とよたま愛読会130回
   
霊主体従 7巻 総説 〜 7巻 21」   [前回レポート] [次回レポート]
      記:望月幹巳 メール:motomi@moon.nifty.jp


日 時  平成19年7月22(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
      連絡先 03-3321-3896、  03-3321-8644
物 語   霊主体従 7巻(午の巻) 総説 〜 21章 :飲めぬ酒

★ 報告

 物語は第七巻に入っています。日の出神が中国の霊山・大台ヶ原から始まって、常世の国まで宣伝の旅を続けながら、各国の守護神を任命する物語です。

 大台ヶ原では、最終的に霊山を占領していた八岐大蛇を追い出して、大事忍男神を守護神と任命します。

 また、竜宮島ではかつての竜宮城の司であった田依彦が、飯依彦と名を変えて、守護神に任命されていきます。

 本巻の総説には、開祖のお筆先の位置づけについて、また霊界物語の解釈に対する注意点について述べられており、重要な箇所であり、特に注意深く読むべきところであるかと思います。

 

★ 拝読箇所で気のついたこと

霊主体従 午の巻
序文

  • 節分祭の四日前、節分までに第七巻を口述せよとの知らせに、王仁は竜宮館の錦水亭に、温泉帰りの身を横たえて口述を始めた。

  • 神界は時々刻々と急迫を告げ、三界の形成は容易ならない時機となった。しかし邪神は神界の経綸を瓦解させようと大本を付けねらっている。

  • 槍の雨、毒舌の風を柳と受けて、今は何も言わない岩の神のようになり、一方で固く結んで解くに説けない物語を口述しつつ、梅香の春が匂う時こそを待っているのである。

  • 三千世界梅の花、錦の機のおりおりに、心をひそめて神意のあるところを味わっていただきたい。

  • <凡例>

  • 本館は,岩井温泉から綾部に帰ってのち、節分祭までの四日間に完成した。その内容は、伊弉諾の大神の御子である日の出神が、大台ケ原から豪州(竜宮島)を経て、アフリカ大陸(筑紫の島)へと渡り、神の道を宣伝し世人を救済するとともに、各国魂の守護職を任命する物語である。

  • 本巻総説にあるとおり、この霊界物語は人智をもって解説することは到底できない。すべて文字のままを拝読し、身魂相応に解釈すれば結構であると思う。

  • <総説>

  • 神界から示される教えは、現代人の数理的頭脳ではうかがい知ることはとうていできない。神は言霊であり、すなわち道(ことば)である。言葉を主として理解すべきものである。

  • 教祖の直筆であるお筆先を取捨按配して発表したのが、大本神諭である。この神諭を経の筆先といって、変性女子の緯の筆先と区別し、経は信じるが緯は信じない、という人があるようだ。

  • しかし、教祖は大正五年旧九月八日まではご修行時代であったのであり、それは教祖自筆の大正五年九月九日のお筆先を見れば判然とするのである。そこには、変性女子のやり方を今まで誤解していた、という意味のことを書いておられる。

  • そもそも大本神諭自体が、変性女子がお筆先を取捨按配して発表したものであるので、その内容を根拠にして変性女子を批評するのは、いきさつを知らない人の誤りなのである。

  • もはや止むに止まれない場合に立ち入ったので、露骨に事実を告白する。教祖は明治二十五年から大正五年まで、前後二十五年間、未見真実の境遇にあって神務に奉仕し、神政成就の基本的神業の先駆を勤められた。

  • 女子は明治三十一年の入道であるが、未見真実は明治三十三年までの二年間であった。その後は見真実の神業である。

  • 神諭の年月日の数字の解釈にとらわれた説明に、誤られてはならない。要するに、三千年(=無限の年数)の間の大神の御艱苦が出現し、神徳の発揮される最初の年が、明治二十五年正月から、ということなのである。

  • 九月八日は梅で開いて松で治める、という意味である。正月三日とは、神徳が完全に発揮されることを言う。神諭の解釈は容易でないし、筆先と神諭の区別もわきまえて読まなければならない。

  • この霊界物語を、人智でもって判断することはできない。たとえ編集人、筆録者の解説であっても、肯定してはならない。

  • ただ単に文句のまま、素直に読むのが第一安全であるので、ここにその旨書き加える次第である。

  • 第一篇 大台ケ原
    第一章 日出山上(301)

