とよたま愛読会132回
    「
霊主体従 8巻 序文 〜 20」     [前回レポート] [次回レポート]
     記:望月幹巳 メール:motomi@moon.nifty.jp


日 時  平成19年9月23(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
      連絡先 03-3321-3896、  03-3321-8644
      
参加費は無料です。事前のお申し込みも不要です。霊界物語をお持ちでない方もご参加できます。
物 語   霊主体従 8巻(未の巻) 序文 〜 20章:張子の寅

★ 報告
 前回の拝読会は五名の参加で行われました。
第八巻は日の出神が高砂洲へ渡っての宣伝の旅が始まります。
物語の中心は、かつて常世彦や大自在天の部下として、地の高天原の神業を妨害した邪神たちが、三五教の教えに改心をして宣伝使となって働く様子が語られています。

 今回登場した神司たちは、
<清彦>:元の名は清熊。清熊は竜宮城の司神であったが、利欲に深い神で、鬼城山の美山彦・国照姫の元に走ります。
鬼城山は常世姫の影響下に入って竜宮城と激しく戦いました。
本巻では筑紫洲で日の出神に出会ったことで三五教に改心した宣伝使としてまず登場します。
その改心の念は深く、日の出神の代理としてその権能を託されるまでに身魂が向上し、智利の国の国司となり、紅葉別命と改名します。

<猿世彦>:元・鬼城山配下の邪神でした。
言霊別命が常世城から密かに脱出して行方をくらましたとき、常世姫の命令で言霊別命を捜索しますが、スペリオル湖で逆に元照別(言霊別命の実弟)に捉えられ、凍ったスペリオル湖に投げ入れられて木乃伊にされてしまいます。
言霊別命に蘇生してもらって命を助けられ、ほうほうの体で常世城に逃げ帰ったことを、未だに仲間に責められています。清熊(清彦)の改心に触発され、ひたすら神を祈る熱心さにより、教理にも祭式にも明るくない猿世彦は、月照彦命(大八洲彦命の後身)の守護を受けて、三五教の宣伝使としてアリナの滝の聖人となり、狭依彦と名を改めます。

<駒山彦>:同じく元・鬼城山の配下でした。
清熊の改心に触発されて、猿世彦と分かれて高砂洲の宣伝に向かいます。

<淤縢山津見>:元・大自在天の宰相・醜国別です。
醜国別については、大自在天の配下として常世会議に列席した、という記述しかありません。
本巻では、かつて聖地の宮を破壊した罪で帰幽したと過去が語られていますが、その経緯はこれまでの巻には述べられていませんでした。
国治立大神に救われて海底竜宮城の門番となり、長い間辛い仕事を勤め上げた後、日の出神の供となって高砂洲の宣伝を行います。

<正鹿山津見>:桃上彦の後身です。
桃上彦といえば、四天使が地の高天原の役職を退去した後、天使長となりますが、聖地をかえって混乱に落としいれ、国祖ご退隠の遠因を作ります。
大曲津神とまで呼ばれた神です。
根底の国に落ち行く際に、高照姫命(金勝要神の和魂)に救われて、淤縢山津見と供に海底竜宮城の門番として長く使えていました。
同じく日の出神によって竜宮城の門番職から解き放たれ、宣伝使となります。

<蚊ヶ虎>:元・大自在天の部下で、醜国別の部下であったと言います。
智利の都で清彦の過去の悪行を暴いて三五教の教会を混乱に陥れますが、かつての上司・淤縢山津見に付いて、なぜか日の出神の供となります。
滑稽諧謔で宣伝使たちも大自在天の部下たちも煙に巻いてしまい、善とも悪とも捉え難い神司として描かれています。しかし後に、ある高貴な神の化身であることが明かされます。

 もうひとつ注目すべき話題として、淤縢山津見・正鹿山津見が門番を務めていた、海底竜宮城です。
日の出神は配下の面那芸司を救出するために海底竜宮城に向かうのですが、そこには黄泉国へ退去したと言われていた、神伊弉冊命が八種の雷神によってさいなまれていました。

 神伊弉冊命が黄泉国へ退去した理由としては、邪神の荒びの激しさに驚いたため、と語られていましたが、ここでは黄泉国へ降って来た神伊弉冊命は、黄泉国の穢れを海底竜宮城に集めて浄化する神業に携わっていたことが明らかになります。

