とよたま愛読会56回(山河草木:65巻22章 〜 66巻3章)  記塩津晴彦


日 時  平成13年5月27(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
物 語  山河草木 辰の巻 第65巻〜66巻

★ 報告
 六月の愛読会は七名の参加で第六十五巻二二章から始まり、この巻を読了し、続いて第六十六巻に入り、無事に第三章までの通読を終えました。 いつものとおり拝読で気の付いたことを取り上げてみました。種々の感慨がわき出てくる拝読箇所が多く幾つかに絞りましたが、まだまだ感想が多い方もいらしゃるのではないでしょうか。

★ 拝読箇所で気のついたこと
○第二二章 均霑(きんてん)
 この章題にある均霑とは「平等に恩恵をうけること」の意味です。
 三千彦の提唱により、虎熊山の爆発にもかかわらず家一軒被害を受けなかった仙望郷の一同は改めて感謝の祭典をスマナー姫を始め村人参加によって執行する。
三千 『諸々の罪や穢れを払はむと
          爆発しけむ虎熊の山』
    『虎熊の峰に潜みし枉神も
          今はまつたく逃げ失せにけむ』
ターク『傾きし家の柱を立直す
          君は誠の三千彦司よ』
そしてスマナー姫は三千彦に向かって自分の身の振り方を相談する。
三千『私がかうなさいませ……とお指図はいつぃませぬが、貴女のお心に感じなされた最前の方法をもつておやりなされたら如何でせう』と答え、姫は『自分は尼となりバータラ家の財産は村人に分配し、一部は神様のために使う』と決めます。(二六四〜二六五頁)
 この辺りの内容は敗戦と皇室変革に基づく戦後日本の姿にダブッてきますね。昭和天皇の人間宣言と農地改革とは帝国軍隊解体、財閥解体と並んで敗戦が産んだ日本社会の大変動だったのですから。またそもそも虎熊という名前自体が聖師さまにも因縁のある名前です。虎や熊は権威を象徴する代名詞と考えて良いと思いますし、高熊山と熊山がスサノヲ大神にまつわる霊山であることはすでにご承知でしょう。
 つまり虎熊山の大爆発とは、現人神天皇制が、聖師さま「大神さまの御化身」(二九一頁)によって改革されていくことを暗示しているのではないでしょうか。そのために虎熊の山は爆発し、ここに巣くっていたマナスイン龍王が追い立てられ、次の巣を求めてたち出る羽目になったのでしょう。
 三千彦は二、三日後エルサレムを目指して単身出発し、同行が許されなかったスマナー姫はその後を慕って行きます。


○第二三章 義侠(ぎきょう)
 改革なった仙望郷では、
乙『……バータラ家があんな目に遭つたのも、何かの因縁だらう、われわれ人民の膏血を絞り、贅沢三昧に暮らしてきた報いだ。仙望郷三百人の恨みが凝結してあんな惨事が突発したのだ。スマナー姫様も、元は貧民の腹から生まれ、バータラ家に拾ひあげられて奥様になられたのだから、われわれ貧民の味方をしてくださったのだ。人間といふものは自分が難儀をして来ねば同情も起こるものでは無い。……』との話が出ます。考えさせられる内容ですね。そして慢心のあまり悪に逆戻りするテーラー(偵羅)をキングレスが懲らしめます。


○第二四章 危母玉(きもだま)
 スーラヤ湖で三千彦らと別れてエルサレムを目指していた玉国別と真澄彦はエルサレムに程近いサンカオの里で虎熊山の爆発による灰煙の毒気に当てられ木陰の草の根に顔を当てて、地中からの生気をすってしのいでいた。そこへ霊犬スマートが現れ二人を勇気づけながら、近くのサンカオの峰にある小さな祠のところへと引っ張っていく。初稚姫が二人の前に現れる。
『この時初稚姫はこの社より二三丁も奥の森の中に、マナスイン龍王の帰順を祈っていたが、容易に効験の現はれ難きを知り、ともかく二人の命を救はむと、神力をこめ真裸となつて、サンカオの滝に打たれてゐた』(二八七頁)
 さてこの記述は何を意味しているのでしょうか。
初稚『……マナスイン龍王がゲッセマネの苑を占領し、エデンの花園や黄金山を蹂躙せんといたしますゆゑ、……やがてマナスイン龍王は、虎熊山を立ち出で、いよいよ時節の到来とゲッセマネの苑を占領すべく、山河草木を震撼させながら、進んでくるのですが、ゲッセマネの苑には、たうてい身を置く所がないので、この河を遡り、シオン山へ参るでしょう……』とその動きを語ります。
 マナスイン龍王は第五十七巻序文で「大身大力龍王」と紹介されている八大龍王の一つですね。この巻では後に七福神宝の入舟の奉祝劇が宣伝使達によって演じられますが、聖師さまは七福神はいずれも自分自身のお働きであるとお示しです。そのことと虎熊山の爆発を併せて考えると、大神さまが八大龍王を使役され、世界経綸を推進されることなのでは、と考えざるを得ないのではないでしょうか。初稚姫が帰順を祈っても効験が無いのは当然ですね。
 また余談になりますが、本書二九二〜二九三頁に玉を保持することについて会話があり、
初稚『……世の中の分からぬ人間から、初稚姫は堕落したとみえて、男が出来たなどと言はれては迷惑ですからな……』と語り、
真澄彦『お玉さまだつて、夫なしに結構なお子さまをお生みなつた例もございます。あなたにお子さまが出来たつて、だれがそんなこと思ひませうか……』と話します。この部分だけを取り上げれば、戦中戦後の「大本教団」にあった語られざる事実を思わず彷彿とさせられます。『霊界物語』のもつ厳しい一面が出ていると思いました。


