とよたま愛読会131回
    「
霊主体従 7巻 22章 〜 50」    [前回レポート] [次回レポート]
     記:望月幹巳 メール:motomi@moon.nifty.jp


日 時  平成19年8月26(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
      連絡先 03-3321-3896、  03-3321-8644
      
参加費は無料です。事前のお申し込みも不要です。霊界物語をお持ちでない方もご参加できます。
物 語   霊主体従 7巻(午の巻) 22章:竜宮の宝 〜 50章:三五〇

★ 報告
今回の拝読会は五名で無事に行われました。また、恒例の暑気払いには佐賀春平さんが駆けつけてくださり、楽しいひとときに話の花を咲かせました。皆様ありがとうございました。

 第七巻では、日の出神が、世界各地に国魂を定める物語が始まります。中国・大台ヶ原に大事忍男神を国魂としたのを始め、天教山で木花姫命の教示を受けて、オーストラリアからインドに立ち寄り、アフリカを南から北へ縦断します。

 今回各地の国魂に任命されるのは、かつて竜宮城で失策を犯した神司たちや、地に落ちていた神々です。オーストラリア(竜宮島)の国魂に任じられた田依彦(改め飯依彦)、熊襲の国では小島別(改め建日別)などです。みな、日の出神の導きで魂が向上し、かつて神業を妨害した時とはまったく違う神徳を得ることになります。

肥の国で八岐大蛇に使役されていた虎転別は、後に神素盞嗚大神の御子・豊国別であることがわかります(豊の国の守護となる)。元豊の国の酋長で、筑紫の守護に任命された八十熊彦(改め白日別)は、国治立命の御子・高照彦でした。ただし、冒頭大台ヶ原に鎮められた大事忍男神だけは、御正体が明かされていません。深い御神慮あってのことかと思います。

最後に、筑紫の国でウラル教の宣伝をしていた、かつての常世城の使臣・蚊取別が日の出神の導きで、三五教に改心します。蚊取別ははげ頭の年の行った醜男で、おっちょこちょいと何の取り柄もないのですが、北光神のはからいで、祝姫と結婚します。

そして、後に生き神となる、と語られます。七巻の最終章では、北光神、祝姫、蚊取別の三人が天使たちによって四十八の宝座に導かれ、現・幽・神三界の実況を啓示されるという、神秘的な場面で幕を閉じています。

★ 拝読箇所で気のついたこと
霊主体従 未の巻
第四篇 鬼門より竜宮へ

第22章 竜宮の宝(322)

  • 日の出神は、飯依彦に竜宮島の国魂・真澄姫の鎮祭を命じた。そして面那芸、天久比奢母智、国久比奢母智を伴い、西南指して船出していった。

  • 飯依彦は埠頭に立って、白扇を開いて船を見送る歌を歌った。飯依彦はかつて田依彦と呼ばれていたときとは違い、真澄姫神の神徳に感じて身魂は向上し、優長な歌で日の出神一行を送った。

  • 久々司はまた見送りの歌を歌い、久木司は面白く踊り狂って一行を送った。

  • 沖へ出ると、船頭はこのあたりは竜宮の大海原で、宝が海の底に眠っている、と歌を歌った。

  • 日の出神が問いただすと、船から海底の宝が見えるのだが、恐ろしい竜神が宝を守っているのだという。このあたりの魚介類は金や銀の色をしているが、一匹でも取ると竜神の怒りを買って、海が荒れる。また、歌なら歌ってもよいが、大きな声で話をしたりすると、やはり竜神の怒りに触れる、とのことであった。

  • それを聞いた日の出神は竜神に向かって名乗ると、宝を見せてくれないか、と頼みかけた。すると海面には数限りない宝珠・宝玉が浮かび出た。

  • 日の出神が「もうよい」と言うと宝はまたしても海底に沈んでいった。船中の人々は手を打ってその美観を褒め称えた。

  • 第23章 色良い男(323)