 しかしその神業の途上で、八種の雷神に苛まれてしまいます。日の出神の来城を契機として海底竜宮城の主・乙米姫が神伊弉冊命の身代わりとなります。
これによって、神伊弉冊命は解放され、日の出神らによってロッキー山に送られた、とあります。

 神伊弉冊命が黄泉国へ退去した理由、黄泉国でのお働き、海底竜宮城でのご活動、またロッキー山退去後の動静など、曖昧にしか物語には語られておらず、詳細は明かされていません。
それだけ重要なご活動をされていた(いる)のであると思われます。

★ 拝読箇所で気のついたこと
霊主体従 未の巻
序文

  • この霊界物語は、全部で五百六十七節で完成しようと、一冊を五十節、全十二冊の予定であった。

  • しかしこれでは到底一部分も述べきれないことを覚り、本巻からは一冊五十章組みの規定を破り、行き突きばったりに進むこととなった。

  • この物語は、現・神・幽三界に渉った神人の活動の一部を、神示のままに述べたもので、今日の人々の耳には入りがたく受け取れない点もたくさんあるであろう。

  • 各国の神話を取り入れず、神話から漏れた部分を取り入れている。夢物語と取ってもらってもよいが、読めば読むほど面白く、また精神上に一つの光明を認めうることと信じる次第である。

  • 総説

  • 第一次大本事件の三日前の夜半、松雲閣に横臥する瑞月の枕元に、忽然として教祖のご神影が現れた。そして指示桿をもって、畳を三四回打ちたもうた。

  • 馬に鞭打つごときその御模様に、瑞月は直ちに起き上がって、いよいよ明日から神界の御命のごとく、霊界物語の口述に着手いたします、と申し上げた。

  • すると教祖は打ちうなづき、莞爾として神姿を隠したのである。それより、いよいよ昨年十月十八日から着手することとなりましたが、教祖のご加護により、第八巻を口述し終わることができた。

  • 読者の中には、霊界物語は教祖のご意思に反した著述であると誤解されている方々もあるように聞いている。その誤りを説くために、総説に代えてここに本書出版が教祖の神のご神慮より出た理由を簡単に説明したのである。

  • 第一篇 智利の都
    第一章 朝日丸(351)

  • 天下の絶景の海を、筑紫から智利の国に向かう船の中で、猿世彦と駒山彦が、来し方を思い互いに相手の失敗をなじりあっていた。猿世彦、駒山彦は常世彦の部下として、大八洲彦命や言霊別命ら天使の神業を邪魔して竜宮城と戦った邪神であった。

  • 猿世彦はスペリオル湖で元照別に捉えられ、凍える湖に投げ入れられて木乃伊となり、言霊別命に助けられて方法の体で逃げ帰った過去を、駒山彦らにからかわれている。

  • 船中の女客が、猿世彦・駒山彦の連れの宣伝使に、三五教の教えを説いてくれ、と頼みかけた。

  • 連れの宣伝使は清彦(清熊)であった。清彦はかつて鬼城山で駒山彦らの仲間として悪事を働いていたが、どうしたわけか三五教の宣伝使となっていたのである。

  • 猿世彦は清彦の昔の悪事を上げたてて、宣伝の邪魔をする。清彦はそれを笑い飛ばして猿世彦の昔の失敗をなじる。

  • かくして雑談のうちに、船中の夜はふけて行った。

  • 第二章 五十韻(352)

  • 同じ船に乗っていた日の出神は、雑談をそ知らぬふりに聞き流していた。自称宣伝使・清彦は諄々として三五教の宣伝歌を歌い始めた。

  • 駒山彦と猿世彦は、それに対してウラル教の宣伝歌を歌ってまぜっかえす。どういうわけか船中の人々は、三五教の教えを聞きたがって、清彦の肩を持って説教を求める。

  • 清彦は知らぬものはない、と大法螺を吹くが、猿世彦が茶々を入れる。清彦が猿世彦・駒山彦を罵り返すと、猿世彦・駒山彦は怒って清彦に飛びかかった。

  • 清彦は一度だけ反撃するが、その後は猿世彦・駒山彦を罵りながらも、殴られる一方になっている。

  • 第三章 身魂相応(353)

