第3章 理想的な講習

著者 中田 誠
編集 村上 清
発行人 落合美紗
発行所 株式会社太田出版
代表 Tel.03-3359-6262 
http://www.ohtabooks.com/

ISBN978-4-7783-1115-5
(c)Nakada Makoto,2008
本書の無断転載・複製を禁じます。

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※本章は多数の写真がありますが、権利上の配慮から掲載を省略しております。

 ここでは、ダイビング未経験の1人の女性が、きちんとした講習を受けてダイバーとなるまでの様子を紹介します。これをレポートさせてくれたのは、女優の沢井美優さんです。
 このような講習スタイルが一般的なのものとして普及すると、今後、良いダイバーがたくさん養成されていくことになり、それはやがてプロを含めたダイバi全体の質を上げることにつながっていき、欠陥を持った未熟なインストラクターによる手抜き講習から来る技量不足を原因とした事故の抑止につながっていくことになるでしょう。
 多くの方が毎日の生活に多忙を極めていると思いますが、そういった方でも、講習を行う側と受ける側がしっかりとした意識を持って取り組むことで充実した講習となります。今回の事例を見て、良質な講習とはどのようなものなのかを知ってください。そしてもし皆さんが受けた講習がきちんとしたものでなかったと気づくことがあったら、自分に不足しているところを自力で勉強して補ったり、また別のきちんとしたダイビングショップに行って、必要な費用を負担したうえで、不足分の講習を追加で受けるようにしてください。強くお勧めします。
 すでに活動的なダイバーとなっている方々は、このレポートを見て自らを振り返ってみてください。そしてここで紹介したのと同じレベル、あるいはこれ以上の内容で講習を受けた方は、それは大変な幸運の持ち主ですので、そのような良質な講習を行う業者を応援して盛り上げてください。彼らは社会の宝です。
 なお沢井さんが講習を受講したショップは、本書でもレベル2宣言をしている東京ア
クアラングサービスです。担当したのは、チーフインストラクターの島田誠一さんです。
泳力チェック
 沢井さんは水泳が少し苦手ということでしたので、最初にプールで泳力のチェックをすることになりました。
しかし実際に泳いでもらうと、彼女はスイスイと泳いでしまいました。泳力チェックの後、彼女は、「今まで学校のプールで泳いだ時には水が冷たかったからうまく泳げなくて、それで苦手だと思っていました」と言っていました。
 ダイビング中に泳げない方がトラブルに見舞われると、瞬間的に水への恐怖が甦ってくることがあり、それによってパニックになり易く、それが事故につながっていきます。よく見る宣伝文句には「泳げなくてもできる」とありますが、確かにできても、ダイビングにとって不可欠な安全率は低いままです。ダイビングをしたい方は、宣伝に左右されずにまずは泳ぐことから始めましょう。

自宅で挙科の予習
 無事、泳力チェックに合格した沢井さんは正式に講習の申し込みをして教材を受け取りました。そして対面式の学科講習の前に自宅で予習を開始しました。

学科講習1日目
 学科講習は6時間の対面式です。水域での実習はマンツーマンで行うことが本来の標準形ですが、学科の場合は少人数でなら複数で行うことも可能です。ただこれもマンツーマ
ン式の方がお互いに遠慮なく質問などができるため、より望ましいものと言えます。
学科講習は3時間の2日間コースと、2時間の3回コースがありますが、彼女は集中的に受講するために3時間の2日間コースを選びました。
 また彼女はこの講習の最初の段階でリスクに関する指導をきちんと受けました。このようなリスクに関する大切な情報が最初の段階から十分に正しく教えられず、「リスクは大したことはない」という意識や、事故者の苦しみを軽視する態度や情報だけに接することになると、講習が終わってからもリスクを無意識に軽視するようになってしまう恐れが生じます。これは避けなければなりません。
 この日の学科講習のメニューは次のようなものでした。
テキストの第−章、ダイビングのトータルなシステムについて。
同2章、ダイビング器材の使い方について。
同3章、体の機能と水中環境について。