  • 竜宮の海域を出ると、船頭は船客たちに会話を許可した。

  • 船客たちは馬鹿話を始めたが、そのうちに風が変わって船は筑紫の洲へと流されることになってしまった。

  • 第五篇 阿弗利加
    第24章 筑紫上陸(324)

  • 日の出神は、純世姫神が鎮まる筑紫の島に上陸して宝を探る楽しさを歌った。

  • 船中の客たちがまたしても馬鹿話をしている間に、日の出神は面那芸、祝姫を連れて筑紫の島に上陸した。

  • 第25章 建日別(325)

  • 三人の宣伝使は、阿弗利加の絶景に足を止めて景色を眺めていた。面那芸は谷底になにやら唸り声を聞いて、日の出神に注意を呼びかけた。

  • 日の出神は奇妙な声を目当てに進んでいく。面那芸と祝姫は後からついていく。やや歩いていくと、大岩石が谷間に屹立し、巨大な岩窟があちこちにうがたれた場所があった。

  • そこには顔の黒い男たちが、一人の青白い眼の悪い男を取り巻いて、しきりに脅しをかけている。黒い男たちは、ここは大自在天・常世神王の家来・荒熊別の領分であるとし、三五教の宣伝をした廉で、青白い男を罪に問うていた。

  • 青白い男は負けずに宣伝歌を歌いだす。その声に周りを取り巻いていた黒い男たちはたまらず、大地にかぶりつく。そこへまた、森林の中から宣伝歌が聞こえてきた。

  • 第26章 アオウエイ(326)

  • 黒い男たちに責められていた青白い男は、元竜宮城の司であった小島別であった。今は三五教の宣伝使となっていたのである。

  • 小島別は宣伝歌に苦しむ男たちに、大喝一声『赦す』とかけると、男たちの頭痛はぴたりと止まった。黒い男たちは大地に両手を突いて謝罪の意を表した。

  • 小島別は諄々として三五教の教理を説きはじめた。男たちは感に打たれて小島別の説教を聞いている。すると、岩窟の奥から何ともいえぬうめき声が聞こえてきた。

  • 岩窟の中から白い怪しげな影がぼんやりと現れ、不思議な声で、ここは八頭八尾の大蛇の隠れ家であるぞ、と怒鳴りたてた。

  • 小島別は単身、言霊でこの声に立ち向かった。岩窟の声は、八岐大蛇の大棟梁・蛇々雲彦と名乗った。小島別は一歩もひかず、勇ましく邪神の声に切り返す。

  • しかし邪神の声は案に相違して、小島別が竜宮城時代に四天使の邪魔をして、国祖の神業を妨害した行いをあげつらい、非難を始めた。小島別ははっと胸を打たれて思案に暮れてしまった。

  • 第27章 蓄音器(327)

  • 小島別はこれは邪神の声でないと悟り、岩窟の神の御名を問うた。しかし岩窟の声はますます小島別を譴責する。

  • 小島別はしきりに赦しを懇願するが、神の声はますます激烈になる。最後に岩窟は百雷の一時にとどろくような大音響を立てて唸り始め、小島別は驚いて大地にぺたりと倒れこんだ。

  • 第28章 不思議の窟(328)

  • 強烈になる岩窟の唸り声に、小島別はほとんど失神状態で、大地に仰向けに倒れて震えていた。

  • 日の出神は合図すると、祝姫と面那芸が現れた。三柱の宣伝使は岩窟の前に現れると、面那芸は石を持って拍子をとり、祝姫は白扇を手に広げて舞い始めた。

  • 祝姫が岩窟の神を鎮める歌を歌うと、大音響はぴたりと止まった。すると小島別はむっくと起き上がり、三柱の宣伝使の姿を見て驚いた様子であった。

  • 日の出神は小島別に、さいぜんの岩窟の唸り声はどうしたことかと問いかけた。

  • 小島別は語って曰く、一ヶ月ほど前に阿弗利加に渡り、立派な岩窟の噂を聞いて参拝に来たが、常世神王を奉じる人間ばかりなので、三五教の宣伝歌を始めたところ、参拝者たちに迫害を受けた。そうしたところ、岩窟の奥から不思議の姿が現れて自分の弱点を並べ立てられてきつく油を絞られたのだ、と概略を語った。

