とよたま愛読会31回(真善美愛:57巻8章〜15章)     塩津晴彦


日 時  平成十一年四月二十五(日) 午後一時から午後四時三十分
場 所  八王子市北野市民センター八階会議室2

★ 報告 
   未明には雨も上がり天候は曇り一時晴れ、そんな中で四月の愛読会は、七名の参加で『霊界物語』第五十七巻八章から第一五章までの通読を無事に終えることが出来ました。

★ 拝読箇所で気のついたこと
○第八章 愚 摺(ぐすり)
 首尾良く三千彦を白河(アン・ブラック河)に投げ込んだワックスは小国別が呻吟する自宅に帰ってビルマと一緒に勝手なメートルをあげていると、悪友エキスとヘルマンが館に強請にやってくる。ワックスは仕方なく父の部屋のソファーの下に隠してあった金のうち六百両を彼等に投げつける。

エキスの歌 極道息子のワックスが 二人の男をちょろまかし テルモン館の御宝 マンマと盗み出ださして 自分がデビスの婿となり 終ひの果てにゃ小国別の 権利財産横奪し   栄耀栄華に暮らそうと……。

 テルモン国の家令オールスチンの息子がこんな悪事を働いているわけですが、果たして当時の日本の支配的な皇族や官僚の内部で起こっていた出来事だったのでしょうか。気になるところです。
惟神神のまにまに述べてゆく テルモン館にありし次第を (第一六章二二八頁)

○第九章 婆 娑(ばしゃ)
 さて舞台は一転、高姫とシャルが徘徊する中有界に移ります。いつもながらの高姫の逆理屈にへきへきしながらもシャルは「アヽ寒いことだなア。こんなことなら高姫さまの傍にをるのじゃなかったに。今さらベル、ヘルの仲間に逆転するというても寄せてもくれまい……」と呟きながら四辻に向かいます。

○第一○章 転 香(てんこう)
 そこへ蒼白い中肉中背の男がやってきます。 そして自分のことを「私は元アブナイ教(大本)の信者でございまして鰐口曲冬といひ、今は人間の一等厭ふ一等厭といふ偽君子の団体に這入つて懺悔の生活をやっている者でございます」と自己紹介します。

 ご存じでしょうが、転香は西田天香と読めます。一灯園の創設者です。鰐口はあの、大本から離れて後に成長の家をつくった、谷口正治さんと読めますね。「大正六年綾部に来て入信した谷口は、大正十一年三月三日または五月五日の立て替え説にのめり込みそれが起こらず、加藤明子との恋愛に破れたこともあって一灯園に近づき、さらに浅野和三郎が東京で主宰する心霊科学研究会に参加したが、大正十二年九月の関東大震災の後 浅野と別れ、昭和四年三月個人雑誌として成長の家を発刊した……」 (講談社刊 日本宗教辞典 村上重良著より)

 ここで聖師様は鰐口という名で彼の心情を述べさせ、かつ高姫の言葉として「しかしながら折角神の分霊をもらつている人間が、酔生夢死の生活を送るのも勿体ない、自分の放いた糞は自分で掃除すればいいのだ」と述べておられます。

谷口さんの事は後の第一二章 三 狂 でも「その方は霊界物語の筆写までやつたぢやないか。直接の教示を受けながら、分からぬとはさても困つた盲だな。」(一六八ページ)とか「駄目だ。二つ目には研究研究と口癖のやうに申すが、お前のいふ研究は犬に灸だ。ワンワン吠え猛るばかりが能だ」(一六七ページ)と決めつけられています。

 この章では今ひとつ見逃せない箇所があります、それは高姫が鰐口に自分のウラナイ教の素性を暴露している箇所です。  「……米の飯と麦の飯と食ひ比べてみれば、米の飯がうまいと誰もいふだらう。このウラナイ教は実は農業を基とする教だ。それだから北山村に農園を開いて種物神社を祀つてるのだよ。