  • 猿世彦と駒山彦は、清彦が立て板に水でしゃべり続けるのに感心して、手を放し、ひとつ宣伝を聞かせてくれ、と頼んだ。

  • 清彦は、頓珍漢な説教を猿世彦・駒山彦に聞かせている。しまいに駒山彦は清彦を怒鳴りつける。先客はおかしな問答にわっと笑いさざめく。

  • このとき船の一隅より、ひとりの神人が立って宣伝歌を歌い始めた。

  • 日の出神は、清彦が殴られながらも耐えて言霊で返していたその忍耐の真心を賞賛した。

  • 清彦は日の出神の姿を見て伏し拝み、落涙に咽んでいる。

  • 第四章 烏の妻(354)

  • 明けて、日の出神は船中の人々に対して、天地の神の徳を説き諭していた。そこへ、一天にわかに掻き曇り、ものすごい風が吹きすさんで波は山岳のごとくになった。

  • 日の出神は声を張り上げて、宣伝歌の言霊を風に向かって述べ立てた。すると嵐は忽然と静まった。

  • 船中の人々は日の出神の神徳に感じて、進んでその教理を聴聞することとなった。ここに清彦は今までの罪悪をすべて悔改め、日の出神の弟子となり、高砂洲に宣伝を試みることになった。駒山彦と猿世彦は示し合わせて、追って高砂洲に上陸することになる。

  • 船中の旅人たちの噂話に、面那芸司が船旅の途中、海に沈んでしまったことを知った日の出神は、さっと不安の色を浮かべた。

  • 第五章 三人世の元(355)

  • 日の出神は、面那芸の司を救うために急遽竜宮城に渡ることとし、智利の都への出張を見合わせる、と清彦に伝えた。そして、自分の代わりに智利の都へ入り、三五教を宣伝するように、と言い含めた。

  • 高砂洲には竜世姫神、月照彦神が守護しているので、勇んで行くように、と述べた。そして猿世彦、駒山彦も改心して神の教えに従え、と諭すと、海中に身を躍らせて飛び込んだ。

  • 船中の人々は、すわ身投げ、と驚いたが、よくよく見れば日の出神は巨大な亀の背に乗って、悠々と彼方を指して行ってしまった。

  • 清彦は、自分が日の出神の代理に指名されたことを、猿世彦・駒山彦に自慢している。三人はおかしな問答を交わしているうちに、船は智利の国の港に着いた。

  • 三人は一目散に船を飛び出して、どんどんと奥深くに進んで行く。

  • 清彦は、ここで三人分かれてそれぞれ宣伝しよう、と提案する。猿世彦は清彦を頼って、泣き言を言う。清彦は闇にまぎれて二人を置き去りにしてどこかへ行ってしまった。

  • 第六章 火の玉(356)

  • 清彦は猿世彦と駒山彦を谷間に置き去りにして、自分は谷を降って街道を闊歩していた。黄昏が近づいたところで腰を下ろし、ほっと一息ついていると、猿世彦と駒山彦が、大声で清彦を罵りながら追ってくる。

  • 清彦は、猿世彦と駒山彦が自分が鬼城山で悪事を働いていた過去を暴き立てて宣伝が上手くいかないことを心配し、思わず大声で嘆いた。

  • 猿世彦は清彦の声を聞き取り、辺りを探し始めた。

  • すると前方から闇を照らして火の玉が飛んできて、清彦の前に墜落した。すると清彦は光を発して、日の出神と少しも違わない姿となって現れた。

  • 猿世彦と駒山彦はあっと言って口をあけたままその場に倒れてしまった。

  • 第二篇 四十八文字
    第七章 蛸入道(357)

  • 闇の中に光明輝く姿を現した清彦は、絶対無限の神格備わり、眼もくらむばかりであった。猿世彦と駒山彦はしばらく息をこらしていたが、清彦の姿はばったりと消えうせた。

