ダイビングマスコミと旅行代理店の現状
(平成10年夏版)



この両者は、基本的に、その比重がダイバーの安全確保のための"事実としての正確な情報" よりも、イメージとして、安易なもの、ダイビングは危険性などまるでない、楽しいことだらけのスポーツ(的) な遊びと印象づけられるようにしていると感じられます。そして、いまだに多くの企業が、"ライセンス取得"と称しての認定証(実際は基本的に私企業の講習終了認定証にすぎない)商法や、それにまぎらわしい商法によって集客に努めています。(最近は"ライセンス"という表現が法的に問題があることがわかってきて、確かに少なくなってきています)この彼らの基本的な体質が、"高率な死亡率を生み出すのレジャー産業"の重要な要素だと思います。

ダイビングマスコミ
雑誌・書籍など:私がダイビング業界の問題点をレポートした本を出版した時、このダイビングマスコミ=雑誌の中の広告の量と質と、広告内容の掲示責任について、それらの問題点を分析・指摘した章を書きました。この時、ある雑誌社の編集部に電話してこの内容について確認などをした時に、「なんでウチの名前(分析した雑誌名)を出すんですか」と言ってきました。つまり、指摘された事はしょうがないが、他のライバル誌も同じなのに、モデルケースとしても自分のところだけ雑誌名を出すのは止めて欲しい、との話でした。確かに気持ちはよく分かりますが、指摘された問題点を改善しようという意志はまるっきりありませんでした。私も話をしていて哀しくなってきたので、本の中でもこれらの雑誌名については、いい事を紹介する部分を除いて仮名にしました。
さて、広告の問題として、雑誌の中には、例えそれがとある有名な某公社発行の本であっても、かなり悪質な業者の広告が掲載されていたり、また安全性について過剰広告と思われたりした事について聞いたところ、ほぼ共通して以下のような返事がきました。
◎(広告主について、また、その内容について)基本的に審査はしていない。
◎(広告の扱いについては)下請けに任せている。
◎掲載内容について責任は取らない。

最近、私が以前問題としていた無秩序な広告の氾濫について落ち着く傾向にあります。この理由として、不景気により、出稿そのものが減ってきた、というのがあります。また、私の知人であるダイブショップの経営者によると、口コミでしっかりした客が来るショップでは、やってきた客に良質で誠実なサービスを提供することによって広告に替えているとの事でした。また、全てではないと思いますが、彼はこんなことも言っていました。「口コミ客(リピーターも)が来ないところほど広告に頼っている」


旅行業界のダイビングに対する意識の実態

旅行代理店が、パックツアーなどのオプションで紹介しているダイブショップに、地元の業者で悪評の高い、ただし"営業活動のうまい"ショップがありました。この場合、何故、このように、人命にかかわる遊びで、評判の悪い業者を敢えて紹介しているか、と調べたところ以下のような問題点が表面化しました。

◎ダイビングショップの事業の評判は一切地元で調査していない。PADIの5スターとあったので紹介している。
◎紹介した時のバックマージンが良い。
◎広告の作成に関しては下請け業者に委託している。

などです。
基本的に、大手旅行社であっても、大手出版社の記者であっても、ダイビングビジネスについて良く知っている人がショップの紹介や提携契約を結んでいるわけではありません。これは海外でも同じです。特に私が知っている限りでは、ハワイでも一部の良心的なショップを除いて同じ傾向が見られます。

平成10年(1998年)の夏も、旅行業界の中でオプションツアーとしてスクーバダイビングが目玉となっているものが多く見られました。そこで私は、新宿駅の地下街を中心として、そこでダイビングを目玉にしている旅行パンフレットを収集し、ダイビングについて正当な説明がされているかについて調べてみました。ここではその結果について報告します。

なお、このカタログ(旅行パンフレット)のダイビング関連の記述において問題がないと思われるのはだだ一つであった。その確率が5分の1というのはゆゆしき問題である。
この種の問題については、経済企画庁の国民生活審議会でも問題になっており、またスクーバダイビング事業協同組合でも、このような誇大広告(的)な記述について注意を促している。しかしながら、特にスクーバダイビング事業協同組合でも圧倒的な影響力を持ち、業界最大の会社でもあるPADIを専門に扱っている(商標までデカデカと載せている)カタログが一番ひどかった事実にはあきれてしまった。

カタログ

問題となる部分の抜粋
(文字の強調は作者)

コメント

主催:JTSジャパンツアー株式会社 備考:後援が日本航空と記載 取得Cカードブランド:
PADI,CMAS,

JTS.jpg (15003 バイト)

