大手CカードブランドNAUIにおけるPL法


株式会社ナウイエンタープライズは、NAUI(ナウイ)というブランドの潜水講習のノウハウと教材などの販売、および講習修了者へのCカードの販売(申請料という名目で)を事業の柱として日本有数の業界大手の会社です。事業の内容と収益の柱は基本的にPADIというブランドの株式会社パディジャパンも同じです。

そのNAUIが、PL法に関して、どのような考えを持って対策を考えているかを見てみましょう。

NAUIの「97年度NAUI総合補償プランのご案内」の中ではこのように考えています。

  1. 各ダイビングショップ・サービスにおいて、ショップ名を入れたオリジナルのダイビングスーツや、輸入した器材、及びダイビングの現場で行うエアタンクでの圧搾空気の注入(エアチャージ…空気の製造・販売)がPL法の対象となる。

    (例1)オリジナルのウェットスーツを着用しての皮膚のかぶれの発生があった場合には責任が発生。
    (例2)ショップが直接輸入した器材についても例1と同様。
    (例3)メーカーから仕入れた器材をそのまま販売する場合にはPL法の対象外。しかし、この場合、明らかに欠陥を知っていて販売したり、販売時の説明が不十分であった場合等には民法上の責任が問われる場合がある。
    (例4)レンタルしたタンクの中の空気が原因で事故が発生した場合には、空気を製造した業者に賠償責任がある。
  2. PL法では、レギュレーター等、器材のオーバーホールや修理については「製造」にあたらないが、それが原因で事故が遭ったときには民法上の賠償責任を問われる可能性はある。

 

NAUIでは、このような問題への対処としてPL保険というものを用意して、NAUIブランドを扱う(NAUIが扱いを認めている)業者への加入を勧めています。この内容は、保険のシロートである私から見ても、悪くない内容だと評価できます。この保険の詳しい内容については、自己防衛の為の保険の知識を見てください。

ただし問題もあります。つまりこの保険への加入がNAUIブランドを扱うための義務とはなっていないことです。つまり保険に加入するかどうかはショップ側の判断に任されており、これは、NAUIブランドという業界で有名なブランドであったとしても、それを扱う各ショップにでのNAUIブランドという商品の品質(事故時の賠償能力)に大きなばらつきがあるということです。

一般的に、初めてショップを訪れて講習について聞く時やファンダイビングを申し込む時に、ショップ側では、「あなたが事故に遭った時、自分たちにはどれくらいまで賠償能力があります」という説明はされてませんので、講習を申し込む人が、危機管理能力(意思)のないショップだった場合、そのリスクを自らの命のリスクとして背負わなければならない状態にあるというのがダイビング業界の現状です。

NAUIが、PL保険(その他の賠償責任保険)へ加入しないショップに対しては、NAUIブランドの扱いを一切拒否する、という姿勢を厳密に、直ちに実施した場合、日本のダイビング業界は成熟への第一歩を踏み出すことになるものと思います。ショップ側においては、人命に関するサービス業を扱う以上、事業上必要なこの保険について、ショップを利用する講習生やダイバーに保険の内容について十分に説明できるかどうかがショップそのものの品質の指標の一つだと認識できるようになって欲しいものです。

また、NAUIには、法的な位置付けは別として、株式会社ナウイエンタープライズが“製造”している“NAUI”というブランド商品の“製造責任”に関わる賠償責任保険加入の義務化について深く認識していただきたいと願います。


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