  • 中国一の大高山である大台ケ原の中央に、雲突くばかりの大岩窟があった。日の出神は踏み分け踏み分け、この岩窟の前にやってきた。

  • 折から、天地も崩れるばかりの大音響ものすごく、八岐の大蛇を先頭にして大蛇の群れが渓谷を這い、岩窟を指して進んでくる。凄まじい光景の中、日の出神は黙然として瞑目静座不動の姿勢を保っている。

  • 忽然として白髪異様の妖神が現れ、この山は盤古神王・塩長彦の娘・塩治姫が鎮まる霊山であれば、即刻に立ち去るように日の出神に警告した。

  • 日の出神はむっくと立ち上がり、盤古神王は地教山に隠れており、エルサレムには国治立命の従者・紅葉別が盤古神王と名乗って天下の形成を観望している、と明かした。そしてその事実を知らない妖神は、偽盤古神王・ウラル彦の邪神一派ではないかと詰め寄った。

  • 妖神は日の出神に喝破されて、自分は大事忍男であると正体を明かした。そして大蛇悪鬼を呼び寄せ、日の出神に降伏を迫った。

  • 日の出神は刀の柄に手をかけて、あくまで徹底抗戦の意を表した。すると大事忍男はその勢いにおされ、岩窟に逃げ入ってしまった。悪鬼邪神の姿は煙となって消えうせた。

  • 第二章 三神司邂逅(302)

  • そこへ、康代彦と真鉄彦が大台ケ原を登ってやってきた。康代彦と真鉄彦は、大事忍男がウラル山の八岐大蛇の化身であり、神山・大台ケ原に立て籠もっていることを歌いながらやってきた。

  • そして、日の出神、康代彦、真鉄彦は、天の御柱大神の導きによってここにやってきたという。

  • 二神は、日出づる国の礎を照らす日の出大神は、この大台ケ原に永遠に鎮まって、天津日嗣の皇神の御位を守り奉れ、真鉄彦は左守、康代彦は右守となろう、と歌った。

  • 第三章 白竜(303)

  • 岩窟の前に集った三神の前に、あでやかな姫神が現れて慇懃に会釈をし、岩窟の中に進み入った。

  • 三神は意を決して岩窟を探検することにした。一同は果てしのない岩窟を進んで行き、天井高く横幅広い場所に到達した。すると岩窟は次第に展開して、処々から朦朧たる光を表した。

  • その光の中に、荘厳な宮殿が現れた。三神は驚きつつ、警戒しながら宮殿に近づいていく。宮殿には堅固な石門があった。

  • 日の出神が石門を開こうと力を込めて押していると、宮殿の中から邪神の声が、三神がまんまと計略にかかって包囲されていることを告げた。

  • 真鉄彦は石門をねじ上げて押し倒した。すると門内には、幾百千もの大蛇に包まれて、美しい女性が端然と控えていた。

  • 日の出神は声を張り上げて、日の出神が生魂・康代彦が幸魂・真鉄彦が荒魂となり、三つの魂と現れて神素盞嗚の神となり、大蛇を斬りほふる覚悟である、と歌い始めた。

  • この歌を聞くと、美しい女性の曲津神は白竜と化し、三神の前に帰順の意を表した。宮殿も大蛇の群れも、どこかへ消えてしまった。

  • 第四章 石土毘古(304)

  • 日の出神らはなおも油断ならじと白竜に詰め寄った。真鉄彦が長剣をもって白竜の頭部に斬りつけると、一条の血煙とともに白雲がもうもうと立ち込め、中から最前の女性が現れた。

  • 女性は、自分は天の御柱神(神伊弉諾命)の御子で、石巣比売であると明かした。夫の石土毘古とともに、父大神が松の世の礎として造った岩窟に住んでいたが、八岐大蛇が邪神軍を引き連れて襲い掛かり、我ら夫婦を亡ぼして岩窟の主となろうとしているのだ、と明かした。

  • そこへ、ひとりの従者があわただしく走り来て、石土毘古が今にも殺されそうになっている、と注進した。

  • 岩窟の奥では、邪神が石土毘古を拷問していた。石土毘古はそれに屈せず、逆に日の出神・康代彦・真鉄彦が岩窟に進んできた今、降伏すべきは邪神の側である、と毅然と言い放った。

  • 怒った八岐大蛇の号令により、石土毘古は邪神の手下どもに攻め囲まれてしまった。

  • 第五章 日の出ヶ嶽(305)

  • 石土毘古の危急を報せたのは、元は竜宮城の従属であった豆寅である。豆寅は善悪正邪の区別なく、旗色のよしあしによって仕える軽率者であったが、本心は正直であった。大国治立命の御代以来、この男の行動を寛恕していたのも、心中には一片の悪意もないからであった。