器材選び
 器材のうち、いわゆる3点セット(マスク・フィン・スノーケル)は、自分のものを持つことは最善かつ不可欠です。それ以外は当面レンタルでも可能ですが、沢井さんは器材を最初に一式揃えることになりました。講習時から自分の器材を使うことは、それらの器材に慣れることになり、それだけその後のストレスやリスクを減らすことにも通じます。ただダイビング用の器材はダイバーの命を預ける重要なものであるため高価なものが多く、どれを選ぶかには慎重な検討が必要です。最初から一度に全部揃える必要は必ずしもありません。予算の都合のつく範囲で、より必要なものから揃えていくようにするのがいいでしょう。ただ長くダイビング楽しむなら、できるだけ自分の器材を揃えることが望ましいと言えます。しかしダイビングの器材販売に絡んでは、詐欺まがいのような商売をする悪質な業者や、業者を装った暴力団などすらいます。そういった場合、器材などの総額で数百万円が請求されることも珍しくありません。もしこのような価格の提示を受けたら、決してそれを受けずに別の専門家に相談し直しましょう。
 さて、器材を選ぶ時にはファッション性を最優先として選ぷより、最初は信用できる専門家や、それに匹敵する、器材に詳しいプロからのアドバイスをもらって決めることをお勧めします。ダイビングの器材はそれぞれの方の体格や体力、適性やダイビング環境に合わせたものが必要なので、専門知識がないままに選ぶことは避けたほうが得策です。またこのようなアドバイスは安全ためのノウハウとなりますので、タダで手に入れようと考えないようにしてください。プロから器材の説明を聞いて適切なアドバイスを受けることは一種の講習やコンサルティングです。そのため上質な情報(アドバイス)を得るためには、適切な講習費やコンサルティング料を支払う意識が必要です。そうしないと、後になって、タダより高いものはないということになりかねません。
 この日の学科講習終了後、沢井さんはウェットスーツとドライスーツをオーダーするための採寸を行いました。スーツは自分でその配色などが決められるため、彼女にとって楽しいひとときだったようです。他の多くの方々にとってもワクワクする瞬間ではないでしょうか。この部分は大いに楽しんでください。

学科講習2日目
 この日はテキストの、
第4章、ダイビングの計画と実施について。
第5章、水中の世界について。
第6章、ダイビング経験と継続教育について。
以上を学びました。

 この日の彼女は、自宅でしっかりと事前の学習をしてきたからか、受講時に少し余裕さえ感じられました。なお本来は学科講習終了後に学科の本テストとなるのですが、翌日の仕事の都合上、相談のうえ、それは泊りがけの海洋実習の1日目が終わった後に行うことになりました。
 このようなスケジュールは確かに変則的です。集団で受講し、学科からプール講習、そして海洋実習という一連の流れで行われる講習形式の場合には、この変則的方法は、場合によっては手抜きを生む可能性があります。しかし今回のようにマンツーマン方式で、一貫して同じインストラクターが担当する講習では、インストラクターが講習生(受講生)の理解度をすべて把握でき、かつマンツーマンであることから講習生のリスクカバーがきちんとできるという裏づけが確保できていたのでこのようなスケジュールが組めました。
実習が1人対複数人で行われる場合でこのような状況になった場合は、その講習品質の維持は相当に困難でしょう。
 皆さんは、これは単なる「団体の基準で大丈夫だから」というレベルの話ではないことをよく理解してください。マンツーマン講習という品質重視の前提と、講習生本人の努力、そして受講した学科講習の質の裏づけが欠かせない条件であることを忘れないでください。

プール講習
 学科講習が終わった7日後にプール講習が行われました。これもマンッーマンです。いくつかの種類のダイビングテキストなどには1人のインストラクターが複数の講習生に対して指導している写真が掲載されていることもありますが、安全を優先するのであれば、これらの写真が示している状況は不適切です。事故がなかったらいいじゃないかなどという問題以前に、講習の品質(講習生に対し、潜水技術を確実に習得させること)の低下をもたらす原因となります。
 講習当日の朝、彼女は自分の器材と初めての体面を行いました。出来上がったウェットスーツはとても素敵で、呈つけれど下品ではないという最高のものに仕上がっていました。

