とよたま愛読会51回(真善美愛:64上巻13章〜巻末章)  記塩津晴彦


日時:平成12年12月24(日)午後1時から午後4時30分まで
場所:愛善苑豊玉分苑(京王線下高井戸駅下車 徒歩八分 川崎方)

★ 報告
  二十世紀最後の一年を振り返れば、不景気風は治まらず、倒産続出し、また多くの同類相食むような不快な事件報道を聞いてきたように思います。霊体ともに深い傷を負いながら人類は歩んでいるのです。  さて本年最終の愛読会は第六四巻上の第一三章から巻末までを無事に拝読し終わりました。いつものように印象に残った内容を取り上げてみます。

★ 拝読箇所で気のついたこと
○第一三章 試練
 マリヤからの強烈な求愛の鉾先を、修業の上がりまで七十日かかることを理由に、二枚舌でかわしたブラバーサがホッとしているところへ、アメリカンコロニーのスバツフォードがやってくる。そして『さうすると貴方はあのマリヤさまに対し偽りをいつたのですか』『あなたは今マリヤさまに仰有つたこと言葉を反古となさず、実行なさるのでせうな』、と彼に詰め寄る。進退極まったブラバーサが涙ながらに大神に謝罪するとスバツフォードの姿は無く、実は大神が訓戒を垂れ給うたのだった。続いて彼の前にサロメに化けた白弧がマリヤとの約束の実行を迫り、果てには彼の手を握りながら秋波を送り、翻弄する。

○第一四章 荒武事
 マリヤがブラバーサに対して恋慕の情を持っていることを見抜いたスバツフォードは彼女を諭そうとするが、 マリヤ『……どうぞこの結婚問題ばかりは本人の自由に意志に任して下さいませ。貴師のように年が老つて血も情も乾き切つた聖きお方と、青春の血に燃ゆる若い女とは、同日に語るわけにはゆきませぬからねえ』と応じず、七十日の間はブラバーサに接触しないと約束する。  その後、橄欖山に参拝したマリヤがテク・トンク・ツーロのアラブ人にさらわれ、あわやという時に通りかかったブラバーサが宣伝歌をうたい、マリヤの危難を救う。

○第一五章 大相撲
 さてここで、現代の我々にとって見逃せない重要な章があります。それがこの『大相撲』です。  僧院ホテルのブラバーサの室でバハイ教の宣伝使バハウラーとの間で交わされる会話で内容は展開されます。 バ『ハルマゲドンの戦争とは、先達ての戦争をいつてるのぢやありますまいか。ハルマゲドンの戦争が済めば世の終りが近づくとの聖書の教、……もうこの上は救世主の降臨を仰ぐより外に道はございますまいなア』 ブ『救世主はきつと御降臨になつて、世界を無事太平に治めて下さることを私は確信してゐます。しかしそれまでに一つ大峠が出て来るでせう。ハルマゲドンの戦争は、私は今後に勃発するものと思ひます。今日は世界に二大勢力があつて、虎視眈々として互ひに狙ひつつある現状ですから、到底このままでは治まりますまい。世の立替へ立直しは、今日の人間の力つき鼻柱が折れ、手の施す余地がなくなつてからでなくては開始いたしますまい。九分九厘、千騎一騎になつて救世主が降臨なされるのが神様の経綸と存じます』(一七六〜一七七頁)こうして始まる二人の会話は、
@今日地球上には日本と米国の二大勢力が相対立していること。
A東西の両大関(日本と米国)が世界の大土俵上で争うこと、つまり日米戦争は火を見るより明らかなこと。
B日米の決戦が世界戦争として争われる。それがハルマゲドン、世界最終戦であること。
Cそれで大神は地上をして天国の讃美郷に安住せしめんがために救世主を降誕させられたこと。
D将来の国家を永遠に統御すべき人種は米国人ではないこと。
E日米二大勢力のも一つ奥に大勢力が潜み、最後の世界を統一すること。
Fユダヤの七不思議と日出嶋の七不思議が示すように日ユ両民族は神界から一つの脈略で結ばれていること。
などと書かれています。