  • 豆寅は八岐大蛇の暴虐ぶりに驚いて本心に立ち返り、石土毘古の危急を報せに来たのであった。一同は豆寅の案内で、石土毘古のところに急行した。

  • そこは固い岩戸に閉ざされていたが、康代彦が祝詞を上げて打ち叩くと、脆くもさっと開いた。この勇気を賞して、日の出神は神名の一字を取り、康代彦を大戸日別を称した。

  • 四柱は中に進み入った。豆寅は勇将たちに囲まれて、意気揚々と歌を歌ってしゃちこ張り、八岐大蛇に啖呵を切った。

  • 八岐大蛇は吹き出して鉄拳で豆寅を打った。豆寅は中空を舞って岩窟に腰を打ちつけた。邪神の手下どもはいっせいに四柱に打ってかかった。

  • 真鉄彦は真っ先に進み出て臍下丹田から息を吹きかけた。岩窟の中は狭霧に包まれ、辺りの様子も見えないようになってしまった。岩窟の屋根は落ち、天上の青雲が現れた。すると大蛇は部下を引き連れて黒雲を巻き起こし、ウラル山さして一目散に逃げ帰ってしまった。

  • 日の出神は真鉄彦に、天吹男という名を与えた。そして東方の山頂に登り、天津日の神に感謝の祝詞を捧げた。この山を、日の出ヶ嶽という。

  • 大事忍男神は大台ケ原の守護神となり、石土毘古・石巣比女はこの岩窟を住処として国土を永遠に守護することとなった。

  • 日の出神は、大戸日別、天吹男とともに、ゆうゆうと大台ケ原を下っていった。

  • 第六章 空威張(306)

  • 港に集まる船を眼下に眺めて、四、五の旅人が話しにふけっている。それは、かつて竜宮城の司神であったが、邪神の計略で玉を失ってしまった田依彦一行であった。

  • 大台ケ原の大事忍男神について、「人を食らう邪神だ」、「いや、どんな大事変があっても泰然自若として忍び、世に尽くしてくれる神だ」、と論評している。

  • そして、田依彦の姉婿の豆寅が、大台ケ原の岩窟に引っ張っていかれて十年経つことに話題が及ぶと、そこへ、日の出神・大戸日別・天吹男の従者となって意気揚々と豆寅が現れた。

  • 道端に潜む田依彦らは、夕闇をいいことに、豆寅のはげ頭に枝を投げつけると、豆寅は驚いて、滑稽な姿で泣き叫んだ。

  • 第七章 山火事(307)

  • 日の出神ら三神は、腰を抜かして泣き叫ぶ豆寅を置いて、宣伝歌を歌いながらどんどんと先へ進んでいってしまった。

  • 闇の中で、豆寅をからかう歌声が聞こえ始めた。豆寅は聞き覚えのある声に呼ばわった。田依彦は火打ちを取り出して枯れ枝に火をつけると、ようやく一同の顔が現れた。

  • しかし折からの烈風に火は燃え広がり、全山を焼き尽くすほどに勢いになってしまった。日の出神一行はこの山火事に驚いて引き返してきた。

  • このとき、山上を登ってきたのは、黄金山の三五教の宣伝使・国彦の三男・梅ヶ香彦であった。梅ヶ香彦は、満身の力を込めて伊吹戸主神に祈願をこらし、燃え広がる火に向かって息を吹きかけた。風はたちまち方向を転じて、ぴったりと消えうせた。

  • 夜が明けると、山の八合目以下は全部灰の山になってしまっていることがわかった。焼き出された山麓の住人たちは田依彦たちを見つけて取り囲み、犯人を火あぶりの刑に処すると宣言した。

  • 豆寅や田依彦たちが住人たちに責められているところへ、日の出神一行が戻ってきた。日の出神は、豆寅たちを山麓の酋長に預けて、焼けうせた人々の家を再建させた。豆寅は久々能智と名を与えられた。

  • そして、梅ヶ香彦の功労を賞して、風木津別之忍男と名を与えた。日の出神、大戸日別、天吹男、風木津別之忍男の四柱は山を下り海を渡り、そこで別れて東西南北にいずこともなく宣伝使として進んで行った。

  • 第二篇 白雪郷
    第八章 羽衣の松(308)

