優良インストラクターを守ろう!
優良ショップを応援しよう!


 私達がダイビングの講習を受けるとき、またガイドを受けるときに直接接するのはインストラクター及びガイドと呼ばれているダイバーです。そして彼らの資質(人格)こそが私達の安全に直接関係してきます。
 PADIジャパンのあるスタッフの方に恵比寿の本部で以前話を聞いたときに先方のスタッフの方はこのように言っていました。
「PADIはその技術に対して資格の認定はするが、人格に対してしているわけではないのです」と。またこのようにも言っていました。「国が医師の資格を認定するのに人格まで検査していない」と。確かに彼の言うとおりです。しかしインストラクターやガイドには世間の厳しい目はないと言っても大きく外れてはいないでしょう。自然相手の事ゆえ、偶然の事故は避け得ません。こんなときに役に立たない"プロ"に当たったら命はいくつあっても足りないでしょう。だからこそ私達には優良な"プロのインストラクター・ガイド"が必要なのです。
 インストラクターには優秀な人たちがいます。すばらしいレジャースクーバダイビングの世界への素晴らしい案内人たる彼らは、しかし人格的にも素晴らしいため、かえってレジャーダイビングの世界で働いていくうちに見えてくる業界の実態に落胆して止めていく人も少なくありません。なぜこんなことが起きるのでしょうか?


インストラクターが抱えるリスク
 インストラクターという職業は一見楽しそうに見えますが、彼らも大きなリスクを抱えています。それはこのホームページで語っているような自然の事故、および潜水器材の事故などがあります。これは保険の項にあるように雇用者がしっかりしていればある程度の保証はされます。しかしこれ以外にも以下のようなリスクがあります。

「臨床スポーツ医学 1994.9」(株)文光堂 で川嶌眞人氏と野呂純敬氏はこのように紹介しています。

   「減圧性骨壊死」 

    潜水深度との関係

    …深度が増すほど骨病変発生頻度は増加する傾向にある
    …いったん発症した骨壊死、潜水を中止しても骨病変進展の可能性がある

これはシーズンになると毎日のように講習生に講習したり、あるいはガイドとして潜水しているインストラクターにとって大きな問題です。ではこれを予防するのにはどうしたらよいのか、同じ記事にこのようにあります。

    予防

    …骨壊死の発生はベンズと関係が深いことから、ベンズにかからないようにすべきである。
    …長時間潜水時間や繰り返し潜水を避け、あまり深く潜水しないこと

つまり、雇用者が過度な回数の講習や30mを超えるような潜水をインストラクターに要求しないことが、引退した後のインストラクターの肉体と生活を守ることになるのです。
雇用者にとっては、「では回数をこなしたり、深度の深いところでのダイビングを目玉に客を呼べなかったらどうするんだ」と言われそうですが、経営力があって魅力があるオーナーであれば、ダイバーの口コミなどによって人は集まるのではないでしょうか?
もし、大きく金儲けをしたいというなら、レジャーダイビングという、決して人命にかかわるリスクを避けられない事業は止めたほうがいいでしょう。別の事業に転換してダイビングは自分が趣味として楽しんでください。


次に、インストラクターが業務をする上での問題について見てみます。

 インストラクターが「業務として」ダイビングの指導やガイドを行なう場合、守らなくてはならない法律があります。それは、労働基準局が認定する潜水士免許に添うものです。これを守って、初めてその人は「業務として」ダイビングを行なうことが公的に認められるのです。だからこそインストラクター自身が事故に遭った場合、法律によって労災事故と認められ、国家より労災保険が適用されるのです。これはフリーのインストラクターに関しても、タレントがレポーターとして潜るときも同じです。

 つまり、Cカード発行会社などのインストラクターの資格を持っていても、潜水士免許を持っていなかった場合には、そのインストラクターは、法律的には「モグリのインストラクター」ということになります。

 たとえばテレビ番組で、そのテレビ局のアナウンサー(社員)が水中レポートをする場合は、本来はテレビ局はそのアナウンサーに、事前に潜水士免許を取得させています。これをしておかないと、「業務でダイビングをする」ことが法的に認められた状況下ではないということになると考えられます。

 またこの潜水士免許を持っているだけでは本来の意味での“業務とは認められません。労働安全衛生法により、潜水士として業務につく場合には、その法律に基づいた高気圧作業安全衛生規格により、業務につく6ヵ月以内に健康診断を受け、その結果を高気圧業務健康診断個人票(5年間保存)に続けて記録していかねばなりません。これをやっていないと、公的に潜水士として業務についていることになりません。しかし実際に雇用者がその手続きを取っている例は、ダイブショップの場合、多くはないそうです。

 最近はダイビングショップでも雇用者が雇い入れるインストラクターに潜水士免許の取得を求めているところが多いですが、高気圧作業安全衛生規格による、1年以内ごとの健康診断をの結果を高気圧業務健康診断個人票(5年間保存)に続けて記録させているところはそんなに多くはないようです。

 さらに、ダイブショップで働いているインストラクターは、たとえそれが正社員という立場でなく、臨時雇い、契約社員であっても、雇用者の法律上の義務によって労災保険に入っていなければなりませんが、それをしていないショップも数多くあるようなのです。

 これでは、遊びの延長としてインストラクターをやっている人は別にして、"プロ"として生活の基盤にしている人たちは不安でなりません。特に家族を持った場合にはなおさらです。

 なぜこんなことが起きるのでしょうか?