  • 日の出神は厳然として、ここは尊い神様の隠れ家で、建日別という仮の御神名をお持ちだが、本当の御神名は時が来れば明らかになるであろう、と述べた。

  • そして小島別に、この岩窟の前に純世姫命の御魂を祭って熊襲の国の人民を守るように任命した。小島別はこれより、岩窟の神の名を取って建日別と名乗り、日の出神の任を受けることになった。

  • 日の出神は満足の色を表し、三柱の宣伝使は谷間を登って進んでいった。

  • 第六篇 肥の国へ
    第29章 山上の眺(329)

  • 日の出神は、こんな未開の筑紫の島まで曲津神が眷属を遣わして勢力を張っている様を慨嘆した。北の方に五色の煙が立つのを見つけた。

  • 面名芸の神は、あまり進んでいくと船が出てしまう、と心配するが、日の出神はまた次の船に乗ればよい、これも神様のご都合であろう、と諭した。そして建日向別の守る、肥の国に向かって進んでいくことにした。

  • 三柱は人里近くで、住民たちが重い石を担がされて、普請をさせられているのを見た。

  • 三柱は宣伝歌を歌いながら谷間を下っていく。

  • 第30章 天狗の親玉(330

  • 谷底には石出しをする人夫たちがあった。馬鹿話のうちに、喧嘩が始まった。

  • そこへ日の出神一行がやってきて、何のために石を切り出しているのか、問いかけた。人夫たちは、八島別が肥の国の都にお出でになり、城を築くのだ、と答えた。

  • 日の出神は人夫たちに肥の国へ案内してくれ、と願い出た。人夫たちは日の出神の言霊の威厳に感じて、先にたって坂道を肥の国の都へ案内する。

  • 第31章 虎転別(331)

  • 肥の国の都では、八島別の居城に数万の群集が押しかけた。群衆を扇動する虎転別という大男は、八島別と談判に来たと言って、門を開けさせ城の中に押し入った。

  • しかし城の中では四五人の絶世の美人が虎転別を出迎え、美酒で酔わせてぐにゃぐにゃにしてしまった。

  • すると虎転別はどら声を張り上げて、自分の悪巧みをすっかり歌い明かし始めた。

  •  ここは常世神王の家来・虎転別の領分である。

  •  天教山から肥の国を侵しに来た八島別をやっつけるため、国人を欺いて八島別の命令だといって城を築かせているのは自分だ。

  •  その城に籠もって八島別をやっつけるのだ。

  •  自分は金毛九尾の眷属である、頭の白い古狐だ、と自分から白状してしまった。

  • 第32章 水晶玉(332)

  • 日の出神が人夫たちに案内されて、肥の国の都に来てみると、八島別の館は群集に包囲されていた。

  • 日の出神は人夫たちの道案内をねぎらい、水晶玉の宝を三人に上げようとした。この水晶玉を持っていれば世界のことはなんでもわかり、病人も全快し死者もよみがえる宝である、という。

  • すると一人が、これを見せびらかして威張ってやろう、というので、日の出神はこの宝は威張ると消えてしまう、と気をつけた。

  • すると人夫たちは、三人が同じ宝をもらってもしようがない、一人に水晶玉を、後の二人には隠れ蓑と隠れ笠をください、という。

  • 日の出神が、隠れ蓑と隠れ笠で何をするのだ、と問うと、姿を隠して八島別の館に忍び込み、首を取って虎転別に差し出し、褒美をもらうのだ、という。

  • 日の出神は、これから自分は虎転別をこらしめに行くのだ、そんな心根なら水晶玉も返せ、と叱り付ける。人夫の甲は改心するから水晶玉を賜りたい、と懇願した。

  • 日の出神は心をまっすぐに持て、と諭して、八島別の館を指して進んでいく。

  • 第七篇 日の出神
    第33章 回顧(333)