  • 日の出神を乗せた大船は、熊野の浦を出て東に進んでいた。東海には天教の山を望む、のどかな船旅であった。

  • たちまち高波に船は木の葉のように漂う危うさ。天教の山もいつしか雲に包まれてしまった。船は難を避けようと、三保の松原目当てに岸に着いた。

  • 人々は岸に上ったが、波はたけり狂って、羽衣の松もほとんど水に没しようという勢いであった。みな小高い丘にかけのぼり、海が凪ぐのを待っていた。そこへ、微妙の音楽が天上より聞こえて、かぐわしい色々の花が降ってきた。

  • 男女の二神が雲に乗って降ってきた。日の出神に会釈をすると、声を張り上げて歌い、天女の舞を舞い始めた。

  • 二神は三保津彦・三保津姫の分霊である、沫那岐神・沫那美神であった。邪神は大台ヶ原を出て常世の国に巣食っており、日の出神が常世の国に渡るべきことを告げ、その旅路の守護を申し出た。

  • 二神は舞い終わると、天教山に向かって姿を隠した。これより、日の出神は艱難辛苦の末に、再び常世の国にわたることになった。

  • 第九章 弱腰男(309)

  • 日の出神は一度天教山に登り、青木ヶ原の木の花姫の宮に至った。これまでの宣伝の旅を木の花姫命に報告した。木の花姫は深く感賞し、常世の国への出発を命じたのである。

  • 日の出神は撞の御柱の神、天の御柱の神に謁し、種々の神勅をこうむり、欣然として再び宣伝の途についた。

  • 田子の浦より出港し、青雲山のある月氏国の浜で、一ヶ月停泊しなければならないことになった。日の出神は無聊のため、山に分け入って宣伝を試みた。

  • ここは青雲山の山続き、白雪山である。山野は青々と鳥は啼き歌い、のどかな場所である。日の出神は終日宣伝歌を歌い、くたびれて路傍の草花に身を横たえて、空を眺めていた。

  • そこへ二三の里人が走ってきて、宣伝使を見ると、仰天して打ち倒れた。日の出神は何事かと問いかけた。

  • 里人が答えて言うに、村は三五教の女宣伝使の感化によって皆が三五教を新興していたが、そこへ今日、大中教の宣伝使たちがやってきて、三五教の女宣伝使を誘拐した上、酋長夫婦を木に縛りつけ、村人に改宗を迫って脅迫している、という。

  • 里人たちは何とか逃げてきたが、日の出神を大中教の宣伝使と間違えて、驚いたのであった。日の出神が、自分は三五教の宣伝使であると告げ、村に案内するようにと伝えた

  • しかし、三五教の加勢がたったひとりであることから、腰が引けている。

  • 第十章 附合信心(310)

  • 日の出神を案内する里人、甲、乙、丙は大中教の威勢を恐れて情けない会話をしながら、道を先導していた。

  • 甲、乙、丙は、大中教に命を脅かされても信仰を変えないとがんばっている信者を馬鹿にした。日の出神は三人を一喝すると、こんな弱虫にかまっていられないと、どんどん先に山道を進んでいった。

  • 第十一章 助け船(311)

  • 大中教の宣伝使・健寅彦は、あまたの従者と共に木に縛り付けた酋長夫婦を取り囲み、右手に剣、左手に徳利を握りながら、一口酒を飲んでは改宗を迫っている。

  • 酋長夫婦は目を閉じ口を結んで、心中に野立彦命、野立姫命の救いを祈願している。このとき、木霊を響かせながら三五教の宣伝歌が聞こえてきた。

  • 大中教の宣伝使たちは、この歌を聞くと顔をしかめ頭を抱えてその場に縮んでしまった。日の出神はその場に現れると、ゆうゆうと酋長夫婦をはじめ村人たちの縛を解いた。

  • 村人たちは日の出神とともに宣伝歌を大合唱した。大中教の使徒たちはたまりかね、みな山頂めがけてこそこそと身を隠してしまった。

  • 日の出神は酋長夫婦の固い信仰を激賞し、面那芸司、面那美司と名を与えた。酋長は、三五教の女宣伝使・祝姫が大中教の者らにかどわかされていることを伝え、救出を要請した。日の出神は酋長夫婦を従えて、救出に向かった。

  • 後に村人たちが、日の出神の出現について、あれこれと話し合っている。そこへ、逃げていた八と六がこわごわ姿を見せると、村人たちは口々にその臆病を非難した。

  • 第十二章 熟々尽(312)

