第5章 「安全潜水ビジネス」レベル宣言
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著者 中田 誠 編集 村上 清 発行人 落合美紗 発行所 株式会社太田出版 代表 Tel.03-3359-6262 http://www.ohtabooks.com/ ISBN978-4-7783-1115-5 (c)Nakada Makoto,2008 本書の無断転載・複製を禁じます。 |
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提案:「消費者が求める安全潜水ビジネスレベル」
これまで日本には、ダイビング「ビジネス」のための評価基準しかなかったようにも感じます。そして以前から、一般ダイバーである消費者の視点と立場から見た、消費者の安全優先と、プロの品質確認ができるような基準の必要性が訴えられてきました。
しかしこのような消費者側からの訴えは、現在のビジネスシステムではまだ実現していません。
そこで本書では、消費者の立場からの、プロの品質についての基準とレベルの提案をさせていただくことにしました。そしてこのレベルの内容に賛同いただけるプロの方々から、自分に合ったレベルの宣言の受け付けをさせていただきました。
その結果、平成19年11月末までにレベル宣言があったのは、日本でショップが3つ、個人が1人、台湾で追求者が1人でした。
これはダイビングビジネスの現状を見る良い参考になると思います。
このような宣言者たちが今後増えてくれば、日本のダイビングシーンが消費者側とその
安全に大きくシフトし始めたと見ることができる希望となることでしょう。
以下、「消費者が求める安全潜水ビジネスレベル」の提案内容をご説明します。
安全潜水ビジネスレベル宣言ガイド
宣言墓準
@レベルー宣言基準(安全潜水ビジネスレベルー推奨基準、必須条件)
↓ショップの場合、スタッフ品質と講習品質。ファンダイビング時のガイドレベルも同等とする。
●チーフインストラクターの経験本数は、プロないしはプロレベルの活動実績で3000本以上。または経験年数は同じ基準で10年以上(2000本は最低基準)。現地で講習生を引率するチーフインストラクターをサポート(チーフイントラは必ず同行)するサブスタッフの経験は、プロないしはプロレベルの活動実績で500本以上。
●透明度が10m以内の状況で、チーフインストラクターと講習生の人数費が1:2以内。透明度が20m以内の状況で人数比が1:3以内(ただしサブスタッフの同行は必須)でオープンウォーター海洋実習を実施している(講習時は、見失いや、トラブル対応時に確実に対応できるよう、マンツーマンで行うことを基本とする。
●エア切れの時のバディとの空気共有による浮上と緊急浮力浮上、ウェイトベルトのリリースなどの緊急スキルトレーニングを、講習生が合格レベルになるまで実習中に繰り返し実行できる内容でスクールを実施している。なおマスククリアの習得は必須。
●ブリーフィングは形式レベルではなく、その時々に行われるダイビングの予見される危険について、致死性の高い部分を、特に警告をもって指摘し、参加者各自に徹底させている。
●講習テキストは回収しない。また「指導団体」から自宅学習とされている学科講習でも必ず対面式での学科講習を行って講習生の習熟度を測り、講習品質を維持している。
●潜水技量やダイバーとしての資質(注意を聞かない、最低限のルールも守らない、バディシステムの厳守を行わない、ダイビング中に危険を招く要因となるほどの過度な感情の起伏がある、アルコールや薬物を摂取しているか依存しているなどは、資質が著しく劣るか、ないと見なす)から、他の一般客に危険な影響を与えると判断された客を他の一般客と同じパーティに参加させない。ただし、別途に行う個別指導は自由。
●ブランクダイバーや、初めての客が参加するときには、チェックダイブを行ってその技量レペルを判定している(チェックダイブは減圧症になる確率が低い、水深数m程度で行
うことが望ましい。ダイビングプールでも可)。
潜水計画と情報開示レベル
.一般ダイバーに対して、予備計画(トラブルや海況変化を予見したバックアッブ計画)を含めた潜水計画の十分な事前説明と周知がなされ、毎回その説明資料と周知されたこと
を証明する記録が残されている(保存期間は3〜5年)。
※登山を行う者は、通常、都度登山計画書を書いているので、それに比べて過重な負担ではない。
※事故などの時、嚢提起期限までは保存しておく義務があると考えられる。保存年限はこれを踏まえて別途検討する。
●予見される事故に関する情報と、その場合に事故者が負うリスク、またそのような場合に、インストラクターやガイド、及びパーアイやバディのとるべき対処法の情報開示を遅滞なく行える。
●ダイビングの安全鉄則を守っている。-----例:1本目をより深く、それ以降を順番により浅くという鉄則。パーティの誰かにトラブルがあって浮上する場合には、全員が直ちにダイビングを中止してポートやビーチに戻るという鉄則。またヨーヨー潜水を行わない。
●参加者の医学的潜水適性(減圧病にかかりやすいか否か、精神的に安定しているかなど)がわかるまで、いわゆるガンガン潜水をさせない。
保険
●対人賠償保険に入っており、その内容を、客のダイバーたちにいつでも開示できる。
法律遵守