  • 月日の駒は矢のごとく速く過ぎ、瑞霊に縁の深い、壬戌の正月五日となった。

  • 思えば去年の今日は、大阪でわざひとに導かれて暗い根の国の門を潜った。大正日々新聞副社長・高木鉄男氏が門前に送って来てはくれたが、月は西天に輝けども、心は曇り、牢獄の中に囚われた、思い出深い夕べであった。

  • 神の恵みの幸いに、神世の物語を説き始めて、外山、谷口、桜井、加藤の四人の御子に筆を揮わせてつづっていく。心の駒ははやるがなかなか進まない口車、ようやくここに三百三十三節を説き明かす。

  • 秋の最中に筆を取って、今は心も清い白雪が一面の銀世界、すべての枉を清めている。錦水亭の奥深くに悩みの身を横たえて、世人のために言挙げるのは、日の出神のご活動である。

  • 日出づる国の礎を永遠に建てて神の教えを敷き、熊襲の国人たちに光まばゆい水晶の三つの御魂を与えたという、実にめでたい物語である。

  • 花咲く春の三月三日、菖蒲も薫る五月の空には、いつかは胸の闇も晴れるであろう。黒白も分からぬ闇の夜が、光となるのは苦しいことだ。証となるのは尊いことだ。

  • 夢か現か、夢ならばいつかは醒めよと、現身のこの世を思う赤心が朱に染めなす紅葉のように、往事を極めようと先を争ってくる人の魂の証と、教え子が先を争い筆を取る、神の守護もいや深い霊界物語。

  • 語りつくせぬ言霊が清いのは、神の心である。この神心よ、世人の心よ、片時でも鏡に映れよ。真澄の空は行く雲の定めなき、昨日に変わる今日の雪。神を力に教えを杖に、身は高砂の尉と姥、尉と姥との御教えを末永く守れよ。

  • 三千年がその間、守り育てた園の桃を、天津御神に奉る。神の化身の西王母が心の花の開く時、心の花の香る時。世を思う心が胸に満ち、三千年の神の教えを開く今日である。

  • 第34章 時の氏神(334)

  • 日の出神は二人の宣伝使を伴って、数万の群集を押し分けて進んでいく。人々は、日の出神の姿がみすぼらしいのに引き換え、その声に威厳がある様を見て噂をしあっている。

  • 日の出神が八島別の館の門前で名乗ると、門番はすぐさま門を開け、日の出神に助けを乞うた。中では酔っ払った虎転別が大暴れしてたいへんなことになっている、という。

  • 八尋殿の中央に、虎転別は真っ裸となって胡坐をかき、仁王のように拳を振り上げていた。そこへ日の出神が鎮魂の姿勢を取ってウンと一声叫ぶと、虎転別は木像のように身体硬直してしまった。

  • 八島別は奥から乱れた髪を直しながら出てきて、日の出神に挨拶した。日の出神は硬直した虎転別を見て、立派な木像だ、とからかっている。

  • 八島別は、同じく硬直している虎転別の部下たちとともに、木像を壊すなり砕くなり、何なりとしてください、とまたからかう。

  • 涙を流し始めた虎転別に、日の出神は諸刃の剣を抜いて目の前に突きつけた。

  • 第35章 木像に説教(335)

  • 日の出神は、木像の眼をくりぬいてやろう、というと、虎転別は目玉を回転させはじめた。また日の出神は祝詞を唱えて宣伝歌を歌うと、木像の虎転別は、両眼から涙を滝のように流し始めた。