 現代からこれらの内容を拝察してみると、人類を滅亡へと導く世界戦争は前の第二次世界大戦で終止符が打たれ(ハルマゲドンの終焉)、その後、つまり現在は人類の手では制御出来ない時代となり、救世主たる聖師様の現神両界での御経綸によって立直されていくのだ、という神様の経綸の内容が示されている様を感じるのです。  これからの時代には、地上天国の国家建設にユダヤ、日本両民族が、神様の御手によって、深く関係するであろうことを予感させますね。どうお感じになりますか。第二次世界戦争の結果をどう判断するかなどの点に関わって興味深いお示しだろうと思います。

○第一六章 天消地滅
 橄欖山上ではマリア、サロメ、そしてブラバーサとサロメの恋人ヤコブの四人が入り乱れ、我を忘れての恋愛活劇を演じるが、やがてお互いの恋の成就に満足する。マリヤの台詞、 『妾の待望してゐるキリストは左様な高遠な神様ではございませぬ。妾の愛の欲望を満たして下さる愛情の深い清らかな男性でございます……』

<第四篇 遠近不二>
○第一七章 強請(ゆすり)
 橄欖山上の恋の空騒ぎを見ていたアラブ人の労働者ヤク・テク・ツーロの三人は、ブラバーサの草庵を訪ね、強請にかかる。

○第一八章 新聞種
 ヨルダン河の川縁にバハイ教の教会が建ち、バハーウラーが各国人に教えをといていたが、サロメがこの教会に隠れて教えを学んでいた。  サロメは『妾もご存じのとおり、貴族の家に生まれ、ウルサイ虚礼挙式に束縛され、少しも自由の行動はできず、……それから無理解な親兄弟の圧迫によつて、素性卑しき毘舎の妻として追いやられ……』と語ります。サロメが語る素性は、日本でこの時代に大いに世間に知られた、柳原白蓮女史のそれを連想させます。女史は一時大本に難を逃れ、聖師様の庇護の下にあったのです。  そこへブラバーサを強請っていたアラブ三人組の垂れ込みで事情を知った新聞記者が教会へ訪ねて来る。サロメは動揺するが、記者との会見に望んで行く。

○第一九章 祭誤
 舞台は一転し、ここは日本の小北山、『霊界物語』ではお馴染みの、ウラナイ教高姫の本拠地である。この巻では「ユラリ教」、「お寅」と呼び名が変わっています。この章では、彼等の妄動ぶりを紹介しています。

 大正一○年二月一二日、聖師様は当時大本の大幹部であった浅野和三郎や機関誌『神の国』編集責任者吉田祐定と共に不敬罪で検挙されます。 そして五月一二日、京都府警は王仁三郎のものであるとして、「大本改良の意見書」を報道機関に流します。
当時は依然として出口直開祖のお筆先が信仰の中心であった大本にとって、そのお筆先を破棄するという内容の「大本改良」案には反発も多く、大本教団内部の動揺が大きかったのです。特に聖師様の改良意見書を取上げ、聖師排斥運動の先頭に立ったのは開祖直の三女であった福島久さんでした。
この騒動は、二代すみ子が「お筆先の破棄はいたさない」、と発表し、また六月一七日に聖師様が「仮釈放」されて綾部に帰られ、「改良意見書」を事実上撤回されたので大きな動揺は鎮まったのですが、本書二一九頁に『……守宮別は四方八方に反対運動を展開し、終には六六六の獣を使って、ウヅンバラチャンダーの肉体の自由を奪った剛の者である』、『……そうして地の高天原(綾部のこと)に乗り込んで一切の教権を握らむと聖地の古い役員をたらし込み、九分九厘といふところへウヅンバラチャンダー(瑞月、聖師様のこと)が帰つてきたので、肝をつぶしハフバフの態にて再び小北山に逃げ帰り、守宮別は海外に逃げ出し、……』とあるとおり、ユラリ教一派は再三にわたって聖師様の排斥を企てる事になります。

また大正一二年六月一八日(旧五月五日)には大本三代直日と当時婚約中だった吉田大二との結婚式が挙行されています。この巻の口述が七月一三日に終わっていますので史実とも合うわけですね。  大本教団を簒奪する目算が外れたユラリ教幹部たちが第二の計画を練っているところへ、一時海外に逃れていた守宮別が帰ってきます。