 それは、労災保険に入った場合、そのルールに則った労務管理をしなくてはならなくなるから、という理由と、もうひとつ、保険料を支払う義務があるのが、その人を雇った経営者の側にあるからだと思われます。潜水士の保険料金は、その危険性から、保険料金のなかでいちばん高いからです。これは雇用者が、被雇用者に対して、経営者が当然しなくてはならない身分保障のひとつであり、また被雇用者にとっては働く労働者の権利でもあります。


「平成9年度 レジャーダイビングの安全対策に関する調査研究 報告書(平成10年3月)」(社)日本機械工業連合会、(社)レジャー・スポーツダイビング産業協会(旧称:海中開発協会)ではこの潜水士資格について以下のように紹介しています。

労働省が所管している法律に、労働者の安全と健康被保ならびに労働災害の防止を目的とした『労働安全衛生法」という法律がある。「労働安全衛生法」の第61条にr業務内容による就業制限」があり、関連する法令のr労働安全衛生法施行令」第20条によって「潜水器を用い、かつ、空気圧縮機若しくは手押しポンプによる送気又はボンベからの給気を受けて、水中において行う業務」については前述の法第61条で『当該業務にかかる免許を受けた者てなければ業務につかせてはならない。」と規定されている。この規定に基づいて「労働安全衛生規則」第41条で「潜水士免許」が規定されている。簡単な言い方をすれば、業務としてダイビングを行うものは「溶水土免許」が必要という事である。法律の趣旨からいえば「労働者の保護」を目的としたものであるため、独立事業主には当てはまらないので、独立してインストラクションやガイドを行う者は、潜水士免許を必要としないのではないかという意見もあった。そのため以前は業務としてダイビングを行う者であっても「オーナー」と「独立インストラクター」は潜水士資格を取る必要が無いとも考えられていた。しかしその後、労働省からの通達で「一人親方(独立インストラクター)」も潜水士資格が必要との指導があり、現在は業務としてダイビングを行う者はすべて「潜水士資格」が必要となっている。
潜水士資格を取得するためには、国家試験に合格することが必要だがこのための準備講習会が各地で様々な組織によって行われており、当協会[(杜)海中開発技術協会→平成10年4月より(杜)レジャー・スポーツダイビング産業協会と改称コと(財)安全衛生普及センターが共催で開催している準備講習会が広く知られている。また、地域的な理由で準備講習会が受講できない方のための「通信教育講座」も開催されている。
潜水土国家試験の試験科目に「実技試験がない」という点に不思議がられる方もおられるが、前にも述べたように潜水士資格制度の趣旨は、潜水労働者を保護する目的であるため、その法令類の多くは安全面から雇用主を規制する内容となっている。潜水士国家試験科目が、筆記試験のみであって実技試験がないという理由もこうした背景からである。

私達はダイビング業界の宝である優秀なインストラクターが"生活"をしていける労働環境をショップのオーナーに求めていくべきです。

  • ショップはインストラクターに潜水士免許を取得させているか?
  • その潜水士免許の有効性を保つために高気圧作業安全衛生規格による、6ヵ月以内ごとの健康診断をの結果を高気圧業務健康診断個人票(5年間保存)に続けて記録させているか?
  • ショップではインストラクターに対して労災保険に入っているか?
  • ショップではショップ・インストラクター向けの保険のようなものに入っているか?
  • ショップでは、インストラクターに過度の潜水を強いていないか

また、このように優秀なインストラクターの労働環境を整えて、身分保証をしっかりとしているオーナーのダイビングショップは信頼できるものと思います。
ダイビングが好きだから、ということを出発点として"事業"としてレジャーダイビングを経営していく人にとって、事業者としてやらねばならないこまごまとしたことは必ずしも好きなことではないでしょう。しかし、この面倒で、やりたくないような事をしっかりと勉強して"事業"を行っている人こそ、私達の安全にも、また万が一の賠償責任にも対処できる体制をとっている可能性が高いと推定できます。

私達は優秀なインストラクターにきちんとした身分保証をしているショップを応援し、そのようなショップこそを利用し、発展を促していきましょう!

優秀なインストラクターの被雇用者(労働者)としての社会的な地位の保証が、「指導団体(民間の営利業者)」に頼らないダイビング業界の変革と発展を促すものと考えます。


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