  • そして闇の中に大きな声が聞こえてきた。

  • その清彦の声によると、

  • 今まで八頭八尾の大蛇の霊魂にたぶらかされて悪事の限りを尽くした自分だが、三五教の大慈の教えを聞いて、吾が身が恐ろしく、恥ずかしくなった。

  • 日の出神の後を追って真人間になり、悪の改心の模範を天下に示そうと日夜、神に祈った。

  • そのお恵みで、朝日丸に乗り込んで日の出神にめぐり合い、教訓を賜って霊魂は神直日大直日に見直し聞き直され、今は日の出神のご名? 代にまでなることができた。

  • 汝ら二人も、我を手本として片時も早く悪を悔い、善に立ち返って世界の鏡を謳われて黄泉比良坂の神業に参加せよ。

  • 汝らの改心ができれば、また会うときもあろう。今は汝らが心の雲に隔てられて、自分の姿を現すことができないのが残念ではある。
     

  • そして辺りを照らす大火光となって中空に舞い上がり、智利の都を指して飛んでいった。

  • 猿世彦と駒山彦はこの様を目の当たりにして、清彦の改心に心を打たれ、曲がりなりにも宣伝使となり、せめてもの罪の贖いをしよう、ということになった。そしてそれぞれ分かれてめいめい、高砂洲の宣伝を行うことになった。

  • 猿世彦は南へ、駒山彦は北へと袂を分かった。

  • 猿世彦は、光った頭から湯気を立てて、カン声を振り絞って海辺の村々を宣伝して回った。

  • ある漁村で漁師たちが猿世彦の姿を見て、大きな蛸が歩いてくると勘違いし、蛸の親分だと思って不漁の相談を持ちかけた。

  • 猿世彦は快諾して、海に向かってカン声を絞って宣伝歌を歌い始めた。すると海面にたくさんの蛸が頭を出した。猿世彦が差し招くと、蛸たちはざるの中に数限りなく飛び込んだ。

  • このことが漁師仲間の評判となり、猿世彦は尊敬されることになった。この村はそれより、蛸取村と呼ばれるようになった。

  • 蛸取村より数十町西方に、アリナの滝という大瀑布があった。猿世彦はそこに小さな庵を結んで、この地方の人々に三五教の教理を宣伝することになった。

  • 第八章 改心祈願(358)

  • 漁師たちは猿世彦の言霊に感心して尊敬の念を払い、三五教の教理に服した。猿世彦は教理には通じていなかったため、平然として矛盾脱線の教えを語っていたが、ただ神を祈ることは一生懸命であったので、神徳を授けられたのである。

  • 朴訥な漁師たちにはあまり難しい教理を説く必要もなく、ただ豊漁を与えてもらうことをもって信仰の基礎としていた。

  • ただ村長の照彦は立派な男であったが、猿世彦の熱心な祈祷の力に感じて、猿世彦を賛美する歌を歌った。

  • かくして、猿世彦は宣伝使となって法外れの教理を説いていたが、村人たちは信仰を怠らなかった。

  • アリナの滝から数町奥に、不思議な岩窟があった。岩窟の中には直径一丈ばかりの円い池があり、清鮮な水をたたえていた。村人たちは池を鏡の池と読んでいた。

  • 猿世彦は村人たちを従えて、この鏡の池に禊身にやってきた。村長をはじめ村人たちに池の水で洗礼を施し、そして池に向かって祈願を込め始めた。

  • その祈願は、村人たちの信仰と救いへの守りを祈り、また自らの過去の罪を懺悔し、日の出神に出会ったことで改心できた感謝を捧げていた。

  • 第九章 鏡の池(359)

  • 猿世彦は鏡の池で禊をなして、狭依彦と名を改めた。狭依彦の名は遠近にとどろき、洗礼を受けに来る者や教理を聞きに来るものが次第に増えていった。

  • 狭依彦は三五教の教理は船中で聞いたに過ぎなかったので、夜昼鏡の池に祈願を込めていた。

  • あるとき黒彦という男が信者の中から現れて、質問を始めた。そして、蕎麦やらうどんやら黍の起源やらを尋ねた。狭依彦はそれに答えて、二人の滑稽な問答はどんどん脱線していく。

  • すると鏡の池の水がブクブクと泡立ち始め、竹筒を吹くような声で、二人の問答をなじり始めた。狭依彦は驚いて、池の神様に黒彦の問答の答えを伺うと、池の神様の声は、黒彦に答えを聞け、という。

  • 黒彦は得意になって、またもや言葉遊びのおかしな問答を始める。すると鏡の池の声は、お前たちの取り違いははなはだしい、と怒りの声に変わり、ほら貝のような唸り声が次第に大きくなってきた。

  • 黒彦は恐れをなして逃げてしまった。また、そこにいた過半数の信者たちも、あちこちに逃げてしまい、後に残ったのは腰を抜かした肝の小さい人間ばかりであった。

  • 狭依彦も腰を抜かしてしまい、その場に祈願をこらしていた。

  • 第十章 仮名手本(360)