  • 八は、自分が逃げる途中で腰を抜かしたおかげで、日の出神を村につれてくることができたのだ、と屁理屈を言っている。

  • 村人たちがおかしな会話をしているところへ、酋長の妻の面那美司が戻ってきた。そして、面那芸司は三五教の宣伝使となって旅に出ることになったこと、白雪郷は面那美司がひとり酋長となって治めることになったことを伝えた。

  • 面那美司が、今日は門出のめでたい日だから、特別に酒を飲んでもいいというと、村人たちは先を争って、大中教の使徒たちが残した徳利に群がった。

  • 面那美司はこの光景にあきれつつ、宣伝歌を歌いながら山道へと引き返していった。老若男女は面那美司について山中に入っていった。すると、祝姫はすでに救出されて、日の出神と酋長とともに端座していた。

  • 祝姫が大中教の宣伝使らに取り囲まれて、改宗を脅迫され、今にも打ち殺されようとしたとき、日の出神が現れて、大音声に宣伝歌を歌ったので、大中教の者らは縮み上がってこそこそと四方八方に姿を潜めてしまったのであった。

  • 日の出神、面那芸司、祝姫は山を下り、白雪郷に一泊すると、宣伝の旅に出発して行った。

  • 第三篇 太平洋
    第十三章 美代の浜(313)

  • 白雪郷から三柱の宣伝使が旅立つにあたり、祝宴が催された。面那美司は見送りの歌を歌った。

  • 三柱は名残尽きずと神言を奏上し、美代の浜の埠頭に向かった。

  • 第十四章 怒涛澎湃(314)

  • 船客たちが四方山話にふける一方、船中に歌を歌う女があった。それは、遠く常世の国へ旅立った男を思う歌であった。

  • その歌を聴いて、白雪郷から来た長髪の荒男は、その女が自分の息子の恋人であることを知った。男の息子は、この恋愛が白雪郷の規則を破ったかどで、村を追放されていたのであった。

  • 男は女に、息子の居場所を教えてくれ、と頼み込んだ。そのとき、突然嵐がやってきた。すると女は荒れ狂う海に身を投げてしまった。

  • 男は女を助けようと自ら海に飛び込んだ。

  • そんな中、暗中に静かに宣伝歌が響き聞こえてきた。

  • 第十五章 船幽霊(315)

  • 日の出神の宣伝歌に、恐ろしい嵐もまったく凪ぎ、空には天の河が見えだした。

  • 船中の客たちは、にわかに元気付いて、またもや四方山話にふけった。乙は日の出神のすがすがしい声をもう一度聞きたい、というと、甲はあんな声は苦しくてたまったものじゃない、と悪口を言い、喧嘩が始まった。

  • するとまたしても暴風が吹きすさび、波が猛り狂い始めた。

  • 第十六章 釣魚の悲(316)

  • 日の出神はふたたび、三五教の教えを織り込み、人々に心の鬼大蛇を戒める宣伝歌を歌い始めた。すると、またしても海面は風凪ぎ、波は鎮まった。

  • 船中から一人の男が日の出神に話しかけた。二度までも船の危急を救ったことと、清き美わしい教えの教示に感謝の念を表し、自分の身の上を語り始めた。

  • この男は、先の長髪の男の息子であり、海に身を投げた女が探していた恋人であった。男は、むざむざ目の前で父親と恋人を亡くした悩みを、日の出神に打ち明けた。

  • 日の出神はにっこりとして、神は必ずや親子夫婦の再会を得させたまう、ただ本心に立ち返って三五教の教えを守り、天地の神を真心より賛美するようにと諭した。

  • 男は日の出神に感謝し、涙を流しながら宣伝歌を歌い始めた。日の出神は海を指して、あれを見よ、と男に注意を促した。そこには、波の間に漂う男女の姿が見えた。

  • 第十七章 亀の背(317)

  • 船から向こうに見える島影は、ニュージーランドの一つ島であった。大海原彦が鎮まり、真澄の玉が納まる、国治立大神が穿いたもうた沓嶋である。

  • 波に漂っていた男女は、先に身を投げた女と、長髪の荒男であった。日の出神が差し招くと、二人を乗せた巨大な亀は船に近づいてきた。

  • 男女は船に助け上げられ、これまでの来歴を語った。長髪の荒男は国彦といい、女は奇姫と言った。国彦は、船中に息子の高彦を認めて声をかけた。

  • 国彦、高彦、奇姫は再開を果たし、船中にて高彦と奇姫は夫婦の契りを結んだ。そして三人手を取り合って宣伝歌を歌い、神に感謝を捧げた。

  • 船中の客がこの有様をさまざま話し合っているうちに、船は沓嶋の港に無事に着いた。

  • 高彦は天久比奢母智司の前身である。奇姫は、国久比奢母智司の前身である。

  • 第四篇 鬼門より竜宮へ
    第十八章 海原の宮(318)