  • 日の出神は虎転別に、本心に立ち返り悔改めるよう諭す歌を歌った。虎転別はますます涙をこぼした。日の出神は数歌を歌うと、たちまち虎転別は元の自由の体に戻った。

  • たちまち虎転別は日の出神に飛びかかろうとしたが、その刹那、再び身体は強直してまたしても木像のようになってしまった。

  • 日の出神が数歌を歌うと、またもとの自由の体に戻った。ついに虎転別は降参し、改心を申し入れることになった。

  • 第36章 豊日別(336)

  • 日の出神と八島別は、虎転別の改心を喜んだ。虎転別は日の出神に許しを乞い、受け入れられると、館を取り巻く群衆のところへ走って行き、悪を放して善に返れ、と呼ばわった。

  • 群集は拍子抜けしておのおの家路に帰って行った。八島別は純世姫の神霊を祀り、肥の国の守護神・建日向別となった。虎転別は後に豊の国の守護職・豊日別になる。

  • 第37章 老利留油(336)

  • 日の出神は面那芸、祝姫、豊日別(虎転別)を引き連れて、霧島の山の上から景色を打ち眺めていた。面那芸宣使は、豊日別が治めるべき豊の国を指し示した。そこは一面の大砂漠であった。

  • 面那芸は、大砂漠に草木を植えて五穀を実らせるのが、豊日別の役目である、と伝えた。

  • どうやて砂漠に草木を繁茂させようか、という豊日別に対して、日の出神は豊日別の頭に毛が生えたら砂漠にも草木が生えるだろう、ただし非常な辛い目にあわなければならない、と言った。

  • 豊日別は、天下のためなら痛い目も構いません、と言うと、日の出神は傍らの樹木の中から、青々とした木の枝を握って帰って来た。そして、木の枝を絞って油を取ると、豊日別の頭を荒砂でこすり始めた。

  • 豊日別は痛さを必死でこらえている。日の出神はそこへ、今絞った油を豊日別の頭に塗りつけた。豊日別は涙をこぼして気張り、頭を抑えて目をふさぎ、息をつめてこらえている。

  • しばらくしてようやく痛みが止まった。日の出神は、人間は一度は大峠を越さなければならぬ、それはずいぶんと苦しいものだ、と諭した。

  • 豊日別が頭をなでると、はげ頭には毛が生えていた。豊日別は飛び上がって喜ぶ。これは老利留という木の油であった。

  • 豊日別ははげ頭に毛が生えた喜びに、勢いよくどんどんと峠を下り行く。四人の宣伝歌は谷々に響き渡った。

  • 第38章 雲天焼(338)

  • 谷川の傍らに腰かけ、そま人たちが肥の国で群集が八島別の館を取り囲んだ事件の噂を語り合っていた。

  • そこへ宣伝歌が聞こえてくる。そま人たちは頭を抱えて道に横たわり、ぶるぶる震えていた。一人の勝れて大きな男は、泰然自若として宣伝歌を愉快げに聞いている。

  • 日の出神は、この大男のそま人に声をかけた。大男は熊と名乗った。熊は豊の国の貧しさと惨状を述べて、宣伝使たちを追い返そうとする。

  • 豊日別はどうしても豊の国へ案内せよ、と言い、熊は仕方なく宣伝使を都へ導き行く。

  • 第39章 駱駝隊(339)

  • 熊公は大砂漠を越えるために、数十頭の駱駝を連れてきた。一向は駱駝に乗って豊の国の都に着いた。

  • 都では、熊公の帰還を群集が声をそろえて祝した。実は熊公は、八十熊別という豊の国の大酋長であった。

  • 八十熊別は神通力で日の出神が筑紫洲にやってきて、豊の国に来ることを前知し、砂漠の難を救うべく駱駝を引き連れて、そま人の格好をして霧島山麓まで出迎えていたのであった。

  • 都の群集は酋長・八十熊別が連れてきた客人たちを見て、いろいろ話しに花を咲かせている。

  • 宣伝使たちが招き入れられた八十熊別の館には、天を衝いて五色の雲が立ち昇った。群集はあっと驚いてその場に合掌するのみであった。

  • 第八篇 一身四面
    第40章 三人奇遇(340)