ウラナイ教の標を見て御覧なさい。八木(はちぼく)と書いてあるでせう。八木はいはゆる米という字だ。米国から渡つてきた常世姫の教だからな」 「日の出神さまの御紋に米の字とは、チツと釣合いがとれぬぢやありませぬか」 「お前は考へが浅いから、そんな事をいふのだ。 日の出の日の字は朝日の日の字 米国の米の字は米と書く  やがて日の出のままとなる。 という歌があるだろう。

この歌は日の出神の義理天上が、世界の人間に知らすために作つておいたのだよ。……それだから日の出神のいふ事を聞いてをれば、此世の中がままになるのだ」 素直に聞けばこの歌は、日の出(日本)がやがて米国をやっつけるという反米愛国の歌ですが、高姫さんの手に掛かると、日の出神の部下になればこの世で何事も思いのままになる、と聞こえます。  なぜ米国産の日の出神の教えが日本や世界をままにしてしまうのでしょうか。

私はここで聖師様は、高姫さんの口を使って、実は戦後世界の米国の世界戦略を話されているように思えるのです。というのは、戦後食糧難の日本は米国の麦などの余剰穀物の配給を受けていますし、現在では米国の穀物戦略は東南アジアや世界にも拡がっています。今やカリフォルニア産の「ササニシキ」米が最後の障壁である日本の穀物関税を乗り越えようとしているのです。やがて日本のママ(飯)になって日本を思いのままにしてくるのでしょうか。

○第一二章 三 狂
ここでさらに高姫さんのことで重要な事が記されています。それは八衢の守衛が「まだ現界に三十年ばかり生命が残つておりますが、あんまり現界で邪魔をするので、時置師の神様がお出でになり、伊吹戸主の大神にお願い遊ばして、三年が間中有界に放つてあるでございます。三年すればきつと外の肉体に憑つて、ふたたび現界で活動するでせう」、「三年の後に生命尽きて霊界に来る肉体がありますから、その肉体に高姫の精霊を宿らせ、残り三十年を現界で活動させる手はずとなつてをります」……。  これらの聖師様の確言が一体どのようなことを示されているのか。我々も十分に考えてみる必要があると思います。『霊界物語』第七○巻で高姫の精霊はトルマン国の王妃千草姫の肉体に再生します。

○第一三章 悪 酔 会
ワックスは自らの悪事を隠蔽し、三千彦ら宣伝使から身を守るため悪酔会(国粋会と読める)を組織するのですが、この章を読むと、大テルモン国はまさに大日本帝国の事だと気づきますね。 ここでモデルとなった「大日本国粋会」は大正八年に創設、労働争議や部落解放運動を担った水平社との抗争を繰り返した当時の原敬首相や床次武二郎が支援した博徒の全国組織だったのです。

○シャルの因縁 この巻では高姫さんにくっつきながら色々と狂言回しの役目を元バラモン軍人で小盗人のシャルが演じます。 高姫「どこの奴かと思へばここの奴だ。バラモン教の旗持人足かと思へば小盗人だ。小盗人かと思へば川陥りだ。川陥かと思へば、死損ひの八衢人足だ。八衢人足かと思へば、地獄に籍をおいた亡者の魂だ。亡者の魂かと思へば極道息子だ。極道息子かと思へば、腰抜けだ。高姫の尻拭きだ」 このように揶揄されたシャルですが中有界に迷い込んできた三千彦に助けられ、これまで寒風吹きすさぶ枯れ野原と見えていた周囲の世界が一変し、春の野に見えてきて、嬉々として三千彦に付き添っていきます。

しかしこの直後、八衢の守衛白に棕櫚箒で高姫と共に払われ、南に向かって逃げ出して行きました。 私は、高姫さんならいざ知らず、一度天国の情景を見た者はその世界の中で暮らすことが出来ると思うのですが、皆さんはどう感じられますか。

以上。


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