プール講習(実習)のスケジュール
13時〜  ストレッチ&基礎器材の使い方を含むスノーケリング講習
14時半〜 スクーバ器材の組み立て、浅い水深で基礎スキルの練習
15時半〜 5mの水深でスキル練習
16時半〜 5mの水深で緊急対処スキルの練習
18時終了(休憩は1時間半に1回、または適時に5〜10分取る)
 このように、プール講習を正しく実施するには、1人あたり最低5時間程度はかかります。同じ内容で2人に対してなら10時間程度※、3人なら15時間程度かかる計算です。これを見ても、1日で複数人に対して講習を行うとしたら、インストラクター1人で2人までが限度ですね。皆さんの講習時には、自分のために何時間の講習が行われましたか?
  ※この表現は、私は比ゆ的に書いたのですが、説明が足りなかったことで誤解を生む可能性が高いと思います。ここに深くお詫びを申し上げ、追加の説明をさせていただきます。島田氏がプール講習をマンツーマンで実施する所要時間は5時間ほどですが、生徒が2名になることで倍の10時間になることは現実的に無いと考えて下さい。島田さんによると、事前説明とスキル実施説明は生徒さんが複数でも基本的に所要時間は生徒1名の時の1.3倍程度ということです。

 沢井さんはまずウェットスーツを着て水に慣れる練習をし、次に水面でスノーケリングの練習を行いました。そしてスクーバ器材を装着して水深1m程度のところでインストラクターについて水中を泳ぐことから始め、その後、基礎的なスキルの指導を受けました。
 さらにプールの水深5mの部分に移動し、丁寧かつ確実な講習が行われました。
 インストラクターの島田さんは、「沢井さんは今まで自分が教えた百人のうち2番目に良かった」と彼女を高く評価していました。このことは一方で、普通のレベルの複数人に対して同時に講習を行う場合の質の低下の問題がより大きくなる可能性を示してもいます。

海洋実習1日目
 朝早くショップに集合し、前日に届いたドライスーツ(ワールドダイブTLD2007 2007 LIMITED EDITION DRY SUITS)を持って静岡県沼津市の大瀬崎に向けて出発しました。
 大瀬崎で海洋実習を行うということには、過去の事故者の方々が残してくれた教訓を、より真摯に受け止めた講習を行うという大切な意味も込められていました。
 現地はこの日、あいにくの雨でしたが、海の中は透明度もよく、波もベタなぎでした。
講習メニュー(海洋実習1日目)
1ダイブ目
潜降方法、レギュレータクリアー、パージポタン使用とパージなし。
レギユレーターリカバリー2種、
中性浮力、ドライスーツの使用法。
2ダイブ目
潜降方法、ウェイトベルトの脱着、中性浮力、浮力調整の浮上。

学科テスト
 現地での宿泊はサンライズあねっくすという清潔できれいなホテルでした。
 沢井さんは、一緒に泊まった人たちが大浴場でくつろいでいるときにも、夕食前に行われる学科テストのために、1人、自室で勉強に励んでいました。そしてテストは午後6時半頃から7時半にかけて行われ、彼女は優秀な成績で、1回で合格となりました。
 あれだけ忙しく、疲れてもいただろう中での、彼女の偽りのない努力が実を結んだ結果と言えるでしょう。

海洋実習2日目
 この日は、翌日は前日とはうって変わった晴天となりました。

講習メニュー(海洋実習2日目)
1ダイブ目
BC脱着、エア切れの時のバディ浮上、
BCの排気パターンニ種類、浮力調整浮上。
 1本目の後、2本目を行う前に、ビーチでコンパスの使い方を陸上で練習しました。
2ダイブ目
水中でのコンパスの使用方法、緊急浮力浮上、水をいっぱいに入れるマスククリア。
 また水中で中性浮力とバディとの位置関係に配慮しながらコンパスを実際に使用してみるという練習。