  • 日の出神は、自分は神伊弉諾大神の落胤である、と名乗った。

  • 世の大立替に際して撞の大神は天の浮橋に立ち、その後天教山に下って八百万の国魂の神を生ませ給い、日の出神に命じて国魂神を間配られ給うのである、と説いた。そして、今後は自分の指示に従ってもらいたい、と八十熊別に諭した。

  • 八十熊別は日の出神の説示を承知し、自分は国治立命の落胤で、高照彦であると正体を明かした。

  • 高照彦は国祖御退隠の後は、八十熊別と名を変えて、阿弗利加の原野に都を造って時節を待っていたのだ、と明かし、日の出神に出会えた嬉しさに涙をこぼした。

  • 日の出神はこのような地にも仕組みを用意していた神様の経綸に思いを致した。

  • 豊日別は立ち上がり、扇を開いて松葉を左手に持ちながら、自ら歌い舞った。その歌で、自分は醜の曲霊に取り憑かれて虎転別と成り果ててはいたが、神素盞嗚大神の隠し給うた御子・豊国別神であることが明かした。

  • 日の出神、高照彦はこの奇遇に神恩の深きを感謝し、国治立大神、豊国姫大神、伊弉諾大神、撞の御柱大神を鎮祭し、天津祝詞を奏上して宴を閉じた。

  • 日の出神は、澄世姫命の神霊を鎮祭し、豊日別を豊の国の守護職に任命した。日の出神は高照彦、面那芸、祝姫とともに筑紫を指して進んでいった。

  • この島は身一つに面四つあり、豊国、肥国、熊襲国、筑紫国という。この四つの国を総称して、筑紫の洲という。

  • 第41章 枯木の花(341)

  • 旅の途上、宣伝使たちは路傍の石に腰を掛けて、回顧談にふけっている。

  • 高照彦は、父神・国治立命の勘気をこうむって阿弗利加に退去を命じられ、大洪水後に再び大砂漠を拓いた物語を語った。

  • そして、父神・伊弉諾大神の苦労をしのび、日の出神に出会えた喜びと共に、大神様に尽くさなければならないという思いを新たにした。

  • 第42章 分水嶺(342)

  • 高照彦の苦労談を聞いて、面那芸は、白雪郷に残してきた女房が恋しい、といったことに悩んでいた自分を恥じ、宣伝使としての役目に決意を新たに表した。

  • 日の出神は面那芸の覚悟に満足の意を表し、今というこの瞬間は善悪の分水嶺であると諭した。

  • 一同が勢いよく駆け出すと、おりしも轟然とした大音響が聞こえた。日の出神は、エトナ山の火山が爆発したのだ、と言った。タコマ山の祭典以来、突然爆発したのは、天の警告であろう、と気をつけた。

  • 高照彦が心構えを尋ねると、日の出神は神言を奏上さえすればいい、と答えた。四人の宣伝使は道々いろいろの話を進ませながら、大野原に出た。すると南方に、白日別司の館が見えた。

  • 第43章 神の国(343)

  • 日も沈むころ、筑紫の都の町外れでは、ウラル教の宣伝使が住民たちに囲まれていた。

  • ウラル教の宣伝使は、元常世城の使臣・蚊取別であった。住民たちは、三五教の教えを守る筑紫の国でウラル教の宣伝をするとはけしからぬと、蚊取別を責め立てる。

  • 蚊取別は責められて歌に自分の履歴を歌った。住民たちは面白がってなおも蚊取別を責め立てる。

  • すると闇の中から宣伝歌が聞こえてきた。

  • 第44章 福辺面(344)

  • 一同は突然聞こえた宣伝歌に肝をつぶしている。蚊取別がこのすきに逃げようとするのをまた住民たちに捕まり、腰の酒の入ったひょうたんを割られて酒びたしになってしまった。