○第二五章 道歌
 サンカオ山からヨルダン河に沿って下りながらゲッセマネに向かう玉国別は歌います。
 『……わが行く先はゲッセマネ
  月の輝く花苑に 百花爛漫艶競ひ
  神の使の吾々を ……
  これも全く瑞御魂 神素盞嗚の大神の
  珍の使とあれませる 初稚姫のお引き立て』
すべては聖師さまの御神格たる主神に帰一すると言うことですね。この事を最も端的に現している人物が初稚姫です。元々修行の足りなかった姫は大黒主折伏の旅立ちに際して特に百日の修行を行っています。もちろんわれわれのレベルとは全く異なった地点でのお話ですが。
 さてエルサレムについて、この巻で一つの説明があります。それは初稚姫が玉国別に対してエルサレム入所に際して注意を与える場面ですが、『……エルサレムに着けば錚々たる神司がおありですから、第一、神素盞嗚大神様の御神徳に関しますよ。ここは厳御魂様の御鎮座所ですから、産土山の齋苑館とは、よほど窮屈ですよ。……』
『美しい花には害虫多く、よき果物には虫害多きがごとく、……世界中の人間がエルサレム エルサレムといつて憧憬しているのですから、悪の強い欲の深いものはみな聖地にきて、何か思惑を立てようとするのですよ。エルサレムほど偽善者の集まる所はないのですから……』 色々の教訓が込められている箇所ですね。世界のエルサレムは今や諸教の争乱を象徴する都市へと変貌し、日本のエルサレムたる綾部には一時期多くの思惑人間が集い、それらに悪霊が着き、聖師さまの救済が行われた舞台となっていたのでした。
 そんなエルサレムのゲッセマネの園で奉祝の神劇が演じられるのです。

○第二六章 七福神
 聖師さまは、わざわざこの神劇を映像にされ、後生のためと思われたのでしょうか、残されています。有り難いことに現在我々はそれを見ることの出来るのです。
 帰一する主神の御神格はまた万神のお働きへと転じます。この章では、七福神のそれぞれのお役目を開示し、活気凛々とした神の世が現出するという確言をお示しと思います。
『……九月八日の慶びを、筆にうつして末広く、伝へ栄ゆる神祝ぎの、尽きせぬ神代こそ芽出度けれ』      第六十五巻 終わり  


『霊界物語』 巳の巻 第六十六巻
 さて拝読は六十六巻に進みます。この巻は冒頭にあるように当初第六十八巻として口述されたものですが、発行は第六十六巻です。
 聖師さまは大正十二年七月十八日に先の第六十五巻までの口述を終えられ、大正十三年一月二十五日に愛媛県道後温泉と松山で第六十九巻を口述されています。そして二月十三日蒙古へ出発され、御神業の後大正十三年七月二十五日帰国され、大阪刑務所へ収監されましたが、同年十一月一日に保釈出所されました。
 保釈後初めての物語口述は大正十三年十二月一日から十一日までに口述され、『王仁蒙古入記』(上野公園著)として刊行された巻ですが、この巻は始め第六十七巻として考えられたのです。大正十四年八月に追加補正されたうえで昭和十年発行の『出口王仁三郎全集』第六巻にに収録されました。現在は『霊界物語』特別編入蒙記となっている巻です。
 従ってこの第六十六巻は、蒙古から帰られてから本格的に口述された巻ですので、蒙古気分とでも言いましょうか、冒険心に富んだ物語の展開となっています。


○序文
『無抵抗主義の三五教が軍事に関する行動を執るのは、少しく矛盾するやうに考へる人もあらうかと思ひますが、混沌たる社会においては、ある場合には武力を用ふるの止むなき場合もあります。……』と言われています。そしてこの序文の意義をよく考えるためにもこの巻で活躍する宣伝使「梅公別」の言動に注目してください。自ずと一つの方向が見えてくると思います。 とりあえず序文では、条件付ですが、諸宗教の開祖達はやむを得ず教典と剣を携えて精神世界を開いた、と聖師さま述べて居られます

○総説
 印度に近いデカダン国やトルマン国の高原で展開する波乱万丈の物語ですが、第四十巻の内容を引き継いでいます。
 登場人物は照国別、梅公別、国公別です。舞台は最初がデカダン国タライ村、そしてトルマン国とその北方にあるオーラ山。バラモン軍の大足別将軍を追って地教山(ヒマラヤ)へと向かう物語となっています。


○第一章 暁の空
 照国一行はデカダン国の高原地タライの村にさしかかるが、バラモン軍の大足別の部隊が殺戮と略奪を繰り返して行った現場に出くわす。一軒の茶屋で重傷を負った老婆サンヨを救い、サンヨの二人娘が、姉は修験者と駆け落ちし、妹はバラモン軍にさらわれた、と告げられる。

○第二章 祖先の恵
 村人のタクソンとエルソンがやってきて、バラモン軍の非道振りを語り、一行はハルナへ向かう行動を始めることになるが、この村に先祖伝来伝わる「棗」の話が出てくる。梅公『何と先祖の恩というものは尊いものだな。吾々の先祖も国を肇め、徳を樹て、道を開き、子孫を安住させむために苦労して下さつたのだ。三五の教も実のところは祖先崇拝教だ。人類愛の神教だ…』と叫ぶ。

○第三章 酒浮気(さけいうけい)
 この章以降の記事は次回のご案内に掲載します。

以上

次回 第五七回 ご案内
日 時  平成十三年六月二十四(日) 午後一時から午後四時三十分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩八分 川崎方)
      連絡先(川崎方)03(3321)、03(3321)8644
物 語  山河草木 巳の巻 第六十六巻
拝 読  第四章から拝読します。 (物語をおもちでない方もどうぞ、参加費は不要)


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