とよたま愛読会35回(真善美愛:58巻21章〜59巻3章) 塩津晴彦


日 時 : 平成十一年八月二十二(日) 午後一時から午後四時三十分まで
場 所 : 八王子市北野市民センター八階会議室2

★ 報告 
 暦の上では立秋を過ぎても猛暑は一向に収まる気配がなく、大変蒸し暑い一日でしたが愛読会は参加者一一名で『霊界物語』第五十八巻第二一章から巻末まで、そして第五十九巻の序から第三章までの拝読を無事に終えることが出来ました。

★ 拝読箇所で気のついたこと
○第二一章 館 帰(かんき)
 時々思うのですが、『霊界物語』には各章の章題が付いています。その題の言霊がまた凄いんですね。この章は「館帰」ですが、ふつう帰館(きかん)としてしまうところを、ひっくり返して表現され、館帰は歓喜を意味することをおしめしです。

さてバーチルが消息不明となっていた三年間、彼の妻サーベル姫は、夫の弔いを済ませ、日々神前と墓前で祈っていたのですが、急に神懸りとなりバーチルの帰還が宣告されます。 ここでカールが歓喜の歌を詠うのですが、その中に「主人の君は朝夕に 漁ばかりを楽しんで……家の業をも打ち忘れ……一大得意になりまして……つひに悪魔に魅られてレコード破りの暴風に遭ひ」とあります。これは「禽獣虫魚はいふも更 虫族草木に至るまで みな神様の生身魂 宿らせ玉ふ御霊物 無益な殺生し玉ふな」ということで大変な罪を犯していたことを指しています。そして更に大きな問題があったことが判明します。

○第二二章 獣 婚(じうこん)
 バーチルが館に帰ってみると、何と自分の妻に猩々姫の精霊が宿っているではないですか。サーベルは訳が分からず「何だか化物のやうな感じがします。嫌らしいものですな。さうして奥の魂はどうなつたでせうか」と聞きますと、玉国別は「奥様とお二人ですよ。つまり一体二霊ですから……これには何か深い因縁がこの家に絡まつてあるに違ひありません」と答えます。そこでサーベルに宿った猩々姫はその因縁を話します。
「妾の夫はアズモス山の天王の森を守護している猩々でございましたが、バーチル様の父上バークスさまが、妾の夫を罠にかけて命を奪られました。それゆゑ精霊の行くところがありませぬので、バークス様のご子息、すなはちこの夫バーチルさまの肉体に納まりました……それゆゑ妾の精霊が夫の精霊と通ひしため、バーチルさまは海を見るのが好きになり、漁を遊ばし、たうとう漁船は難破して……」こんどの事が起きたのだと、猩々姫は述べます。
これを聞いた玉国別は、
「天地の誠の道を悟りけり 心より来る人の生涯
 猩々もみな天地の生神の 尊き霊の別れなりけり
 猩々姫主人に尽す誠を 見るにつけても涙こぼるる」と詠い、

三千彦は、
「毛衣を脱いで芽出たく猩々姫  いま改めて人の皮着る
 つまを持つ二人の中にまた二人 つま持つ人を獣婚(重婚)といふ」

こうしてバーチル一家が持つ因縁を解きほぐし、猩々姫の清廉潔白な身魂を讃えます。それにしてもこの怪体なお話の意味するものは何なのか考えさせられます。とりあえずは玉国別の「人間は凡て精霊の宿泊所のやうなものだ。そしてその精霊は一方は愛善の徳を受けて天国に向かひ、一方は悪と虚偽との愛のために地獄に向かつてゐる。善悪混淆の中間状態にゐるのが所謂人間だ」との説示を噛みしめてみたいものですね。

○第二三章 昼 餐(ちうさん)
 この章の三○六頁にこんなお歌のやりとりがあります。
バーチル
「千早ふる神代の人となり代り 人の初めの嫁ぎするかな
 人みなは猩々の子孫と聞くからは さながら神世の心地こそすれ」

伊太彦
「人は人獣は獣昔から その肉体に差別あるなり
 さりながら神よりうけし霊魂は 人も猩々も変らざるらむ」

大げさかも知れませんが、ここで聖師様ははっきりと単純な進化論(類人猿から人へという)を否定されています。また人間にとってさらに大事な霊魂の存在について指摘されています。

○第二四章 礼 祭(れいさい)
 場面は移って、事件解決の御礼の祭りを始めることになったのですが、バーチルは、これまで自家がアズモス山の森に祀ってある大自在天大国彦大神を奉祭するバラモン教徒であったが改宗し、三五教の大神を奉祭したいこと、祖霊祭を三五教で営みたいと申し出ます。そこで以下に祭祀の改良についての問答が行われます。

三千彦「人間が現世を去って天国に行けば現界との連絡が切れるので子孫は父祖の霊祭は不要に思われますが」

玉国「地上現人との連絡が絶たれても、愛の善と信の真とは天地に貫通して少しも遅滞せない。(現界での)愛善信真のこもった正しき清き祭典は天国に届くし、天国でも衣食住の必要があるので供物や祭典は霊界にあるものを歓喜せしめ、子孫の幸福を守らしめる」

三千彦「中有界の精霊は三十年以上はそこに居ない。現世に再生した精霊にも祖
霊祭が必要ですか」

玉国「顕幽一致の神律によって、霊界におらない精霊に対しても祖霊祭を行う。祭祀を厚くされた人の霊は霊界現界の区別無くその供物を歓喜して受ける。……地獄に堕ちた祖霊などは、子孫の祭祀の善徳によって、たちまち中有界に昇り進んで天国に上れる。天人は子孫の厚い祭祀に歓喜しその余波は必ず子孫に伝わり、子孫の繁栄を守る。愛善と信真は天人と子孫との人格に内流し、断絶しない」

三千彦「他の宗派の儀式によって祖霊を祀ったものは、各自がその宗派の天国に行っている訳だから、三五教に改式したときはその祖霊はどうなるのでしょう」

玉国別「霊界に居る人の精霊や天人は絶えず智慧と証覚と善信の向上を願っている。だから子孫が最も善と信とに透徹した宗教を信じ、その教えに準拠して祭祀を行ってくれることを非常に歓喜するものだから祖霊に対しては迷惑をかけるものではない」三千彦「それではバラモンの神様はどうしたら宜しいか」

玉国「祠の森の聖場でさえも、御三体の大神様をはじめ大自在天様を祀ってあるのだから、別に排斥するには及ばぬじゃないか。今までこの家もバラモン神の神徳を受けてきたのだから」

三千彦「それでは祠の森のようにお宮を建て、大自在天様を脇に祀ったら如何でしょうか」玉国「主人であるバーチルの意見を聞こう。宮を建てるとなるとそう軽々しくゆかぬから」……

バーチル「アズモス山の天王の森のお宮は、先祖代々お祀りしてきたお宮様ですし、今にわかに三五教に這入ったといって直ぐに祀り変えるのはどうかと考えます。先生のお考えは」

玉国別「アズモス山の森林に新たにお宮を二棟建造し、一方は三五教の大神様、一方は今の天王様を奉斎し、猩々の小猿達を迎え、バラモンの三人を助けて帰ることが宜しいと思う。それが神様と貴方の守護神に対しても最前の方法だと考えます」

こうして天王の森のバラモン大神の問題は現実的に解決され、バーチルの心にも安堵が広がり、感謝祭が執行された。

バーチルは歌う、
有難し宣直したる師の君の  言葉に妻もさぞ勇むらむ
人猿とたとへ世人は笑ふとも  罪とりさる神となりなむ

○第五十九巻の三章までの内容紹介は次回に記します。

以上


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