!」と声を上げ、1幕は終わります。
第2幕:『タンホイザー』のあらすじ
ヴァルトブルク城「歌の広間」
エリーザベトが、「私の胸は高まっています。」「あの人はもうここから離れません!」と、
タンホイザーへの思いを歌い上げています。(Dich, Teure Halle)
「Dich, Teure Halle」
そこにタンホイザーが登場します。
エリーザベトが「今までどこにいたの?」と尋ねますが、タンホイザーは答えをはぐらかします。
その後、二人は再会した喜びを情熱的に歌い上げます。
騎士や貴族たちがヘルマンを讃え登場します。(Einzug der Gaste)
それに続いてヘルマンが「歌合戦」の開催を宣言し、歌合戦のテーマは「愛」とされます。
「Einzug der Gaste/大行進曲」
まず最初にヴォルフラムが「愛の純粋さ」を歌い上げます。
それに対しタンホイザーは「官能的な愛」を訴え、ヴァルターは「徳」を、
ビテロルフは「名誉」を訴えます。
むきになったタンホイザーは「ヴェーヌス讃歌」を歌い上げます。
皆は「タンホイザーがヴェヌスベルクの洞窟にいた」ことを理解し、彼を非難します。
貴婦人たちが嫌悪感をあらわにし逃げていきますが、エリーザベトは残ります。
そして皆が「追放の処分」を願う中、エリーザベトは「タンホイザーの償いの機会」を求めます。
タンホイザーは、後悔の念に駆られます。
ヘルマンはタンホイザーに「ローマに巡礼し、償いをする」ように命じます。
ヴァルトブルク城近くの谷間
聖母マリア像の前で、エリーザベトが祈りを捧げています。
エリーザベトを密かに愛するヴォルフラムが、それを見守ります。
そこに巡礼を終えた人々の列が通ります。
しかし、そこにタンホイザーの姿はありません。
エリーザベトは「マリアよ、願いを聞いてください!」
「私は死んでもかまいません!」と再び強く祈りを捧げます。
エリーザベトは近くにいたヴォルフラムに気づきます。
そしてヴォルフラムを制止すると、エリーザベトは高みへと進み、
次第に見えなくなります。
ヴォルフラムは天を眺めながら、エリーザベトの無事を祈ります。
(Lied an den Abendstern)
「Lied an den Abendstern/夕星の歌」
そこに"ローマで赦しをもらえなかった"タンホイザーが帰ってきます。
タンホイザーは絶望し、ヴォルフラムに「ヴェヌスベルクへの道」を尋ねます。
ヴォルフラムが止める中、タンホイザーは「私が赦されることはない。」
と自暴自棄になり、ついには「ヴェーヌス」の名を叫びます。
すると辺りが突然明るくなり、ヴェーヌスが現れます。
ヴェーヌスの誘いにのってタンホイザーは旅たとうとしますが、ヴォルフラムは必死にそれを止めます。
ヴォルフラムが「エリーザベトの名」を叫ぶと、タンホイザーは我に返ります。
そしてヴェーヌスの姿も消えてなくなります。
そこへ"タンホイザーのために命を投げうった"エリーザベトの亡骸を運ぶ葬列が近づいてきます。
タンホイザーは、その棺桶に倒れ込み息絶えます。
皆が神を讃える中で、オペラは終わります。