●国内では、ショップはスタッフに潜水士資格の保有と、健康診断の定期実施と記録の保管を実行。海外では、違法就労となるスタッフ活動をさせないこと。
ダイビング形態
●体験・講習・ファンダイブを混載し、同一のスタッフによってこれらを混ぜて同時に行うことはしない。
器材販売
●ショップでは、器材をフルレンタルのままCカードを取得する講習生の比率が少なく、安全性とスキルの向上のため、器材はスタッフが使用しているものと同レベルのものを所有することを講習中に推奨している(器材販売をしていないリゾートは除く)。ただし、器材と講習とのセット販売の強要や、押し売り、デート商法などの不適切な方法などでの販売を行うことはない。しかし体験ダイビング参加者以外には、安全確保のため、3点セットのうち、特にマスクとスノーケルの販売推奨は積極的に求める。
Aレベル2宣言基準(安全潜水ビジネスレベル2推奨基準―レベル1の上位レベル)
レベル1推奨基準に条件を加算。
●レベル2のチーフインストラクターの経験本数は、プロないしはプロレベルの活動実績で5000本以上。また合わせて、海上保安庁の潜水士経験、ないしは海上自衛隊の潜水隊の隊員の経験、あるいは正式な潜水作業会社で3ヶ月以上の実務経験(現場での作業実績)があること。あるいはこれと同等の技量があると、レベル2を達成しているチーフインストラクターの責任において正式に認められていること(書式は自由であるが、レベル2の署名のある文書化がされていること)。
●体験や講習は、原則マンツーマンで行う。2人以上の場合には、必ずレベル1相当のサブスタッフを必要人数同行させ、トラブル時に水中および水面で放置されるダイバーのない体制を取れる。なお、実質人数比で、1人のスタッフが2人を超える客を同時に担当する比率とならないこととする。
●必要な場合の情報開示は随時行える。1例"イントラが指導ないしはガイドしたときのダイビングコンピユーターのデータ開示など。
「レベル宣言者」の意味
●レベル1追求者:レベルーガイドに賛同して「レベル1を目指している」と宣言した者。
●レベル1宣言者 レベルーガイドに賛同して「レベル1を達成している」と宣言した者。
●レベル2宣言者 「レベル2を達成している」と宣言した者。
・宣言者1=ショップの最高経営責任者=いわゆるオーナー。またショップ所属で宣言を認められたチーフインストラクター)
・宣言者2=フリーのインストラクター/個人
優良ショップの指標となる可能性のある「安全潜水ビジネスレベル宣言ガイド」の概念と仕組み
この「宣言」は、自由な意思の下に行うことができるし、撤回することもできます。ただし宣言者は自らの宣言に伴う実行責任が生じることを自覚する必要があります。
優良ショップ・インストラクターの定義提案
インストラクター個人が宣言する場合、プロとしての経験年数、実働(常勤)期間が通算で2年以上とし、実働経験がないままアルバイトやパートタイマーとしてインストラクターを行っている者は除く(今後、状況を見ての再検討もありえます)。
※P254より、宣言者・賛同者一覧を掲載しています。
「安全潜水ビジネス」
レベル宣言者・賛同者一覧(第5章参照)
レベル宜言されたショップと個人ダイバー、そして本宜言の趣旨に賛同されたサークルや個人ダイバーを紹介します。これは平成20年初頭時点での宣言者情報です。
@レベル1追求者
高橋政博氏
インストラクター歴:4年、経験本数:約400本。
台湾でダイビングビジネスを展開中。
Aレベル1宣言者 現在まで宣言者不在
Bレベル2宣言者
<宣言ショップ〉東京アクアラングサーピス(本書第3章参照)
〒160-0022 東京都新宿区新宿2-4-1
電話03-3354-0880
ホームページhttp:〃www1.ocn.ne.jp/~tas/
e-ma‖:tas246j@crocus.ocn.ne.jp
安良里マリン
〒410-3502 静岡県賀茂郡西伊豆町安良里84-1
電話0558-56-1501
ホームページ htt://www.arari.jp
オーナーからの一般ダイバーへの一言
コメント:「基本をしっかり、安全こそすべて!」
シーパラダイスピコ
〒062-0933 札幌市豊平区平岸3条11丁目1-2O
アーバンプラザ1F
有限会社アクアテクニクス代表:本間誠士氏
電話 O11-814-1288 FAX O21-814-1271
ホームページ http://www.O1x.com/
e-mail:pico@O1x.com
〈個人宣言者〉山下力氏
ダイビングスクー&ショップデポ代表
経験本数:約6500本
(この他にも様々な形態での潜水経験あり)
〒350-1147 埼玉県川越市古市場749-2
電話・FAX O49-235-7349
ホームページhttp://www.depot-diving.jp
e-mail:depot@depot-diving.jp
※著者注:山下氏は、東京大学の依頼で同大内のプールで同大のダイバーたちのチェックダイブ担当インストラクターの一人を務めた経験があります。現在は、学術調査のダイビングを主な活動として全国を飛び回っています。
C安全を重視した社会人ダイビングサークル
飲兵衛ダイバーのmarkさんを中心とした集まり
主催者 mark氏 ホームページ 「rmark's home page」
http://www.hi-ho.ne.jp/mark/