  • 鏡の池の声はようやく鎮まり、狭依彦に対して、知らないことは知らないとへりくだって宣伝をするように、とたしなめた。そして、いろは歌で教えを説き始めた。

  • まずは、へりくだって理屈に走らず、生まれ赤子の心で祈れ、と狭依彦を諭した。狭依彦は神の説教に泣き言を言うが、鏡の池の声はさらに説教を続ける。

  • そして狭依彦に心底の改心を促し、自ら月照彦神であると名乗った。またこの高砂洲は金勝要大神の分霊・竜世姫神が守護する土地であると告げ、この国の司となって世界のために尽くせ、分からないことがあればまた尋ねに来い、と宣言した。

  • 狭依彦ら一同は腰が立つようになり、喜び勇んで神言を鏡の池に奏上した。

  • 第三篇 秘露より巴留へ
    第十一章 海の竜宮(361)

  • 日の出神は、面那芸の司の安否を案じて、海底の竜宮城へとやってきた。門前には、正鹿山津見、淤縢山津見の二柱の神が、仁王のように傲然として守っている。

  • 竜宮城に入ろうとする日の出神に対して、淤縢山津見は打ってかかった。しかし日の出神が乗っていた琴平別の化身の大亀が、二人の間に割って入り、千引きの岩となった。

  • 門内からはなにやら騒々しい音が聞こえてくる。日の出神は声を張り上げて名乗りの歌を歌い、自分は面那芸の司を助けるためにやってきたのだ、と明かした。

  • 日の出神と知った正鹿山津見、淤縢山津見は平身低頭して陳謝した。淤縢山津見は殿内へ日の出神来着を知らせに行き、正鹿山津見は日の出神を案内して別殿に迎えた。

  • 城内の一方には、ますます騒々しい音が聞こえてくる。日の出神はただ事ではないと、その音に聞き入っていたがふと正鹿山津見を見ると、それはかつてエルサレムの竜宮城で天使長を務めた、桃上彦であった。桃上彦はかつてエルサレムを混乱に陥れ、国祖ご退隠の遠因を作った神である。

  • 正鹿山津見は、根底の国に落ち行くところを高照姫神に救われて、正鹿山津見と名乗って竜宮城の門番を勤めている来し方を日の出神に泣く泣く語った。

  • おりしも、竜宮城内の阿鼻叫喚の声はますます激しくなり、日の出神は正鹿山津見にわけを尋ねるが、正鹿山津見は頑として答えない。

  • 日の出神はどんどん奥殿に進もうとするが、正鹿山津見はあわてて先に立ち、奥殿に姿を隠してしまった。日の出神は後に取り残されてしまった。

  • 第十二章 身代り(362)

  • そこへ淤縢山津見が現れて、日の出神に向かい、大道別命ではないか、と日の出神の旧名を呼ぶ。よく見れば、淤縢山津見は元大自在天の宰相であった、醜国別であった。

  • 醜国別はかつて、聖地エルサレムの宮を壊して神罰により、帰幽したはずであった。醜国別の淤縢山津見は、根底の国に落ち行くときに国治立大神によって救われ、海底の竜宮でその恩に報いるために門番となって勤務している身の上を語った。

  • 日の出神は奥殿への案内を淤縢山津見に促した。奥殿には、海神たちに囲まれて、美しい女神が控えていたが、日の出神を見るより座を降りて差し招いた。

  • 日の出神は堂々として高座についた。日の出神は女神に名乗りをあげ、竜宮城の騒々しい物音について女神に尋ねた。女神は、神伊弉冊命が黄泉国に出でまし、黄泉国の穢れを竜宮城に集めたもうたのだ、と今の竜宮の有様を語った。

  • 日の出神は神言を奏上した。すると辺りを照らす大火光が日の出神の身体より放射し、巨大な火の玉となって竜宮を照らし出した。

  • すると母神である神伊弉冊命が、身体を雷にさいなまれ、身辺には黄泉神の群れがたかり、目も当てられぬ惨状を呈していることが明らかになった。

  • 竜宮城の女神・乙米姫は自分が身代わりになって伊弉冊命を解放しようと、雷の群れに飛び込んだ。乙米姫の身代わりによって、伊弉冊命は雷の難を脱することができた。

  • 面那芸司は伊弉冊命を救うべく日夜必死の力を尽くしていたが及ばず、連日連夜、闘い続けるその声が、怪しい物音となって門外にあふれていたのであった。

  • 日の出神は神文を唱えて大亀を呼び、伊弉冊命を守りつつ面那芸司、淤縢山津見、正鹿山津見とともに竜宮城を脱して海面に浮き出た。そして常世の国に渡り、ロッキー山に伊弉冊命を送っていった。