 この2日間の講習での沢井さんのダイビング技術の習得のスピードは、本当に数週間前まで泳ぎに自信がないと語っていた同じ人とは思えないものでした。最初に「泳ぐ」という基本から始めた彼女は、一歩一歩段階を踏んで、少し怖かったプールと海での緊急浮上の練習も含めてその過程を着実にクリアしていきました。もちろんこれには彼女自身のがんばりがあったからですが、しっかりとしたマンツーマン講習がそれを助けたことは間違いありません。
 今回のレポートは、一流のインストラクターが優れた才能を引き出し、さらにこれまでのダイビング事故の犠牲者が残してくれた警鐘を心に刻んできちんとした講習を行うと素晴らしいことが起きるという事例の紹介となりました。

講習で手抜きをされないために
 沢井さんの講習を見てもわかるように、講習を受ける側とそれを行う側が共に意欲と丁寧さを持った講習は、全体として美しい作品とも言えるものになります。
 一度に何人もが同時に講習を受け、ベルトコンベアのように次々と「はいOK」とされて流されていくブロイラーのようなダイバー大量生産方式は、受ける側が相当に自助努力を行って教える側とのバランスを取らないかぎり、その質の確保には困難さが伴います。
よく説明もされないままでテキストとビデオを渡され、時には翌日の午前中に学科講習があるものの、場合によってはほとんどの時間をビデオを見るだけで終わるような、“学科”が行われる程度で、その後に行われる形式だけのテストで、それがどのような結果であろうと、“合格”が用意され、その日の午後にはいきなり海洋実習(浅い水深でのプール講習に変わるスキル練習からほとんど連続して海洋実習に入るパターンなど)が行われて、翌日の、ファンダイビングのような楽しみ中心の海洋実習で「ハイ合格です」とされてしまうような講習は、どうみても手抜きとしか思えません。このような講習を、今後「ブロイラー講習」と呼んではいかがでしょう。
 なおブロイラー講習の中には、使用したテキストが講習後回収されて、後で講習生が何を教わっていたのかがわからなくなってしまうものすらあります。
 今ダイバーとなっている皆さんが受けた学科講習はどうだったでしょうか。プール講習はどうでした?ちゃんと潜る前にしっかりとスノーケリングは習いましたか?緊急浮上などもちゃんと教えてもらいましたか?それらは形ばかりのものではありませんでしたか?実際の海洋実習(湖沼で行うものもある)の場ではスノーケリングの技術が欠かせませんし、プールでしっかりと緊急浮上の実習を受けていないと、海洋でのその実習自体にリスクが生じたり、明らかな手抜きによってアリバイ的実習でしかなくなるような事態にもなり得ます。例えば1対4で講習を受けたなら、本来受けるべき講習の4分の1の時間しか受けられないことになります。もし沢井さんがこのようなブロイラー講習を受けていたら、彼女の才能は今回のように開花していたでしょうか?
 ここで、手抜きされる傾向にあるスキル項目をいくつか列挙してみましょう。
 ・スノーケリング練習 ・マスククリア ・緊急浮上(プールと海洋両方で) ・中性
浮力 ・コンパスナビゲーション ・水中での器材の脱着(BCとウェイトベルトの脱着)この他にこれから普及しなくてはならない講習項目は、漂流事故対策のためのフロート講習です。特にレーダーで捜索されることが可能となる講習です。講習のテキストでは漂流時にフロートを使うことは書いてありますが、その使用方法が実際に教えられたり、海での使用体験が行われることはめったにありません。またここでは、目視だけしか捜索手段のないフロートはレーダーで捜索可能なフロートよりその目的性能で大きく劣ることも教えられていません。これは漂流した場合のダイバーの生死にかかわる重要な情報なので、この事実を教えないということは明らかに不誠実です。漂流事故は初心者であっても起こります。もしダイバー講習が人命の安全のためだとするなら、この講習メニューが初級者講習に入っていないというのはおかしなことではないでしょうか。

Cカードを手にする
 海洋実習のしばらく後、彼女に認定証(Cカード)が届きました。これからこのCカードは彼女自身によってその存在の意味がつけられていくことになります。