  • するとまた闇の中に宣伝歌が聞こえ、酒は常世の国の少彦名神様が醸した神酒なので、少しはほどほどに飲めよ、と諭す。蚊取別はこの宣伝歌に、ウラル教の加勢が来たと勘違いして、勢いづいた。

  • 住民たちは恐れをなして逃げてしまった。後には、蚊取別は一人威張り散らしている。

  • そこへまた面那芸の宣伝歌が聞こえてきた。蚊取別はこの歌を聞いてにわかに醒め、頭を抱えてしゃがみこんでしまった。

  • 第45章 酒魂(345)

  • 日の出神は蚊取別に語りかけた。蚊取別は三五教の宣伝使と聞いて、逃げ出そうとする。

  • 日の出神は蚊取別を引き止めて、実は三五教は民には飲むな、といっておいて自分が飲む教えなのだ、と説示する。蚊取別は、それは本当にようわかった神様ですな、と感心している。

  • 日の出神の共の三宣伝使は、日の出神の言いように合点がゆかず、怪訝な顔をしている。

  • 丑三つ時になると、日の出神は何事か祈願を始めた。すると、あたりを照らす鏡のような火の玉が降り、光の甕となって芳しき酒を湛えた。

  • 日の出神は酒を飲もうとする蚊取別の体を霊縛したため、蚊取別は飲もうとしても飲めない状態になった。そのうちに蚊取別の口から焼け石が三個飛び出して甕の中に落ちた。とたんに甕は消えうせた。

  • これ以降蚊取別は酒がすっかり嫌いになってしまい、三五教を信じることとなった。蚊取別は後に面那芸司の供となって諸方を遍歴し、生き神になることになる。

  • 第46章 白日別(346)

  • 夜明けになって、日の出神一向は、筑紫の司・白日別の館の門を叩いた。一行には、ウラル教の酒のひょうたんを下げた、おかしな格好の蚊取別が従っている。

  • しかし呼べども白日別の館からは何の返事もない。日の出神は、蚊取別に、塀を飛び越して門を開けよ、と命じた。

  • 不審がる蚊取別に対して、日の出神は蚊取別が下げているひょうたんから酒をすべて抜いてしまい、息を吹き込んだ。するとひょうたんは風船のように浮き上がり、蚊取別の体も宙に浮くほどになった。

  • 蚊取別は邸内に入るとひょうたんを一度に破いたものだから、屋敷の中にドスンと落ちて、腰を抜かしてしまった。面那芸司は仕方なく、ひらりと塀を乗り越えて門を開けた。

  • 一行は開いた門から奥へと進んで行く。腰を抜かした蚊取別は宣伝使たちに助けを呼んでいる。

  • 祝姫が憐れをもよおして蚊取別を抱き起こそうとすると、蚊取別は祝姫を口説き始めた。祝姫はあきれて蚊取別のはげ頭をぴしゃりと叩いて先へ駆けて行く。

  • 邸内はよく整えられていたが、人っ子ひとりなかった。奥殿には筑紫の国魂である純世姫の御魂が鎮祭されている。日の出神は書置きを見つけた。

  • その書置きによると、筑紫の大酋長・白日別は霊夢に国治立命の御子と神伊弉諾命の御子が降ることを知り、一族を引き連れて高砂島に渡ったという。そして高照彦に筑紫の守護職を譲る旨がしたためられていた。

  • 日の出神はこの書置きに従い、高照彦を白日別と改め、筑紫の守護職に任じた。日の出神は常世の国へ、面那芸司は天教山へ、祝姫は黄金山に向かうこととし、三柱はここに袂を分かった。

  • 第47章 鯉の一跳(347)