○第二○章 福命
 二二七頁から二三三頁に守宮別の歌がありますがこの人物は当時「赤化中佐」として一部で報道されていた飯盛正芳(海軍予備機関中佐)がモデルです。この歌はほぼ事実関係のとおりで、彼は上海にまで足を伸ばし、ロシア共産党との関係を疑われ帰国と同時に一時官憲の取り調べを受けています。  飯盛さんは、大正二年五月に「大本」に入信していた福中機関中佐の紹介によって大正四年春に入信。八月二十八日には軍艦「香取」艦上で百五十人に対し演説をした人物で、年末には横須賀へ出向き浅野和三郎と接触しています。また『霊界物語』で「イモリ別」、「日の出島の高等武官、海軍中佐、ウラナイ教の教高姫の情夫で」と第十五巻、第十七巻、第四十四巻にも出てきます。  そしてその守宮別から「桶伏山の聖地(綾部)からチャンダー(聖師さまのこと)さまの内命でブラバーサが行つたといふ新聞記事を上海で私はちょっと見て来たよ」との報告をお寅やその一番弟子であるお花達は受ける。

○第二一章 遍路
 もとお寅にお弟子でもあった竹彦が大阪から守宮別に会いに来る。本巻では横田某として書かれている。

○第二二章 妖行
 ユラリ教一行四人(お寅、お花、守宮別、曲彦)は『兵站部を勤める高山某から若干の旅費を受取り、漸く旅費を調へて』小北山を出発する。 ユラリ教の活動資金を提供する高山某は、守宮別の父親がモデルであると言われています。

○第二三章 暗着
 日本から朝鮮半島に渡り、陸路を使ってエルサレムにまで到着した一行は、早速迷動を始める。  お寅婆さんは「チャンダーが救世主としてエルサレムに降臨すること」を阻止すること、そのために先行しているブラバーサを追い落とす、という目的があるんですね。そこで自称日の出神として自分こそが救世主であることを宣伝しようというわけです。しかしすでに陸路を使ったこと自体間違っていますね。

一八四頁に出てくるように、聖書の予言では救世主は「雲に乗り」現れる事になっているのです。『雲は舟の事だ』とブラバーサは喝破しています。事実、ブラバーサのモデル西村光月さんが最初渡欧したときは客船でした。  ちなみにブラバーサとは梵語の「プラバーサ」(光照る者)のことだと思われます。  またウヅンバラ・チャンダーとは、梵語でウヅンバラ(優曇華・梵語udumbara・瑞祥の意。三千年に1度開花すると伝えるところから、きわめて稀なたとえ)『広辞苑』とチャンダー(梵語で月の意)が該当します。つまり「瑞月」なのです。

○第二四章 妖蝕
 現地に着いた一行の前に、シカゴ大学のスバール博士がシオン大学の建設委員として登場します。この人物も実在し、大本にも来ています。全国の神社仏閣を巡り「お札博士」と異名をとっています。ここで言葉の壁にぶつかった一行は守宮別の怪しげな英会話を頼りに活動を始めていきます。  ちなみにブラバーサ役の西村さんは世界エスペラント大会に日本代表として出席したわけですから、言語の壁は解決済みですね。

○第二五章 地図面
 僧院ホテルで慣れない洋食を食べ、守宮別はビールをがぶ飲みしてしまう。現地新聞の報道でブラバーサが活躍しているさまを読んだ一行は、アメリカンコロニーに行くことにする。コロニーでマリアに会い、口喧嘩の末一行はヨルダン河へ。 ○第二六章 置去  ヨルダン河のバハイ教でサロメから軽く一蹴された一行はホテルに戻るが、守宮別が飲んだビールの代金をボーイからふっかけられ、お寅達三人は守宮を残してホテルから逃げてしまう。 ○第二七章 再転 シオン山谷間のブラバーサの草庵にスバール博士が訪ねてくる。そして救世主の降臨について『なるほど聖書の予言によりますればエルサレムでせうが、……或は日の出島へ現はれ玉ふかもしれませぬ』と語ります。大事な台詞ですね。さらにお寅婆さん達の脱線は続きます。

以上

次回:第52回 ご案内
   日時 平成13年 1月28(日)午後1時〜午後4時30分
   場所 愛善苑 豊玉分苑(京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
      連絡先(川崎方)03(3321)3896、03(3321)8644
   物語 山河草木 卯の巻 第64巻(下) 序文より通読いたします。
         (物語をおもちでない方もどうぞ、参加費は不要)


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