忘れないで下さい
 ダイビングの講習の目的はCカード(認定証)の入手ではなく、そこに至る過程で良質の講習をしっかり受けて潜水技量を習得することにあります。Cカードはその結果に付随するものです。この最も大切なことを、皆さん、忘れないでください。

沢井美優さんからのメッセージ
 ダイバーとなった沢井さんご本人から、講習を受けた感想とメッセージをいただきました。彼女は忙しいなか、これを一生懸命に心を込めて書いてくれました。安全に裏打ちされた素晴らしい水中経験を楽しみたいと考えるすべての方が、初めてダイビングと出会った頃の謙虚な気持ちを思い出すためにもぜひ読んでみてください。なお沢井さんからいただいた文章は、掲載の都合上、その表現スタイルを尊重しながら一部編集しています。

「沢井美優ダイバーになる」
※後日、掲載可能となるかもしれませんのでお待ちください。

良いダイバーとなるための教訓
 インストラクターの島田さんによる講習後の総評は次のようなものでした。
「沢井さんは自分のイメージと行動を一致できる人ですね。一般の人はイメージができてもそれが行動にできにくいし、イメージ自体ができにくいことが多い。沢井さんは伝えたことが瞬間的にイメージにできてそれを行動にできる人。とてもダイビング向きだと思います」と語っていました。私も同感です。
 この「自分のイメージと行動を一致させる」という要素は、ダイビングを習うために大切なものです。ダイビングを習いたい方、そしてレベルアップを目指す方は、意識してこの要素を身につけるよう努力することをお勧めします。

教訓―良いダイバーとなるには、「イメージを行動にできるようになる」。
 世の中には、実は沢井さんと同じような才能を持ちながら、ブロイラー講習によってその才能が正しく十分に実現できていないダイバーがたくさんいるのではないかと思います。才能の開花には、それを見事に開花させることができるような才能が、導く側に要求されるのではないでしょうか。それが一流のインストラクターの証ではないかとも思います。