  • その後海底の竜宮城は八種の雷神の荒びがすさまじく、体主霊従・弱肉強食の修羅場と化し、ついに黄泉比良坂の戦いを勃発することになる。

  • 第十三章 修羅場(363)

  • 清彦の日の出神は智利の都で宣伝に努め、都の中央の高地に広大な館を造り、国魂である竜世姫命の御魂を鎮祭した。その名声は四方にとどろき、国人は徳を慕い教えを聞くために集まってきた。

  • ある日、清彦が大広前で三五教の教理を説き始めると、末席から眼光鋭い黒い顔の男、弓のように腰が曲がり、酔っ払ってねじ鉢巻をしながら、腕をまくって高座に現れた。

  • 清彦に向かって、蚊ヶ虎と名乗るこの男は悪態をつくと、人々に向かって清彦の昔の悪事を暴きたて始めた。

  • 清彦の説教を聴きに来ていた人々は、蚊ヶ虎の暴露話に去就に迷い、あちらこちらで論争が始まり、喧嘩が始まり、収集のつかない状態になってしまった。

  • するとそこへ、涼しい宣伝歌の声が聞こえてきた。場内の騒ぎは、この声にぴたりと止んでしまった。

  • 第十四章 秘露の邂逅(364)

  • 表玄関から上がってきた声の主は、日の出神であった。日の出神は高座の前に来ると、清彦、蚊ヶ虎に挨拶した。清彦はこの騒動を日の出神に陳謝した。

  • 蚊ヶ虎は日の出神の後ろに控えた淤縢山津見を見て、かつての自分の主人であった醜国別であることを認め、急に態度を変えて手もみしながら挨拶した。

  • 清彦はまた、桃上彦が日の出神と供に現れたことに驚いて声をかけた。醜国別は一同に向かって、自分がかつて大自在天の宰相として悪事を働いたことを明かし、かつ救われて心を改め、竜宮城の門番・淤縢山津見として仕えてきたことを明かした。

  • また桃上彦も同じく改心して門番・正鹿山津見となり、日の出神にまた救われて今ここに現れたことを明かした。そして清彦についても、最前蚊ヶ虎が述べたとおりの悪人であったが、やはり改心して日の出神の代理となったことを説き明かし、人々の疑いと迷いを払拭した。

  • 日の出神は宣伝歌を歌い始めた。壇上の四柱も、その声にあわせて面白く歌い、かつ舞った。

  • 群集もまた各自手をうち踊り狂い、今までの騒動は消えてしまった。清彦はこれより紅葉彦命と名を賜り、秘露の国の守護職となった。

  • 第十五章 ブラジル峠(365)

  • 日の出神、淤縢山津見、正鹿山津見、蚊ヶ虎の四柱一行は、ブラジル峠を上っていく。春とはいえ、赤道直下の酷熱の中を、蚊ヶ虎に荷物を持たせて登って行く。

  • 蚊ヶ虎はちょっと一服させて欲しい、と頼んだが、淤縢山津見は竜宮の底で苦労艱難を嘗めて門番をしてきたことを思えば、どうということなはい、と説教する。

  • 蚊ヶ虎は愚痴をこぼす。淤縢山津見がそれを咎めると、逆に淤縢山津見のかつての悪事を責める。淤縢山津見が昔のことは過ぎ越し苦労するな、と諭しても、何かと理屈をつけて淤縢山津見をからかった。

  • 淤縢山津見が昔の主人に向かって無礼であろう、と返すと、蚊ヶ虎は、過ぎ越し苦労するなとおっしゃったじゃないか、と返す有様。

  • 第十六章 霊縛(366)