C-力ードライセンス取得のための、コース。ダイビングが初めての方のためのCカード取得コ一スです。

スクールコースはペースの遅い人に合わせ、マスターできるまで教えますので心配はいりません。
  1. C-力ードライセンス取得→公的資格のような印象を与えている。
  2. マスターできるまで→体力的・技術的にできない可能性について言及がない。

参考資料1←クリックして下さい(重要)

主催:JTBサン&サン 備考: 取得Cカードブランド:
PADI,CMAS

SUN&SUN.jpg (15520 バイト)

ライセンス取得コースの充実

特典についての説明で、
*特典提供のため、ダイビングライセンスカードの提示が必要となりますので、・・・
  1. 力ードライセンス取得コース→公的資格のような印象を与えている。
  2. ダイビングライセンスカード→公的資格のような印象を与えている。

参考資料1←クリックして下さい(重要)

主催:株式会社豊和トラベルサービス 備考:オリオンツアー 取得Cカードブランド:
PADI,BSAC,JP,NAUI,S.E.A

オリアンツアー.jpg (16708 バイト)

COLLEGE Cカード取得コース
ダイビングカレッジ那覇5DAY'S
ダイビングカレッジ本部5DAY'S
・・・

ダイビングQ&A
Q:私は泳げないけれどCカードは取得可能ですか
A:(前略)カナヅチの方でもウェットスーツ(浮力確保)を着ますので安心です。(後略)

  1. COLLEGE Cカード取得コース→公的資格のような印象を与えている。単なる商品名だという記述がない。
  2. カナヅチの方でもウェットスーツ(浮力確保)を着ますので安心→泳げない人の危険が、泳げる人と変わらないような印象を与えている。

参考資料1←クリックして下さい(重要)

主催:株式会社ジョイ 備考:近畿日本ツーリストグループと記載 取得Cカードブランド:
PADI,BSAC,JP,NAUI,S.E.A

ジョイ.jpg (16802 バイト)

特になし ●説明について、唯一問題が見当たらない。
主催:JAM株式会社ジャパンアメニティトラベル 備考:レジャーツアー 取得Cカードブランド:
PADI,

レジャーツアー.jpg (13427 バイト)

世界のダイバーの70%はPADI(パデイ)ダイバー
世界共通のハイクオリティな講習と高い安全性に裏付けされたプログラムにより、コース修了時に取得できるCカード(認定証)は、世界各地でダイビングを満喫するために欠かせないカードです。

憧れのPADIゴールドカードが取得できます
ダイビングを楽しむのに、なくてはならないC力一ド。
世界中のダイバーの70%以上はPADIの発行するCカードを取得しています。
この、世界で最も信頼のあるPADIのダイビングプログラムを受講することによって、(中略)あなたのダイビングスクールを担当するのは、数あるショップのなかでも、優秀な技術と設傭が認められているPADlファイブスターダイプセンターのブロダイブだから、

目本語で1:6
一般的なダイビングスクール(PADI1の基準)では、8人のお客様にインストラクターが1人で講習を行いますが、レジャーツアーダイビングスクールはインストラクター1人にお客様を6人までとしています。

  1. 世界のダイバーの70%はPADI(パデイ)ダイバー→数字に根拠はない。PADI自身、別の本では60%と言っているが、これは推定と断っている。
  2. 世界共通のハイクオリティ→これはPADIという会社についてのみであって、世界中にはいろいろな講習の基準がある。これも誇大な表現と言える。
  3. PADIゴールドカード→カードが金色であってもそうでなくてもカードの効力には一切差はない。
  4. 世界中のダイバーの70%以上はPADIの発行するCカードを取得しています。→数字に根拠がない上、同じパンフレット上で、さらに数字がオーバーになってきている。
  5. 優秀な技術と設傭が認められているPADlファイブスターダイプセンター→「優秀な技術と設備」(主観的なものではあるが)と実績があっても、あえてお金を払ってまでPADIにファイブスターの申請をしないショップもある。
  6. 一般的なダイビングスクール(PADIの基準)では、8人のお客様にインストラクターが1人で講習→これはPADIのローカルルールであって、「一般的」ではない。
  7. 1人にお客様を6人まで→私が聞いたプロダイバー達は、せいぜい一人で3〜4人までと言っている。(社)海洋開発協会のアンケート調査でも安全性を確保できる人数に6人という数字は極めて少なかった。個人的には6人という数字は危険であると思える。

参考資料1←クリックして下さい(重要)
参考資料2

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