ザ・インストラクター:島田誠一
 私が多くのプロダイバーに手本としてほしい、プロ中のプロのインストラクターの1人が今回、沢井さんの講習を行ってくださった島田誠一さんです。
 島田さんは、東京アクアラングサービスのオーナー兼チーフインストラクターです。
 彼は、日々研鎖を忘れずに作り上げてきた優れた潜水技量と、プロとしての強い自覚、穏やかな人柄、そして誰もがダイビングを安全に楽しんでほしいという思いと情熱を持つ、私が知るかぎりにおいて、日本のトップクラスの良心的なプロインストラクターです。
 私もその高い見識を頼って、いろいろと指導をしていただきました。彼のスタイルは、都市型ショップにおけるダイビングサービスの「良心」とも言えるでしょう。
 今回、島田さんはマンツーマンで講習を行いましたが、このような講習形態は島田さんのショップでは決して特別なことではなく、島田さんは原則として常時マンツーマンで講習を行っています(どうしても水中での実習を2人で1度にと希望する方には、マンツーマンより増加するリスクについて、事前に十分説明を行っています)。そのためこのショップでは、個々人の事情に合わせたきめの細かいフォローができ、その結果、質の高いダイバーが育つと言われています。また島田さんのショップは若いダイバーばかりからではなく、年配のダイバーの方々からも深い信頼を得ています。他にも有名な芸能人の方がここで講習を受けてもおり、ダイビングの質を求めるさまざまな層からの支持を受けています。以上から、このショップでダイビングを始められた方は幸運なダイバーと言っても過言ではないでしょう。
 島田さんのプロとしての経験本数は、平成20年当初の時点で約6000本です。しかもその中味は通常のインストラクターやガイドの仕事だけでなく、全国のダムや原子力発電所関連の水中施設での作業潜水、そして水族館で行う職員の指導など多岐に渡ります。これらは卓越した技量がないとできないものです。
 彼の語りロはソフトで誠実味に溢れ、しかも若い頃はテレビ業界で働いていた経験もあって、講習の時などの話題も豊富です。
 私は島田さんのショップでダイビングを行っているダイバーの方々とお話する機会が何度かありましたが、皆さんそれぞれ客という立場での質の高い方々でした。
 これから団塊の世代の多くの方々が定年を迎えられて、悠々自適の生活を迎えるにあたってダイバーを目指す方が少なくないと思いますが、実際にそのような、人を見る目を持つ人生経験豊富な年齢層から70歳を超えるダイバーまでが彼に寄せる信頼の度合いを見ると、彼の懐の深さがわかります。
 島田さんはダイビング器材のオーバーホールの資格も持ち、器材に関するノウハウも卓越しています。他にも小型1級船舶免許を初めとした各種免許を持ち、さらにテレビ番組やCMなどの水中撮影に参加したり、時にはご自身が出演もされています。さまざまな場面から求められる人材である彼の力量の大きさが感じられます。
 島田さんは、東京大学で行われた、ダイバーに対するスキル講習(東大内プールで)も行い、そして同大学で行われた安全潜水に関するシンポジウムのパネラーとしての発表も行っています。これも、社会が彼に寄せる信頼の高さを物語っていると言えるのではないでしょうか。
 東京アクアラングサービスでは、講習やファンダイビングの質を落とさないために、許容人数を超える講習やファンダイビングの申し込みを受け付けていません。そのため、シーズンによっては、講習やツアーを申し込んでも参加できないことがあったり、キャンセル待ちをしなければならない時期もあります。したがってもしこのショップのサービスを受けてみたい方は、十分に時間的な余裕をもったうえで問い合わせてみてください。
 なお今後は、島田さんが自分と同じレベルのプロたちとのネットワークを組んで、良質の講習やガイドができる体制をとることも計画しているとのことです。これが実現していけば、講習やガイドの希望者が島田さんから直接講習を受けられなくても、同等の良質な講習やガイドを受けることが可能となることでしょう。
 最後にこの本を読まれた方々に私からの切なる願いを申し上げます。島田さんを単なるタダで利用できる情報源として利用するようなことはぜひ慎んでください。それは場合によっては、数少ない良質なダイビング文化を荒らしてしまうことにもなりかねないからです。良質と一流は、そこに至るまでの長い年月とたゆまぬ研鍮が要求されますが、失われるときはあっという間です。どうかご理解をお願い致します。

※島田さんのショップ紹介
東京アクアラングサービス
〒160-0022 東京都新宿区新宿2−4−1−102
宿御苑駅から徒歩3分 新宿駅南口から徒歩8分 
OPEN 12:00〜21:00 火曜定休  TEL 03-3354-0880
e-mai tas246j@crocus.ocn.ne.jp
ホームページ http://www1.ocn.ne.jp/~tas/
※島田誠一氏プロフィール
東京アクアラングサービス店長。(以下、書籍掲載時点から2010年3月時点での情報に変更)
20代のころ、フジテレビ在籍中ダイビングに目覚め、伊豆、関東のダイビングスクール&プロショップのスタッフを経て作業潜水士の道に入り、全国の発電所、ダムなど日本中の海、湖を潜り今に至る。
ダイビング経験20年、イントラ歴15年、潜水本数 7000本〜(2010年3月時点)
184cm 76kg 12月27日生まれ
山羊座 A型 水面空気消費率=SCR=1,1kg/cm2/min
撮影関係
デサント水着CMカメラアシスト、バラエティー番組水中撮影、TVタレント潜水補佐、映画スタントシーン水中部補佐、レインボーブリッジ下ロケハン潜水、12チャンネル番組、「所さんの学校では教えてくれないそこんところ」東京湾水中リポーター出演、フジテレビ番組「とくダネ!」東京湾水中撮影サポート

講演、執筆など 
06年7月東京大学環境安全本部の依頼により、東京大学内の弥生講堂で開催された”安全シンポジウム”にて講演を依頼され実施。
ダイビング関係の出版物に原稿掲載など。

その他
東京大学内プールにてスキル講習、水族館職員のプール講習、モデル、芸人、女優さんなど業界関係者のダイビング講習、TV番組水中ロケアドバイザー、ダイビング事故裁判資料水中映像の撮影など。


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