  • 一行はブラジル峠の山頂辺りの風景を眺めながら、四方山話をしていた。風が次第に強くなり、周囲の樹木も倒れんばかりに激しくなってきた。

  • 蚊ヶ虎は側の木の根にしがみついて、泣き言を言っている。蚊ヶ虎を皆でからかい、蚊ヶ虎はそれに負けずにおかしな答えでやり返す。

  • 義太夫調にまぜっかえすその歌の中に、蚊ヶ虎は常世姫の落胤である常照彦であり、稚桜姫命の孫神である、と自分の出自を織り込んでいた。

  • 蚊ヶ虎が一人狂言芝居をして淤縢山津見と滑稽な問答をしている折から、突然幾十万とも知れない声が辺りから聞こえてきた。淤縢山津見は顔色を変えて両手を組み、その場に座り込んだ。

  • 蚊ヶ虎はにわかに前後左右を飛び回り、くにてるひめ、と口を切った。淤縢山津見は天の数歌を唱えて審神に着手した。

  • 蚊ヶ虎は自分は鬼城山の国照姫と名乗り、淤縢山津見に巴留の国から引き返してアーメニヤに戻れ、と託宣した。淤縢山津見は力を込めて、神言を奏上して蚊ヶ虎に霊光を放射すると、蚊ヶ虎は大地に七転八倒した。

  • 淤縢山津見は、自分を巴留の国から追い返そうとする邪神であると断じた。認めない蚊ヶ虎の神懸りに対して霊縛を施すと、霊は自分は八岐大蛇の眷属で、淤縢山津見を高砂洲から追い返すつもりだったのだ、と白状した。そして、ロッキー山へ逃げるから霊縛を解いてくれ、と懇願した。

  • 淤縢山津見はロッキー山への退去を禁じ、変わりに巴留の国を去って海の外へ退去するように命じた。蚊ヶ虎に懸った邪霊はうなずいて承知した。

  • 淤縢山津見が霊縛を解くと、蚊ヶ虎の身体は元のようになおった。そしてまた馬鹿話をしながら先にたって、ブラジル山を西へと下っていく。

  • 第十七章 敵味方(367)

  • 淤縢山津見は峠を下りながら、蚊ヶ虎が不平ばかりを言って心身がしっかりせぬから、邪霊に取り付かれるのだ、と説教している。二人はまた頓珍漢な問答をしながら下っていく。

  • すると、傍らに大きな滝があるところへ、四五人の荒くれ男が腰掛けて、なにやらささやきあっている。淤縢山津見と蚊ヶ虎が男たちの前を横切ろうとしたとき、一人が大手を広げて谷道をさえぎった。

  • 曰く、鷹取別のしろしめす巴留の国へは、他国の者は入れない決まりだという。蚊ヶ虎は腕をまくり、ねじ鉢巻で荒男に食ってかかった。荒男は荒熊と名乗り、蚊ヶ虎に喧嘩を吹っかけた。

  • 以外にしぶとい蚊ヶ虎の抵抗に、荒熊は仲間を呼んで、のしてしまおうとする。蚊ヶ虎は得意になって啖呵を切っている。

  • 威勢よく啖呵を切っていた蚊ヶ虎だが、いざ五人の荒男にいっせいに打ってかかられると、たちまち弱音をはいて、淤縢山津見に助けを求めた。淤縢山津見は自業自得、と傍観している。

  • 蚊ヶ虎は荒熊たちに、柔らかく喧嘩しろ、と口の減らない負け惜しみを言っている。荒熊が得意になって蚊ヶ虎をなぶっていると、途端に崖から落ちて谷底に落ち込んでしまった。仲間の四人は驚いて蚊ヶ虎の手足を放した。

  • 蚊ヶ虎は、自分の霊光に打たれて谷底に落ち込みよった、と一人悦に入っている。その間に淤縢山津見は谷底へ降りて、荒熊を助けて引き上げてきた。

  • 第十八章 巴留の関守(367)

  • 淤縢山津見は谷底に落ち込んで重傷を負った荒熊を助け出し、鎮魂を施すと、荒熊の負傷はたちまち癒えて元の体に回復した。

  • 荒熊は淤縢山津見の前に両手をつき、命を助けてくれた恩を涙ながらに感謝し、これまでの無礼を謝した。

  • 蚊ヶ虎は自分の威力で荒熊が谷底へ落ちたと得意になってまたおかしな説教を荒熊に垂れている。淤縢山津見がそれをたしなめた。

  • 荒熊は淤縢山津見が醜国別であると認めた。荒熊はかつての醜国別の部下・高彦の後身であった。高彦は、醜国別が帰幽して以来、讒言によって常世神王の元を追い出されて流人となっていたという。