  • 瀬戸の海を東南指して進む船中、ある夜に宣伝歌を歌う者がある。尊き神の恩徳に思いを致せ、というこの歌に、船客たちは耳を傾ける。

  • また船の一隅から女宣伝使は、先に宣伝歌を歌った宣伝使に対して、歌で名を問いかけた。

  • するとまた船の中ほどから頭の光った男が立ち上がり、しわがれ声を振り絞って歌うのは、蚊取別が祝姫宣伝使への思いのたけを歌う恋歌であった。

  • 祝姫は蚊取別のこの歌に恥ずかしいやらもどかしいやら、船底にかじりついて息を潜めていた。

  • 第九篇 小波丸
    第48章 悲喜交々(348

  • 祝姫に名を問いかけられた宣伝使は、北光神であった。北光神はなんと、祝姫に対して、蚊取別の思いを聞き入れて結婚せよ、と歌い返した。

  • 祝姫は何よりも忌み嫌う蚊取別の恋慕を迷惑に思っていたので、北光神が蚊取別の思いをかなえることが、世を救う宣伝使の役目だ、と聞かされて倒れんばかりに驚いた。

  • 祝姫は船中に悩み苦しみつつあったが、宣伝使となって立派な功名を立てようという名誉心のために、数多あった縁談をすべて断ってきた自らの行為に思いを致し、これも吾が身の報いと決心した。

  • そして、北光神、蚊取別に対して、蚊取別と夫婦の契りを結ぶことを承諾する歌を返した。

  • 後に、祝姫は蚊取別によく仕え、また夫婦東西に分かれて神の教えを宣伝することになる。天の岩戸の変において偉勲をたてた雲依彦とは、蚊取別の後身である。太玉姫は、祝姫の後身である。

  • 第49章 乗り直せ(349)

  • 船は、竜宮の一つ島の近くにやって来た。向こうから来る船のへさきにも、被面布をかけた宣伝使がたっている。

  • 北光神は、やってくる船の宣伝使に歌で名を問いかけた。これは広道別であった。これから阿弗利加の熊襲の国に渡って、曲霊を言向け和すという。二人はすれ違いに、被面布を取って互いの安全を祝した。

  • 船中の客たちは、かつてここにシオン山という高い山があったが、大洪水の際に地の底に沈んでしまい、竜宮海と瀬戸の海が一つになったのだ、と昔話をしている。

  • かつて稚桜姫命が竜宮城を治めていた時代の話に花を咲かせた。甲は、善と悪とが立て別けられたのは大洪水以前の話だ、と三五教の教えを一笑に付している。

  • すると船の中から宣伝歌を歌う者がある。甲は頭痛がしだした。そして宣伝使に向かって悪態をつく。するとまた別の宣伝使が宣伝歌を歌いだした。

  • 甲は船が岸に着くや否や、船を飛び出して姿を隠してしまった。

  • 第50章 三五○「○にツキのルビあり:掲載者加筆」(350)

  • どうしたはずみか、竜宮城の海面に指しかかった船は、エルサレムに着かず、方向違いの岸に着いた。そこには不思議にも、月照彦神、足真彦、少名彦、祝部、弘子彦の五柱の神がずらりと立っていた。そして、北光神、祝姫、蚊取別を差し招いた。

  • 五柱の神司はものも言わずにどんどんと岩山を登っていく。後を追う三人は何心なく汗を流して付いて行く。五柱はときどき後を振り向いて三人を手招きする。

  • 登ってみると、そこには大小四十八個の宝座が設けられている。そして、種々の立派な男神・女神が鎮座して、苦集滅道・道法礼節を説示していた。

  • 五柱の神は、三人をいちいち宝座に案内し、現・幽・神三界の実況を鏡のように写して見せた。

  • 蚊取別は、素晴らしい女房を得た上に、三千世界の有様を写して見せてもらった嬉しさに、踊り狂って千丈の岩の上から岩と一緒にグワラグワラと谷底へ落ち、ひっくり返ってしまった。

  • その物音に驚いて目を開くと、口述者瑞月の身は、高熊山の蟇岩のふもとの松に、背を当てて座っていたのであった。

  • 以上     [前回レポート] [次回レポート]


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