  • ニュージーランドの沓嶋は、人の上陸を禁じた島である。ただ、飲料水を取るために船が寄港したのであった。

  • 日の出神は、二柱の宣伝使を従えて上陸し、海原彦神の鎮まる宮に詣で、海上の無事を祈願した。

  • 船中で酒を飲みながら四方山話にふけっていたのは、大台ヶ原で山を焼いた、田依彦、時彦、芳彦であった。時彦を芳彦は酔って喧嘩を始めた。そこへ日の出神が戻ってきた。

  • 田依彦は、大台ヶ原で豆寅の奴扱いにされてつらくて堪らないので、日の出神を追ってやって来たことを告げ、立派な名を頂戴したい、と申し出た。三人のおかしなやり取りに、日の出神も苦笑している。

  • 第十九章 無心の船(319)

  • 船は出港し、竜宮島に向かって進んでいく。暗礁が点在する難路である。日の出神は海上の無事を、沫那岐、沫那美の二神に祈りつつ、宣伝歌を歌った。

  • 時彦と芳彦は、しきりに酒を飲みたがるが、田依彦はそれをたしなめていた。船中には、小声でウラル教の宣伝歌を歌う者がある。

  • 時彦と芳彦はその歌を聞いて酒が恋しくてたまらなくなり、踊り出す。田依彦は二人を鉄拳で張り飛ばした。

  • 第二十章 副守飛出(320)

  • 竜宮島(冠島)には、潮満・潮干の玉が隠されている。船が着くと、船客たちはみな上陸し、竜宮の宮に詣でた。

  • 日の出神は田依彦、時彦、芳彦を伴って島の山の奥深くへ分け入った。田依彦の案内でたどり着いたところは、芳しい匂いのする酒が天然に湧き出ていた。竜宮の乙姫様が造った、酒の滝であるという。

  • 日の出神と田依彦は、お祭りをしてそれが終わったら酒を飲ませてやる、といって時彦、芳彦をじらし、最後に二人を後ろ手に縛って、酒をひしゃくでくみ上げて、顔の近くに突きつけた。

  • 時彦と芳彦が何とか酒を飲もうと舌を出すうちに、卵のような焼け石が口から飛び出して、滝つぼのなかに落ち込んだ。それ以来、時彦、芳彦は酒の匂いも嫌になってしまった。

  • 時彦と芳彦は、竜宮島の宮の造営を命ぜられ、久々司、久木司という名を与えられ、住家を造る役目となった。

  • 第二十一章 飲めぬ酒(321)

  • また海面は波荒く、船の出港は見合わされ、ほとんど一ヶ月逗留することになった。

  • この島は、潮満、潮干の玉が秘め隠され、豊玉姫神、玉依姫神がこれを守護していた。大洪水以前に、ウラル彦の軍勢のために玉は取られ、二柱の女神は遠く東に逃れて、天の真奈井の冠島、沓島に隠れたという、因縁の深い島である。

  • その後は、ウラル彦の部下の荒熊別という者が占領して酒の泉を湛えた。神伊邪那岐神がこの島の守護神として真澄姫命を遣わした。そのため、荒熊別は常世の国へと逃げ帰ってしまった。

  • 日の出神は真澄姫命の神霊を祭るために、久々司、久木司に命じて、竜宮島の竜の宮を造営させた。そして、田依彦を飯依彦と改名し、この島の守護神とした。

  • 造営の人夫たちは、目付け役の久々司が行ってしまった後で、酒が飲みたいとこぼしている。そこへ、久木司がやってきて、自然に湧いている酒だから、遠慮なく飲むがよい、と飲酒を許可した。

  • 人夫たちは先を争って酒の泉にやって来たが、大きな岩で蓋をされ、ところどころに人の口くらいの孔があいているのみであった。

  • 人夫たちはその孔に舌を入れて、何とか酒を飲もうとしていたが、そのうちにめいめい喉がごろごろ鳴り出して、腹の中から焼け石が飛び出した。それ以降、この郷の人間は酒の匂いを嗅ぐのもいやになり、神の教えをよく守り、飯依彦の指揮にしたがって楽しく生活を送ることになった。

  •  

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