  • 巴留の国は今、鷹取別が厳しく支配し、他国者を寄せ付けないという。鷹取別は、大自在天の部下で、かつては高彦や蚊ヶ虎の同僚であった。荒熊は、自分が高彦であると鷹取別に正体を知られると、また迫害を受ける、と心配している。

  • 蚊ヶ虎は、鷹取別なんか恐くない、吹き飛ばしてやる、俺が貴様を巴留の国の王にするのだ、とまた法螺を吹いて息巻いている。淤縢山津見がそれをたしなめる。

  • 第四篇 巴留の国
    第十九章 刹那心(369)

  • 淤縢山津見は荒熊(高彦)が恐れおののいているのを見て、邪神に取り付かれたために、臆病者になってしまったに違いない、と診断した。そして天の数歌の神嘉言を奏上して人差し指から霊光を放射し、荒熊(高彦)を照らし出した。

  • 荒熊はたちまち身体動揺をはじめ、荒れ狂って大地に倒れふした。その刹那、今まで憑依していた悪霊は荒熊の身体から脱出してしまった。

  • 荒熊(高彦)は立ち上がると、大地を踏みとどろかして雄たけびした。淤縢山津見は元の勇ましさを取り戻した高彦の様子に喜び、巴留の国の都へ案内するように、と促した。

  • 高彦は、鷹取別が日の出神を巴留の国に入れまいと、軍勢を動員していることを伝え、自分は鷹取別軍の動静を探るために、駆け出して行ってしまった。後に蚊ヶ虎は、幾百万の軍勢も自分が吹き飛ばす、と大見得を切っている。

  • 淤縢山津見がたしなめても、蚊ヶ虎は一向に聞く気配はなく、ますます法螺を大きく吹いている。逆に蚊ヶ虎は怖気を見せた淤縢山津見に、宣伝使の覚悟はいかに、と問い詰めた。

  • 淤縢山津見も蚊ヶ虎の的を射た指摘に、やや反省の色を見せた。そこへ高彦が戻ってきた。高彦の報告によると、鷹取別が動員した軍勢は、不思議にも人影もなくなっていた。

  • これは計略に違いない、と怪しむ高彦らに対して、蚊ヶ虎は意に介さず、刹那心だ、と嘯いて一人、どんどんと坂道を下って行ってしまった。

  • 第二十章 張子の虎(370)

  • 淤縢山津見は高彦とその仲間四人らとともにブラジル山の西へ西へと歩を進めた。前方の原野には、黄昏の闇に燈火が瞬いているのが見える。

  • その中に、松明の光がこうこうと輝いて、大勢のわめき声が聞こえている。一行がその方向に向かっていくと、それは蚊ヶ虎が数百人の群集に取り巻かれながら、怒鳴りつけていたのであった。

  • 蚊ヶ虎は巴留の国の軍勢に向かって、三五教の宣伝歌を歌い、黄泉比良坂の戦いが目前に迫っており、改心しろ、と説教している。

  • 群集はそれを聞いて、きちがいだ、いや勇気のある宣伝使だ、とさまざまに批評している。

  • 群衆の中から、へべれけに酔った男が蚊ヶ虎の前に現れて、酒を飲むなという三五教の教えにいちゃもんをつけはじめた。蚊ヶ虎は男の因縁を無視して、カン声を張り上げて酒を戒める歌を歌った。

  • 男は怒って蚊ヶ虎を殴りつける。蚊ヶ虎はなおも酒をやめよ、と歌う。酔った男はますます怒って蚊ヶ虎を脅しつけるが、蚊ヶ虎がウーンと一声怒鳴りつけると、男はよろめいて転倒し、傍らの石に頭をぶつけて血を流し始めた。

  • この男は喧嘩虎と言って、巴留の国の鼻抓み者であった。誰も喧嘩虎を助けるものはいない有様であった。喧嘩虎は自分の悪口を言った仲間に喧嘩をふっかけ始めた。

  • 蚊ヶ虎はそこへ割って入って、喧嘩虎に勝負を挑みかける。喧嘩虎は立ち上がって蚊ヶ虎に殴りかかった。蚊ヶ虎はただ、喧嘩虎の打つままに任せている。

  • そこへ、声さわやかな宣伝歌が聞こえてきた。

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